――松浦さんが仰るように、ご自身はプロデューサーとして指揮を執ってらっしゃいますが、プレイヤーとして関わらないという形をとったのはなぜですか?

ただ単に楽器が出来ないからですよ(笑)。僕はどちらかというとDJで、音楽を作るのも、2枚のレコードを混ぜ合わせるのが仕事じゃないですか。これとこれを混ぜ合わせたら、きっと面白いことができるな、という発想をするタイプなので、化学反応がないと音にならないというか、白いキャンバスを置かれて、描いて下さいって言われると結構できないタイプ。何かにインスパイアされたところで、それを編集加工して新しいものにするっていうような感じなのかなと思うと、編集者に近い考え方なのかなと思いますね。別にそれを恥じていないので、そこでしか出来ないもの、独自の発想とは何かということを常に考えてやっているつもりですね。

――表現者としての作家性というよりも、HEXというプロジェクトを俯瞰して、どうまとめるかという意識ですか?

そうですね。一回イメージを投げて、セッションが始まる中で、「面白いから、ここを詰めてみましょう」みたいな感じですかね。自分が前に出てやっているけど、その反面、凄く引いて見ている部分もあって、それが自分の役割かなと思ってます。実際にはみんながやっている間は中心にいるようでいて、実はそこから離れて聴いてる部分があったりして。

【インタビュー】11年ぶりに松浦俊夫が動く。〈ブルーノート〉の新プロジェクト・HEXの全貌~現在進行形のジャズを語る。 interview131031_hex_jk

――今回は3曲のカバーにチャレンジしていますね。

意外と少なかったかなと思うんですけどね。

――もう少し多めにやる想定だったんですか?

まあ〈ブルーノート〉というレーベルを考えると、やっぱりスタンダードを含めてすごくいい曲がたくさんあるので、その中で敢えて今、何をどうするべきかを一番悩みましたね。スタートする前には、自分が持っている〈ブルーノート〉の作品を含めて、結構聴き込みましたけど、ただ単にみんなが知っている曲や、何かを狙ってやるというよりは、今の時代の空気感を出せるものは何か、という判断基準に絞り込めたので、こういう形になったのかなとは思います。“The Osaka Blues”は最初にどうしてもやりたかった曲で、日本語にしたかったんですよね。おそらく、最後に入っている原曲の“The Tokyo Blues”は、ジャズをシリアスに聴き込んでいる人だったら知っている曲だけど、意外と知られてないと思っていて。敢えてそれを日本語でカバーして、結果的に“The Osaka Blues”としました。逆輸入状態というか、それも敢えて狙って、聴く人たちに喚起させたいっていう。

――なるほど。大阪ということで中納良恵さんを起用しているんですね。

そうですね。中納さんにお願いしたかったから“The Osaka Blues”に変えたというのが、どちらかというと正しい。今EGO-WRAPPIN’のお二人は東京を拠点に活動されていますけど、やっぱりどちらの想いが強いかとなると、やはり大阪のほうが強いんじゃない?ということで、大阪への想いも込めて、詞を書き換えてほしいというオーダーをしました。

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