第187回 裸のつきあい

私は風俗で働いていた自分に罪悪感を感じない。「あなたが決めたのなら反対はしない。でも自分を大事にしてね」と親友は言った。勘違いしないでほしい。終電を逃すほど働いて、休日にも仕事のことを考えていた頃の方が、よっぽど自分を粗末にしていた。顔に自信があるわけでも、裸に自信があるわけでもないけど、当時の私の起伏に風俗がぴったりとはまった。

「女性に興奮しないんです」という大学生が来たこともある。「彼女に初体験だと思われたくない」という会社員も。ここに来る理由は人それぞれ。私はそれを聞くのが好きだった。

ある日、宗教上の問題で、結婚するまでは女の体に触れることが出来ない外国人の男が来た。「自分の国から出たんだから大丈夫だよ」と自分に言い聞かせながら。終わった後の満足そうな顔ったらなかった。

数ヶ月後、彼はもう一度お店に現れた。そして、私に会うなり真剣な顔で言った。「全部捨てて来たんだ、国も宗教も。また君に会うためにだよ」私はもちろん動揺したけど、素直に嬉しかった。「なぜか2人ともその場でボロボロ泣いちゃったよね」と、今でもよく夫と思い出話をする。一度レールから外れた私たちはお互い支えあって生きている。以前よりとても自然に。とても穏やかに。

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