待望。その言葉がふさわしい。音楽のみならず、あらゆるジャンルのフォロワーを巻き込みながら拡大を続けるHIPHOPクルー・YENTOWN。その中で一際、妖艶かつパワフルな音楽を届ける女性ラッパー「Awich」が、8月8日(火)に10年ぶりのフルアルバム『8』をリリースした。

プロデュースはもちろん、YENTOWNのみならず、縦横無尽にGood Musicを生み出すChaki Zulu。そしてフィーチャリングにはANARCHY、YENTOWNからkZm、KANDYTOWNからYOUNG JUJU、そして沖縄からはRITTO、沖縄音楽のレジェンド・古謝美佐子、そしてAwichにとって「スペシャル」なゲストも参加し、万全の布陣で最新型のアーバントライバルミュージックを作り上げている。

Awichが『8』で伝えたかったこと、そして自身が描く女性像とは? 彼女の音楽性や過去も掘り下げつつ、多くのフォロワーを生むその魅力を探った。

Interview:Awich

【インタビュー】YENTOWNのディーヴァ・Awichがアルバム『8』で女性の強さとエロスを謳う awich-feature3-700x369

——昨日の『AbemaMix』(7月27日出演)、拝見しました。

ありがとうございます。Abemaの人たちから評判がいいって聞いてよかったです。

——圧巻のパフォーマンスでした。私自身、インタビューをずっとしたいと思っていたんですが、リリックの英語の部分をどこまで理解できるかという不安もありました。今回インタビューをさせていただくにあたって、当初は自分で歌詞の英語の部分を訳そうとしていたので、後日、和訳を送っていただいて正直めちゃくちゃ助かりました。

そう、私は自分の歌詞を全部和訳するんです。

——アルバムの歌詞カードに和訳はついてないんですよね?

歌詞カードはそうですね。ただ私は日本語を訳すときも、英語を訳すときも凝りたくて。PVも字幕のオプションをつけたりしているので、“Remember”や“Crime”なども言語をスイッチすると、映画の字幕のように楽しめる仕掛けになっています。

——Awichさんの音楽は、歌唱力や表現力など、一聴して「この人ヤバイ!」と感じさせるものがあるんですが、歌詞をちゃんと理解して聴くと深みが全然違いました。なのでリスナーのみなさんにもぜひ頑張って和訳にチャレンジしてほしいなと。

ハハハ、たしかに。あと、和訳も直訳ではなく詩的な表現にしていますし、一方で英訳は英語で韻を踏んでるんですよ。なのでどの言語を理解する人が視聴してもフルエフェクトが得られるようになってます。

——8月8日(火)に発売される『8』は10年ぶりのアルバムということですが、制作期間はどのぐらいでしたか?

半年ぐらいです。

——YENTOWNの方々は総じて、作り始めてからリリースまで早いですよね。

たしかにそうかも知れませんね。周りからは「クリエイティビティがすごく濃密に出た半年間だったね」って言われました。でも早いって言われると嬉しいですね、もっとやってやるって思います。

——制作はリリースが決まってから東京に来てまとめて録って……という感じですか?

最初にできてたのが“Crime”と……“Sega”だけで、あとはもうすべて半年間で。

——“Crime”はPVが公開されるのも早かったですよね。

そうですね。ちなみに“Crime”のPVを録ったときは、まだアルバムをChaki(Zulu)さんが作ってくれるとかは決まっていなくて。「出来るかな〜……Chaki Zuluいけるかな〜」って自分の中で思っていた時期でした。PV自体は昨年の11月ぐらいに録って、私が編集して1月くらいに終わって。アムステルダムに行く直前に東京にいたんですけど、Chakiさんに「もう出せば」って言われて。「え! このタイミングで!?」って思ったけど、でもChakiさんが言うなら出そうってなりました。でも(そのおかげで)“Crime”で音楽性の高いオーディエンスが「誰これ?」って食いついてくれていい流れができたし、それによって“Remember”みたいな今流行りで、ただただ楽しめる曲にさえも深みがある事に気づいてくれるオーディエンスも出て来てくれたんだと思います。「ここ意外にめちゃいいこと言ってますよね」って言われることがあるし。そういうのめっちゃ嬉しい。

Crime – Awich ft. kZm (Prod. Ke Yano$ & Chaki Zulu)

——“Remember”はいま反響がすごいですしね。私事で恐縮ですが、先週までベトナムに行ってたんですけど、向こうの雰囲気や気候と合って何度も聴きました。

合いそー! というか最近コロナのフェスが沖縄であって。芸能人とかもめっちゃ来てたんですけど、沖縄で“Remember”しか聴いてないって人もいて。夏のアンセム的な感じですかね。

【インタビュー】YENTOWNのディーヴァ・Awichがアルバム『8』で女性の強さとエロスを謳う awich-feature2-700x700

Remember – Awich feat. YOUNG JUJU (Prod. Chaki Zulu)

——話が少し戻りますが、Chakiさんと初めて会ったのはいつぐらいですか?

去年の8月です。私が東京に来てkZmと会ったときに紹介してもらって、そこからですね。そのときに初めてHusky Studioにも行きました。

——最近の話なんですね。YENTOWNの面々ともそのぐらいからですか?

そうですね。kZmが一番先で、その数時間後にChakiさんって感じです。

——実際、Chakiさんとやってみてどうでしたか?

めっちゃ信頼できるプロデューサーですね。引き出してくれるのがうまいし、私が録ってきたものを試しにやってみて、自分でやっぱカッコ良くない……ってなっても、「いやカッコいいからもう一回やってみなさい」みたいな感じでトライしたらすごい良くなって諦めずに済んだことがけっこうあって。“Remember”の一番最後のレゲエっぽいところも、Chakiさんに言われなかったら無くなってた可能性があったんですよ。

——あのめちゃくちゃ気持ちいいところですね。

そう! やっぱそういう面でも作っていて信頼できるし、たとえば全然良くないことを私が考えてきても、「ダセーなにそれ」みたいにジャッジしないんですよ。どうしたらいいかを考えてくれて、必ず可能性を見出してくれる。そういう人じゃないと周りにいてほしくないし、ちょっと行き過ぎかもと思うものほど、人の印象に残ったりするので。Chakiさんはそういうのをフルに出させてくれるし、オープンに受け入れてくれる人です。

——以前、MONYPETZJNKMNにインタビューさせていただいたときにも同じようなことを言ってました。

たぶんみんなそうだと思います。私、Chakiさんのことを「天使」って呼んでるんです。物事が解決するシチュエーションが最初のころに何度も続いたときに、「やっぱChakiさん天使だわ〜」って。この写真(アルバムのジャケ写)も、ほんとたまたま撮れたんですよね。「私、羽根とか似合わないっす」ってカメラマンとかに言ってたんですけど、「いや一回やってみよう」って言われてギリギリ最後に撮れた写真で。撮り終わったあとに気づいたんですが、Chakiさんのことを天使って呼び始めてから、制作期間中に助けてくれる人が現れたら「あの人、天使だわ〜」って言ってたことや、『8』っていうのも「エンジェルナンバー」からきていることとか、この写真とめっちゃしっくりくるなーと思って。あれは私の上でいろんな天使たちが羽ばたいていて、その羽根が落ちてきているっていう……様子。

——この(上の)あたりにChakiさんがいて……。

そうそう! Chakiさんパタパタパタ〜って。

——この写真にはそんな裏話があったんですね。楽曲についてですが、フィーチャリングゲストはどのような流れで決まっていったんですか?

まず、古謝美佐子さんは昔からいっしょにやりたくて、自分でお願いしに行きました。kZmはさっきの成り行き。Tabu Zombieさんは“Detox”という曲でChakiさんが「ホーンの音が聴こえるんだよ」って言い続けていて、「この人とかどう?」って聞かれて「入ってくれるならぜひ!」っていう感じで決まりました。まだ面識は無いんですけど、ぜひライブでご一緒したいです。

——あの曲はライブで映えそうですね。“Remember”のYOUNG JUJUさんは?

JUJUくんはChakiさんがいっしょにやるっていう話があったみたいで、それに私が乗り込んじゃったって感じです。RITTOは沖縄のお兄ちゃんみたいな存在で、“Chong”は沖縄にいる「キジムナー」っていう妖怪の歌です。夜にしか出てこなくて……大人には見えなくて……いたずらが大好きで……パーティーが大好きみたいな妖怪がいるんですよ。そこから「俺たちキジムナーじゃん」ってなって、その童謡が「ちょん ちょん ちょんちょん……」って歌うので“Chong”っていうタイトルになりました。

——ANARCHYさんはChakiさんがプロデュースした“BLKFLG”からの流れですか?

はい、Chakiさんが私のことを話してくれていたみたいで。ANARCHYが沖縄にくるタイミングで会いに行ったら、「あー! Chakiから聞いとるでー! メシ食いに行こーや!」って感じで速攻仲良くなって。ライブとかも飛び入りでさせてもらったりして、「いっしょに曲やりましょー」「いいよー」みたいな感じでできました。

WHORU? – Awich feat. ANARCHY (Prod. Chaki Zulu)