こ数年はヴィヴィアン・ガールズやハイム、サヴェージズなどを筆頭に、いわゆる「ガールズ・バンド」の範疇には収まらない骨太なアクトの存在感が目立つ1年だったが、LA出身の4人組=ウォーペイントは2000年代におけるその先駆けであり、誰よりも洗練されたグループのひとつだった。衝撃のデビュー作『ザ・フール』(10年)から早4年、遂に彼女たちが新作『ウォーペイント』を引っさげて帰還する。

再びUKの〈ラフ・トレード〉からリリースされる今作では、共同プロデューサーにデペッシュ・モードやU2、ナイン・インチ・ネイルズといった錚々たるアーティストと仕事をしてきた“フラッド”ことマーク・エリスを起用。その甲斐もあってか、ダークでメランコリックなウォーペイントの世界観はそのままに、よりビートの輪郭がくっきりとしたインダストリアルなサウンド・スケープさえもモノにしてしまっている。遊びゴコロの効いた曲タイトルや歌詞も実に興味深い。

また、ミキシングにはナイジェル・ゴドリッチも参加し、すべてのヴィジュアル面をあのクリス・カニンガムが手がけるなど、才能ある男性アーティストを次々と惹き付けてしまう彼女たちの美魔女っぷりも、未だ健在のようだ。来る2月の<Hostess Club Weekender>では、約3年ぶりの来日公演も予定。気になるセルフ・タイトルの理由から制作プロセスに至るまで、先日クリス・カニンガムの奥さん(!)にもなったジェニー・リー・リンドバーグ(ヴォーカル&ベース)に電話インタビューを試みた。

Interview:Warpaint(Jenny Lee Lindberg)

Warpaint – Love Is to Die (Teaser)

「今この瞬間を生きている」っていう証を記録するのは、
とてもスウィートなことだと思うわ

――待望の2ndアルバム『ウォーペイント』、期待を大きく上回る傑作だと思います。前作『ザ・フール』にも“Warpaint”と名付けられたトラックがありましたが、このタイミングでセルフ・タイトルに選んだ理由を教えてください。

私たちの中で、これがウォーペイントにとって初めてのアルバムのような気がしたの。今作はドラマーのステラ(・モズガワ)が加入してから最初の作品でもあるし――もちろん彼女が加入する前から書かれた楽曲もあったけど――ステラはそうした曲にも自分の色をちゃんと加えてくれて、この4人の作品として完成させることが出来たから、セルフ・タイトルにする意味があると思ったのよ。

――オープニングの“Where You Wake(Intro)”では、いきなり「ソーリー!」という言葉も聞こえて面食らったのですが、なぜ、あえてレコーディング中のミスをそのまま収録したのでしょうか?

(苦笑)。えっと、レコーディング中っていうのは、何度も何度も自分たちがプレイしたテイクを聴き直して、いくつものテイクの中から一番気に入ったものを最終的には選ぶわけなんだけど、“Where You Wake(Intro)”に関してはこのテイクが一番良くて、このまま何も手を加えないのが一番だと判断したの。それだけのことよ。

――そこにはやはり、「生々しさ」を残したいという意図があったのですか?

それもあったし、「今この瞬間を生きている」っていう証を記録するのは、とてもスウィートなことだと思うわ。決して深い意味は無いんだけどね。

――共同プロデューサーに「フラッド」ことマーク・エリスを起用していますが、彼の手がけてきたディスコグラフィーの中でフェイバリットは?

私はデペッシュ・モードの『ヴァイオレーター』(90年)が一番好きだわ。他にもナイン・インチ・ネイルズ、スマッシング・パンプキンズ、PJハーヴェイ…etc、あらゆるジャンルのアーティストと仕事をしている懐の深さも、彼の大きな魅力だと思う。

――『ザ・フール』のプロデューサーだったトム・ビラーと比べて、制作プロセスはどのように違いましたか?

トムに関しては、彼はプロデューサーではあるけど、むしろあの作品ではエンジニアとしての仕事を主にしてもらって、プロデュースは私たち自身がやったという感じだったの。少なくとも、私たちの中ではね。だから、今回みたいにちゃんとプロデュースに関する知識と経験のある人を迎えたのは初めてだったし、とても素晴らしい経験だったわ。

――また、アルバムのミキシングをナイジェル・ゴドリッチが手がけています。『ザ・フール』ではアンドリュー・ウェザオールが2曲ミックスを務めていましたし、曲によって適任だろうと思う人物に声をかけているのですか?

まず、前作のアンドリュー起用に関しては、私たちの判断ではなくて〈ラフ・トレード〉の決定だったのよ。私たちはあのアルバムを全曲自分たちでミックスしたんだけど、レーベルとしてはサイケデリックさに欠けていたみたいで、後になって彼にミックスを依頼したのね。アンドリューをミックスに起用したこと自体はクールだし別に構わなかったんだけど、正直サイケデリック過ぎちゃって「自分たちらしさ」という点ではかなりかけ離れてしまったから、最終的にあの2曲だけ彼のミックスを採用することになったの。

――なるほど。

今作ではレコーディング中に私たちもフラッドも壁にぶつかって、完全に方向性から何からすべて見失ってしまった瞬間があって、「もうお手上げ!」ってなった時にナイジェルに舵取りをお願いしてみたの。彼はレコーディングに新鮮な風を送り込んでくれる役割を果たしてくれて、その後の作業もすごくスムーズだった。でも、個が導いてくれたのは当初バンドが目指していた方向性とほとんど同じで、彼はこのレコーディングや曲作りの初期の段階にはいなかったんだけれど、まるでその頃の私たちを知っていたかのようにバンドが思い描いていた方向性と同じことをやってくれたから、おかげでとても自信がついたわ。

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