前回のフランクフルトの記事を執筆中、長年の友人でありベルリンを拠点に世界で活躍するDJ・yone-koから1本の電話をもらった。キエフのトップクラブ・CloserのオーナーでDJのTimur Bashaと一緒に主催しているレギュラーイベント<WORDLESS>のことはもちろん知っていたが、Airbag CraftworksのEven Tuellを東京開催のゲストとして招聘すると聞いた時には驚いた。そこのスタッフでもある友人から情報をもらったばかりで、次にフランクフルトを訪れる際には絶対に取材したいと思っていたからだ。テレパシー?以心伝心?言霊?世の中には単なる”偶然”では片付けれない摩訶不思議なものが存在するのだと改めて思った。

そして、やはり良質なアンダーグラウンドカルチャーというのは国を超えて自然と共鳴し合うのだと実感した。なぜ今フランクフルトなのか?それは、こちらや、他媒体になってしまうがこちらでも熱く語っているので是非とも参考にしてもらいたい。昨年末に取材に行った際に想像以上に得るものがあり、今後も絶対要チェックの街だと実感したのだ。その証拠に、現在市内のミュージアム「MOMEM」内にエレクトロニック・ミュージックを文化遺産として評した「テクノ博物館」を作るプロジェクトが話題となっており、新たな波を感じずにはいられない。

魅力に溢れているのはキエフも同様である。2017年にCloser主催のフェス<BRAVE!FACTORY>を現地取材させてもらった時に、悪天候ながらいろんなミラクルと感銘を受けたのを今でも覚えている。トリを務めたTimurのDJも鮮明に思い出せるが、広大な会場の中で一番奥に位置する野外ステージのセンス全てに脱帽した。その時のレポートがこちらになるので是非とも合わせて読んで欲しい。

Closerにはフェスの翌日に見学だけさせてもらったが未だお預け状態なので、次は絶対にパーティーに参加したい。スペシャル感のある野外フェスも大好きだが、その地に根付く本当におもしろいアンダーグラウンドカルチャーを知るには絶対にクラブに行くべきだと自負している。ローカルDJ、ローカルのクリエイター、ローカルのパーティー好きだけが知り尽くしている本当におもしろいカルチャーと出会えるチャンスはそこにあるからである。

<WORDLESS>の話に戻すとしよう。アジアツアーの集大成とも言える今回の東京開催にはヘッドライナー級のミニマリスト、Jan Jelinekの出演も決まっている。国内からは、AOKI takamasa、Nobuki Nishiyama、Kyoka、YPY、P-yanと精鋭揃いで、どの時間に行っても良い音がなっていることを保証したい。
ベルリン、フランクフルト、キエフにおける今最も知るべきアーティストとアンダーグラウンドシーンがここまで凝縮されたパーティーはきっと他にはない。すっかり目も耳も肥えてしまったパーティーシティーベルリンにいながら同パーティーが東京開催ということが悔しいと思ったほど。“オシャレ”という言葉は時にチープに聞こえてしまうが、音楽に限らずコマーシャルなものがオシャレに見えるのはそれは宣伝力であり“質”ではない。最先端でありながら媚びることなく、どこまでもアンダーグラウンドを貫く。それらを生み出しているのはまさに彼らであり、東京の真の音好きには是非とも同パーティーで“本当にオシャレな音”とは何かを知って欲しい。

WORDLESS

ドイツとウクライナ、そして日本の今知るべきシーンは“WORDLESS”にある wordless_tokyo

Wordless at Contact, Tokyo
09.Feb.2019
Jan Jelinek – DE (live)
Even Tuell – DE
AOKI takamasa
Kyoka (live)
Nobuki Nishiyama (live)
YPY (live)
P-yan
Timur Basha
yone-ko

Jan Jelinek(Faitiche / ~Scape)

ドイツとウクライナ、そして日本の今知るべきシーンは“WORDLESS”にある Jan

ベルリン在住の音楽家/プロデューサー。1998年にFarben名義でKlang Elektronikからリリースされたダンス・トラックで注目を集める。 当時としては非常にミニマルながらも繊細なゆらぎに満ちたその作品群は、のちにSNDやMille Plateauxの作品群らとともにクリック・ハウスと呼ばれたムーヴメントを牽引する先駆けとなった。2001年には~Scapeより本名Jan Jelinek名義で『Loop-finding-jazz-records』を発表。ジャズ のサンプリング・ループから音のモアレのようなレイヤーを浮き上がらせ、ミニマルでエクスペリメンタルな電子音楽史に残る名盤として今もなお評価され続けている。 ハノーファーでのEXPO2000でのサウンドコラージュの演奏、日本の即興バンドComputer Soup やオーストラリアのジャズバンドTrioskとのコラボレーション等を経て、2008年より自身の実験 のためのプラットフォームでもあるレーベルFaiticheの運営を開始。Jan Jelinek本人の作品や Masayoshi Fujitaとのコラボレーション、架空の作曲家Ursula Bognerによる作品などをリリースしている。 フィールドレコーディングコラージュ、音響作品、ミニマリスティックな電子音楽など、さまざま な作品全てに共通しているのは自身が収集した音の素材をライヴ処理することであり、テープレコー ダー、デジタルサンプラー、メディアプレイヤーなどの迂回を繰り返して元の素材を彼自身の音楽へと変容させる。その実験の積み重ねと緻密さが、彼が唯一無二のアーティストといわれている所以でもある。

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Even Tuell(Workshop)

ドイツとウクライナ、そして日本の今知るべきシーンは“WORDLESS”にある EVEN-TUELL-2016

南ドイツKleestadtのアーティスト/DJ、Workshop主催/Airbag Craftworksオーナー。 1992年にDJを始める。当時南ドイツで大きな潮流だったハードでレイヴィーなテクノシーンの裏 で早くから重心の低いディープハウスと前衛的なテクノを横断していくDJを追求していった。1999 年にはその才能をATAに見出され、フランクフルトのクラブRobert Johnsonの最初期のレジデン トDJとして活動。そのコラボレーションは現在にも至る。 2006年にはLowtecと共同で自身のレーベルWorkshopを設立、Move D、Kassem Mosse、 Marvin Dash、Reagenz(Move D&Jonah Sharp)、Madteo、Ital、D Man、Willowといった、 レフトフィールドかつ才気あふれるアーティスト達の作品を世に送り出している。 彼自身もまた、WorkshopのみならずOut To Lunch、Latency、Kann、Meandyouなどの厳選 されたレーベルから作品をリリースしている。ダンスのための音楽に主眼を置きながら、どこか奇 異なテイストを常に入れ込むスタイルは彼のDJセットにも共通するものであり、ジャンルの垣根 を越えて一癖も二癖もあるレコードを確かなDJスキルでプレイするスタイルは、長きにわたる彼 のキャリアを経て独自の世界観を表現している。 また、音楽活動と並行して1995年にファッションブランドAirbag Craftworksを設立。レコード バッグを作ることから始めたそのブランドは、Warp Recordをはじめ多数のレーベル・アーティ スト・フェスティバルとのコラボレーションを展開し、クラブシーンで絶大な支持を受けている。

airbagcraftworks

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Timur Basha(Wordless, Closer)

ドイツとウクライナ、そして日本の今知るべきシーンは“WORDLESS”にある Timur-Basha-Official-Photo

ウクライナの首都・キエフを、今ヨーロッパで最も注目を集めるシーンに変貌させたクラブ「 Closer 」の設立者の一人にして、レジデントDJ兼アートディレクター。10代からジャズミュージシャンである父の影響を受けつつ、ヒップホップやトリップホップ、エレクトロニカ等さまざまなジャンルに傾倒。16歳で大学に通うためウクライナの小さな町コノトプから首都キエフに移住。大学生活と並行してレコード店で働き、のちにエレクトロニックミュージックやクラブに特化したジャーナリストとして仕事をするようになる。5年間ジャーナリストとしてキャリアを築いた後、 DJ/ オーガナイザーとして活動を始め、仲間たちと廃墟となったリボン工場にCloserを創設する。ジャンルの垣根を超えた様々なパーティー / コンサート / エキシビションを開催し、Timur Basha自身もレジデントDJとして研鑽を重ねる中で、音楽だけに留まらずアートディレクターとしても様々な表現の幅を拡張させていった。常に世界中から最新の音楽を取り入れているため Timur のスタイルを説明することは難しい。彼にとって音楽は常に抽象的であり、彼のセットはジャンルにも年代にも捉われない。デトロイトテクノやミニマル、ブ レイクビーツ、エレクトロ、アシッドハウス、エレクトロニカなどさまざまなジャンルをスムーズに行き来しつつも、グルーヴとトリップ感は全く失われない美しいミックスを生み出している。2016年夏には Zip の招待で Ricardo Villalobos、Zip、Ata、Prasleshらが出演するパーティー「 New Kids On Acid 」にCloserレジデントのVova Klkと共に出演するなど活動の幅を大きく広げ、2017年からはyone-koがClub der Visionäre/Closerで開催しているパーティー「 Wordless 」にオーガナイザー兼レジデントDJとして参加。2度目の来日となる今回は約1ヶ月をかけてyone-ko と共にWordless Asia ツアーを行う。

yone-ko(Wordless, CDV, Closer)

ドイツとウクライナ、そして日本の今知るべきシーンは“WORDLESS”にある yone-ko-photo-2018-BlackWhite

1999年に静岡にてDJキャリアを開始。その後、東京に拠点を移し日本各地でプレイを重ね、 2011年にベルリンへ移住。 2015年よりSOLID-AM Agency所属。サージカルとも評される緻密なミックステクニックと、グルーヴを詩的に紡いでいく様は時に時間的感覚を忘れ、ただ一つの物語を体験しているような錯覚を受ける。根底にある未来的な要素はそのままに、新旧を行き来し常に進化と挑戦を続けているDJである。 ベルリンに拠点を移してからは、Rex Club(Paris) 、Tresor/Globus(Berlin) 、Concrete(Paris) 、Culture Box(Copenhagen) 等、世界の主要クラブでプレイしている。
また、「 Slowdance(Moscow) 」のアニバーサリーパーティーへ3年連続で出演するなど、ヨーロッパ各地のクラブ・プロモーターから熱い支持を受けている。現在はベルリンのアイコンクラブの一つ Club der Visionäre と、音楽愛好者たちから今最も信頼を集めるクラブCloserでのレジデントを務め、自身のパーティー「 Wordless 」をパートナーの Timur Basha(Closer) とオーガナイズしている。

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