欧米のシーンの様々なアングルからのスナップ・ショットとして見事に機能させてきた<Hostess Club Weekender>。カナダ、シリア、イギリス、アルゼンチン、アメリカと歴代でも最もインターナショナルなラインナップを揃えてきた2日目もチケットはソールドアウト。オープニングのアウストラからフロアには相当数のお客さんが入っていた。
ディアハンターを除けばエレクトロニック・ミュージックを基調としたアーティストが多く、初日とは大きくテイストが変わったわけだが、それでも通し券が売れていたという事実はやはり、個々のアーティストの求心力は勿論ながら、やはりこの<HCW>というイベントそのものがリスナーに浸透し、定着していることの現れなのだと実感する。それでは今一度、ラスト・アクトのディアハンターがオーディエンスの耳をつんざくまで続いた充実のパフォーマンスの数々を振り返っていこう。
Report:Hostess Club Weekender(1日目)
2013.12.01(SUN)@恵比寿ガーデンホール
大化けの予感を漂わせたアウストラ
キラー・チューンが1曲あれば一気に頭ひとつ抜けられる。カナダはトロント出身の6人組エレクトロ・ポップ・バンド=アウストラはそんな期待を感じさせてくれた。リリースしたばかりのセカンド・アルバム『オリンピア』を引っさげての来日で、2日目の幕開けとなるオープナーは新作の冒頭曲”What We Done”からスタート。安定感ある演奏、フローレンス・アンド・ザ・マシーンや時にビョークを思わせる伸びと艶のあるボーカル。ザ・エックス・エックスらビッグアクトとのツアー経験が自信をもたらしたのか、このバンドにはとにかく威風堂々とした佇まいがある。しかし着実な演奏と荘厳な歌声とは裏腹に、ボーカルの四股を踏むような謎のアクション、Tシャツの胸がシースルー、水色靴下にネイル、そして短パンのオネェ丸出しキャラが強烈なキーボーディストのくねくねした動きが妙に気になる気になる(笑)。
加えてここに1曲ド派手なキラー・チューンを装備しているとすこぶるバンドとしてキャラクターが立ってくることは間違いない。そんな大化けの期待感を漂わせた2日目オープニング・アクト。
3つの動きでフロアを完全制圧。シリアのタモさん、参上!
さて2組目は今年の<HCW>最大の注目株、オマール・スレイマンformシリア。47歳、いつもグラサン、民族衣装、トム・ヨークやらビョークらも絶賛、しかも出演者でもあるフォー・テットがプロデュースという全く繋がりが見えない情報の断片だけを頼りに登場の時を待つ。ステージに現れたのはアー写まんまのタモさん風のオジサン。裸足でぺたぺた歩き、その表情は落ち着き払っている。セットはキーボード×2台のみ。うーん、シュールだ。
彼の音楽は「ダブケ」と呼ばれる民族舞踏やシリア近隣諸国の音楽をダンス・ミュージックに昇華したものだというのだが、キーボードからはパラパラを想起させるバウンシーな高速BPMの上に乗せたご機嫌な中近東音階が繰り飛び出してくるではないか。しかもなぜだか毎回曲間の繋ぎが結構モタつくところには爆笑。これは予期せぬ伏兵だ。おまけに思いっきり真顔で「手拍子、手首クイックイッ、パラパラ」の厳選された3パターンの煽りだけをストイックにリピートしてくるもんだからタマったもんじゃない(笑)。フロアもこの不思議な魅力にガッツリ持っていかれてました。でも、このトランシーさを存分に味わうにはたっぷり時間を貰った方がピッタリかも。なのでまたの機会に期待大!な裏MVPとなりました。