前回に引き続き、”Rush Hour Records store”の3周年アニバーサリーパーティーの模様をお伝えしたい。4月5、6日はShelterにて<Weekender>が、7日はサンデーアフタヌーンパーティーとして過去にも不定期開催されてきた<Somewhere in Amsterdam>がClaireにて開催された。通常は絶対撮影禁止のローカルクラブに特別に許可をもらい潜入取材させてもらった。貴重な現地レポートを写真と共にご覧頂きたい。

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Hunee

まず初日となった5日の夜を飾ったのは、Rush Hour(以下、RH)の看板アーティストであり、世界各国で圧倒的な人気を誇るHunee、90年代から活躍するデトロイトの重鎮Terrence Dixon、ESP institute主宰のLovefingersとヘッドライナー級のアーティストが顔を揃え、必要不可欠なローカルDJとしてMargieが登場。

翌日の6日は、ロンドンのトッププロデューサーSam ShepherdことFloating Points、インストアイベントにも登場したJordan Gcz、ローカルからはKamma、そして、レーベルボスのAntalが登場。

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Jordan Gcz

フェス会場のような大箱の多いアムステルダムの中でShelterは中箱に当たるのだろうか? それでも1,000人は収容出来そうな開放的なメインフロアー、喫煙スペース、チルルーム、トイレ、ロッカールームとそれぞれ贅沢なスペースがあり、慣れるまでどこに何があるか迷ってしまうほど。オープンしてからまだ2年半という新しさの残るクラブでもある。

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Shelter

ドイツの有数クラブにも多いフロアーと同じ高さのDJブースは後ろにもスペースがあり、ぐるっと360度見渡せるようになっている。DJの手元だけでなく、後ろ姿や横から選曲をしている姿が見れたり、DJの取るリズムや動きに合わせて踊ることができ、親近感が湧く。さらに必要最低限なライティングに抑えられているため、音に集中出来る環境も好ましい。

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Terrence Dixon
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Floating Points

個人的に今回のお目当ての一人だったFloating Pointsは、DJでの出演となった今回も変わらず、どこの枠にも嵌まらない彼独自のスタイルでオーディエンスを虜にしていた。得意のラテンやジャズ、メロウなボーカルトラックも取り入れていたが、全体的に大箱のフロアーに合わせたアッパーな選曲が多いと感じた。

かなり前になるが以前ベルリンで彼のプレイを見た時は、7インチディガーとしても知られるマニアックコレクションを披露してくれた。かなり古い年代のジャズやソウル、ダビーでオーガニックなサウンドに酔いしれながら、ブースに被り付いて聴いたのを思い出した。ピアノだけに限らずいろんな楽器の演奏が出来るマルチな才能を持つFloating Pointsのバンドセットを是非とも体感してみたい。

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Antal

Tシャツと短パンといういつものスタイルでAntalがDJブースに入った瞬間、”待ってました!”とばかりに大歓声が上がった。ブース前は押し合うファンで埋め尽くされ、1トラック目が掛かったと同時に激しく躍り狂うオーディエンスによってフロアーはさらにヒートアップしていった。ディスコ、ファンク、ハウス、アシッドなどのアグレッシブなダンストラックをメインに、それらをなめらかにさらっと繋いでいくことよりも丹念に選曲された一曲一曲をエネルギッシュに入魂していく、スキルとパワーに満ちたプレイは見ていても清々しい気持ちにさせてくれた。

金曜、土曜共にオープン直後から深夜1時を過ぎても外には長蛇の列ができており、RHの人気っぷりをここホームであるアムステルダムでも改めて実感できた夜となった。

最終日7日は場所を移し、人気観光エリアのレンブラント広場に位置するClaireにて、インストアでも素晴らしいライブを披露していたDavon BryantによるDreamcast、シカゴからMark Grusane、ロサンゼルスからInterstellar Funkとアメリカからの刺客が揃う。PanoramaBarでもお馴染みのSassy J、RHクルーでDJとしても活躍するRelmer International、Sekanと、日曜日の午後にぴったりなアブストラクトな顔触れとなった。

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Claire

Shelterとはまた場所も雰囲気も違うClaireはジャングルのような内装に高い天井、ちょうど良いサイズのフロアー、感じの良いスタッフによってとても居心地がよくお気に入りの場所の一つとなった。冬物のジャケットが必要なぐらい肌寒かった週末とは打って変わり、22度と初夏の陽気に恵まれたこの日は、サンデーアフタヌーンに相応わしく緩やかなスタートとなったが、インストアとオールナイトイベントを終えたRHクルーの安堵に満ちた笑顔と共に終始良い空気が流れていた。

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Dreamcast
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Sassy J
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Mark Grusane
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Relmer International

特筆すべきは、ラインナップに関してはAntalの独断ではなく、スタッフみんなが意見を出し合って決めているとのこと。スタッフ自体アーティストであることがほとんどというレコードショップやレーベルならではと言えるが、”RHのイベントに行けば間違いない”と思わせる理由の一つに現場に立つスタッフの生の声がきちんと反映されているのだ。

新店舗へと移転してから3年、初めてインタビューさせてもらった4年前のことを思い出しながら、改めてAntalに尋ねた。世界中にファンを持ち、RHからリリースされる楽曲やアーティストをチェックすれば今のダンスミュージックシーンの最前線を知れる、そんな世界的認知度を得た今について。

「店舗を移転して、規模を広げたと共にレーベルもアーティストも一緒に成長していったんだ。ヨーロッパだけに限らず、世界各地でレーベルの名前を掲げてパーティーが出来るようになったし、そのおかげでこれまで以上にいろんなところで認知されるようになった。日本はもちろん、アメリカ、ブラジルや南アフリカにも行ったよ。ダンスミュージックシーンはやっぱりヨーロッパが一番盛り上がっていると思うけど、アムステルダムも今すごく良いシーンが出来てるね。今回はShelterとClaireで開催したけど、De Schoolでもやる時もあるし、Trouwのようなトップクラブがクローズしてしまっても、ここには他にも良いクラブや良いフェスが沢山あるんだ。シーンは常にアップダウンを繰り返して、変化して進化していくものだと思ってるよ」

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そうAntalの言う通り、毎年来ているはずのアムステルダムの街自体がいつもより活気に満ちているように感じた。クラブ同様に次々と話題のレストランやショップが増え、東京かと思うほど近未来を感じさせる駅やビルも増えていた。有数クラブのクローズの知らせが続々と届くベルリンがより一層灰色にくすんで見えてしまったが、それもきっと一時的なことなのだろう。ヨーロッパはすでに夜の9時まで明るく、最高の野外パーティーのシーズンが訪れた。

Photo:Atsushi Harada
Thanks:Yasuharu Fujiwara(Wakyo/ otemba sake)Instagram
Thanks:Rush Hour Records