スチームパンクというジャンルをご存知だろうか? スチームパンクとは主に蒸気機関を用いた舞台設定で、SFやファンタジーの要素を組み込んだ世界の描写。『天空の城ラピュタ』(86年)、『ハウルの動く城』(04年)、『ファイナルファンタジー』などに見られるレトロフューチャー的映像をイメージしてもらえると、分かりやすいかと思う。時代錯誤と未来革新が入り混じった世界観は、ノスタルジックな気持ちを呼び起こすだけでなく、未来へのロマンをも感じさせてくれる。
そんな懐かしさとワクワクが詰まった表現を通じて、新しい音楽を生み出すことに挑戦しているアーティストがyucatだ。yucatはシンガーソングライター・ユニットRYTHEMのYUKAとして活動していた加藤有加利によるソロプロジェクトであり、彼女の中に存在するもう一人の自分を指す。いま生きている現実世界に対して、もう一つの現実として存在する世界をパラレルワールドと呼び、1stミニアルバム『PARALLEL WORLD ~終ワリノ始マリ~』では、自身とyucatの関係でもある光と闇を表現するためにゴシックの世界観で統一。ところが、9月11日(水)にリリースされる2ndミニアルバム『PARALLEL WORLDⅡ 第3ノ道』では、自身の過去(闇)と未来(光)が共存する世界を描きたいという想いから、ビジュアルとサウンドイメージをスチームパンクに一新した。作品を発表するごとにモノクロだった景色に多彩な色が加わり、徐々にその全貌が明らかになるパラレルワールドから目が離せない。
スチームパンクという新たな表現を手にしたyucatは、自身の光と闇、未来と過去を介して、どんな物語を繰り広げようとしているのか。プロジェクトの足がかりから今後のビジョンまで、幅広く語ってくれた。
Interview:yucat
――まずはyucat以前の活動から伺いたいのですが、YUKAさんは2011年2月27日を以てRYTHEMとしての活動を終えて、その年の10月31日にソロプロジェクトとしてyucatを始めていますよね。
RYTHEMをやり始めたのが高校生のときで、当時は将来ソロ活動をするなんて考えたことはなく、RYTHEMとして音楽を作りたいとしか思っていませんでした。yucatという存在やパラレルワールドという世界は以前から自分の中にあったものですけど、それを作品にしようとは一切思っていなかったんですよね。
――YUKAさんは小学5年生の時に、鏡の中にいるyucatという、もう一人の自分の存在に気付いたそうですね。表に出さないと思っていた存在を出すことになった経緯について教えてもらえますか?
yucatは私がRYTHEMとして活動したり、生活していく上で必要な存在だったというだけで、誰かに打ち明けたことのない、自分の中に抑えていたものでした。でも、RYTHEMが解散するとなって、RYTHEMのYUKAとしてずっと歌い続けて生きてきたから、それを失うということに対しての恐怖が強かった。これから一人で歌い続けるならば、どうするのかを毎日のように自問自答していく中で、「私にしかないものは何だろう?」と気付いたのが、私にはyucatがいるということだったんですね。yucatとパラレルワールドを通じて、私にしか出せないメッセージがあると思って、形にすることを決めました。