※『Mondo Alfa』に掲載されている内容を一部改変して転載したものです。

富士山を臨むラウンジ、数々の受賞歴を誇るスパ、オーセンティックかつ革新的な一皿を提供してくれるレストラン……。都市型リゾートホテルであるアマン東京・総支配人の八木朋子氏に、同ホテルの魅力を伺った。

東京の高層ビルに隠れ家的リゾートを作る

アマンのコンセプトは、「プライベートな邸宅にいるかのような心温まるもてなしと、常に小規模であること、そして美しさの際立つラグジュアリーで非日常的な体験のできる、プライベートなリゾート・コレクション」だ。自然や遺跡に近い場所に展開しているアマンが、世界でも屈指の都市である東京にホテルをオープンするというニュースは、大きな話題を呼んだ。

「開業時には私はまだ在籍しておらず、立ち上げに関わることはできなかったのですが、『アマン東京』のロビーを見たとき、東京の高層ビルにリゾートを作るための、さまざまな工夫が施されていることを実感しました」

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「ロビーの花は季節ごとに変えています」

『アマン東京』は、地上38階、高さ約200mの複合ビル『大手町タワー』の最上層6フロア(33〜38階)に位置し、33階がロビーとなっている。デザインを担当した建築家、ケリー・ヒル氏は、ロビーフロアをワンフロア──ひとつの空間として捉え、中央に大きな生花を据えた池と、巨石を用いた石庭を配し、自然を愛でる日本人のライフスタイルを表現した。

「アマンでは、その土地の文化や伝統を尊重し、自然と調和することをコンセプトとしています。石庭や池を囲むように、縁側に見たてた廊下を作り、日本独自の文化である縁側で、四季の日本の庭を愛でることができるガーデンラウンジをイメージしました」

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メインダイニングやカフェ、バーも33階にあるが、ガーデンラウンジと呼ばれるロビーエリアとのあいだにわかりやすい壁はない。“縁側”が、ロビーと、ダイニングエリアとの緩やかな境界線の役割も果たしているのだ。また、和紙を使い、障子を模した格子をあしらった、約30メートルの高さを誇る天井は、やわらかな光をたたえている。

「ガーデンラウンジは、『アマン東京』のなかでも、私が大好きな場所のひとつです。西側の壁一面の窓からは、空気が澄んだ日には富士山をのぞむこともできます」

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全84室の客室は、もっともスタンダードな客室でも71平方メートル。東京のホテルの概念を覆す、贅沢なスペースのなかには、伝統とモダン、地域性の融合というアマンのコンセプトに基づき、木や石がふんだんに取り入れられている。

「ゴージャスで煌びやかなハレの日の場所というよりは、長い期間でも落ち着いて過ごすことができる、上質なラグジュアリーさを持つ客室です。もともと私は、ハウスキーピング出身。少しマニアックかもしれませんが(笑)、時間帯によって差す影によって表情が変わる、フロアや部屋の“隅っこ”も素敵ですよ」

客室の窓際にも“縁側”をイメージした場所があり、デイベッドを配するなど、客室にも存分に日本の伝統美と機能美が息づいている。

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アマン東京のデラックスルーム。客室の床には栗材が用いられている。
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窓からは皇居や神宮外苑。大きな窓から入ってくる光の変化によってその表情は刻々と変化する。

「GMになって東京に戻ってくる」

八木氏は、ハワイ州立大学マノア校観光産業学部ホテル経営学科を卒業後、ハワイ島のホテルに就職。ハウスキーピング サービス マネージャーとしてホテルでのキャリアをスタートさせた。

「もともと旅行業に興味がありました。そんななかで、ホテルを選んだのは、ホテルという世界が華やかに見えたのかもしれません。あまり深く考えずにホテル業界に飛び込んだのですが(笑)、ホテル業界から離れようと思ったことは、一度もありません」

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2004年に東京に戻り、複数の外資系ラグジュアリーシティホテルで経験を積んだ後、2014年に再びハワイに渡り、1917年創業のハワイ屈指の名門ホテル『ハレクラニ』に宿泊部部長として勤務。2016年4月に帰国し、『アマン東京』のホテルマネージャーとしてアマンに入社し、2017年、総支配人に就任した。

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『アマン東京』で働くことになったのは、「リゾートのDNAを持ちながらグループ初の都市型ホテルである『アマン東京』が、ホテルマネージャーのポジションで募集していることを知り、私の経験を生かすことができる」と考えたからだ。

「私はこれまで大きなホテルで働くことが多かったんです。アマン東京に移る前にいた、『ハレクラニ』も500室のホテルで、お客様との間には少し距離がありました。ホテルのマネージメントにはいろいろあって、2〜3,000室の大規模なホテルを動かすことにやりがいを感じるホテルマンも多いと思うのですが、私の場合、お客様やスタッフの顔や名前を把握できる距離感の中で、上質なホテルをつくっていきたいという思いがありました。84室の『アマン東京』では、このお客様は、昨日、どこに行かれて、何を食べられたかまで把握できる環境にあります」

リゾートで寛ぎながら、大都会・東京を楽しむ

国内外、複数のホテルに勤務してきた八木氏だが、『アマン東京』という、リゾートのDNAを持つ都市型ホテルに勤めるのは初めての経験だ。そもそもそういったタイプのホテル自体が世界にもあまり存在しない。

「都市型のホテルは、時間がないお客様のリクエストにお応えすることを重要視していますが、リゾートホテルでは、お客様のやりたいことを、お客様と一緒に考えながらご提案します。よりお客様と近い距離での接客を、東京のスピードのなかで行っていけるのが、『アマン東京』の良さであり、これまで東京のホテルにはなかった、新しい試みではないでしょうか」

また、海外での勤務経験を通して、日本にあるホテルならではの強みも実感しているという。

「海外のホテルと東京のホテルの両方を経験して実感するのは、日本人には、ホスピタリティのDNAがもとから備わっているということ。さりげなく、ごく自然に、お客様に寄り添ったおもてなしができるんです。これは、日本のホテルならではの良さだと考えています」

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30mのプールは、都心のホテルでは最大級。天井は8メートル以上あり、2面採光で開放感抜群だ。

しかし、リゾートホテルでのんびり過ごすことのが苦手な日本人は少なくない。せっかくラグジュアリーなリゾートホテルが東京に存在しても、上手に使いこなすのは難しいのではないかという疑問もある。

「情報化社会ですし、とくに日本人のお客様は、入念な下調べをしていらっしゃる方が多いんです。でも私たちはプロ。お食事にしろ、お買い物にしろ、また、それ以外の事柄でも、ウェブの情報では得られない、地域に根付いた情報をご提案できます。どんどんホテルスタッフを利用してください。そして、リゾートを体験しながら東京も楽しむという、『アマン東京』に泊まる醍醐味を味わっていただきたいです」

ゲスト一人一人がそれぞれの楽しみを作り出すことができるファシリティ。そこに日本人のスピリットに裏打ちされた確固たる知識と感性が加わる──。これほど心強いことがあるだろうか。

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大手町の森に囲まれた、1階の「ザ・カフェby アマン」では、カジュアルフレンチがいただける。

総支配人に就任し、現在、とくに力を入れていることを聞くと、八木氏は、「『アマン東京』のアイデンティティづくりには力を入れています」と即答した。

「なぜ高い料金を払って、アマンにお泊りになるのか、アマンとはどんな場所なのか──。人それぞれ考えは違うと思いますが、“アマンとは何か”と問われたとき、少なくとも『アマン東京』のスタッフは、同じ回答をできるようにしたいと考えています。まずはその統一のアイデンティティを作っていかないと、と考えています。また、スタッフが、『アマン東京』で働くことを楽しいと思ってもらえる環境、雰囲気を整えていきたいですね」

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イタリア在住17年のシェフの個性が光る、メインダイニング

八木氏のGM就任後の最大のトピックといえば、2018年1月に、メインダイニング『ザ・レストラン by アマン』が、新たなコンセプトのもと、イタリアンレストラン『アルヴァ』に生まれ変わったことだろう。

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2018年、アマン誕生から30周年を迎えるのを機に、アマンでは、世界各国のアマン内にあるイタリアンレストランの店名と、コンセプトを統一。店名に掲げる『アルヴァ(Arva)』は、英語の“Harvest”の語源となったラテン語で、伝統的なイタリア料理への回帰をテーマとしている。

「店名とコンセプトは共通でも、それぞれの『アルヴァ』では、その土地ごとの季節の食材を使ったオリジナルメニューを提供しています」

『アマン東京』では、イタリアで17年間、研鑽を積んだ平木正和氏が料理長を務め、家族や友人たちと温かい食卓を囲むイタリアの伝統的な食文化への回帰をテーマに、日本ではあまり知られていなくても、現地では日常的に食されている料理を提案していく。

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「その土地の素材を、もっともおいしくお召し上がりいただくという、アマンのコンセプトにぴったりのレストランになりました。シャンデリアがあるファインダイニングではありませんし、派手な料理でもありませんが、素材の味を最大限にいかした、素朴だけれど、おいしいお料理をお楽しみいただけます」

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オーセンティックな調理法を用いながらも、日本ではあまり見かけない食材や日本の食材を積極的に利用。イタリアを知りつくした平木氏ならではの技と個性が光る料理は、一皿ごとに驚きがとエンターテイメント性がありながらも、翌日にまた食べたくなる。まさに、“マンマ(お母さん)の味”だ。

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“都心にあるリゾート”としての挑戦

どうすれば、『アマン東京』での滞在をより楽しんでもらえるか──。そのために、やっていきたいこと、挑戦したいことは尽きない。

その土地の文化や伝統を尊重する哲学を持つアマンの一ホテルとして、「海外のお客様には、日本の人が暮らすように、過ごしていただければと考えています」と、これまで以上に、日本、東京ならではの体験を提案していきたいという思いも強い。

「ロビーに飾る花に関しては、スタッフと計画を立てています。日本伝統の行事もどんどん取り入れていきたいですね。」

ほかにも2017年末には、初夢に見ると縁起が良いものを表すことわざ「一富士(いちふじ)、二鷹(にたか)、三茄子(さんなすび)」をテーマにした、サービスも企画にあがったそうだ。「言葉の意味は知っていても、調べてみて、知らないことがたくさんあるんですね」と語る八木氏の口調は、どこか楽しげでもある。知識と感性の相互作用は、想像だにしなかった、ケミストリーを生みだすことがある。『アマン東京』はいま、そんなわくわく感にあふれている。

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『アマン・スパ』では季節に合わせたトリートメントを提供している。スパのみの利用も可能。

そうなのだ、宿泊ではなく、カフェやレストラン、そして、スパの利用でも、『アマン東京』の魅力は充分に体感できる。なかでも八木氏のおすすめは、夕暮れ時のラウンジ『ザ・ラウンジ by アマン』だ。

「アフタヌーンティーで人気のラウンジですが、夕方から夜にかけてがまた、素敵なんです。ここから眺める夜景は、きらきらと輝いて、まるで宝石箱のようです。お食事に出かける際に1杯、アペリティフを楽しむなど、日常的にお使いいただきたいですね。バーテンダーをはじめ、スタッフと仲良くなって、いろいろな情報を引き出していただければうれしいです」

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八木氏もおすすめの黄昏時の『ザ・ラウンジ by アマン』

アマンは、空港から数時間離れた、ビーチや秘境、遺跡の近くに立地することが多く、宿泊のゲスト以外のレストランやスパの利用は難しかったり、そもそも受け付けていなかったりする。東京の中心地で、リゾート的滞在型のホテルである、アマンの神髄が味わえるという幸運を存分に享受したい。

INFORMATION

アマン東京(Aman Tokyo)

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住所 東京都千代田区大手町1-5-6 大手町タワー
TEL 03-5224-3333 
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Text:Aya Hasegawa
Photos:安井 宏充