幸せは自分の手の中に、自分で創り上げていくもの――。
明日からまたちょっとだけ頑張ろうかなって思ってもらえたらいいですね、それが私の一番の創作意欲となるものです。

――数年前、Azumiさんにインタビューさせていただいた時にも「聴いてくれる、それぞれの人にとって、自分が主役だって思ってもらえるような歌詞や曲を自分が捧げられるようにしたい、そんな歌を歌いたい」とおっしゃっていたんです。ブランド立ち上げてからの想いもすごくそれに通じているな~と、感じました。

え~! なるほど…私、そんな事言いましたっけ!? 完全に自分の言った事忘れていますね(笑)。

――あはは(笑)実際に「Tuno by Azumi」のブランド・コンセプトに「『幸せ』は自分の手で『創るもの』」とありますよね? この言葉、納得というか、すごくグッときました。

はい、そうなんです。ホームページにもコンセプトを載せていますが、何というかこれが全てかなって思うのです。幸せって、人にしてもらうものじゃないと思うんです。女の子って思いがちですよね、「誰かに幸せにしてもらおう!」 って。幸せになりたいから結婚するとか、男性に幸せにしてもらうんだ…とか。男の人に夢を見ることは悪いことではないですが、やっぱり、全ての幸せは自分の手の中にあって、日々、自分で創り上げていくものではないかな…って思いますね。相手を幸せにしようと思わなければ、自分も幸せにならない。それに、相手は自分の鏡ですから。私が笑ったら、相手も笑う。相手が幸せだったら、私も幸せです。

――「相手は自分の鏡」、奥が深いですね。Azumiさんが言うとより説得力があります(笑)。

あはは、そうやってまわりからどんどん「貫録あるね」、「男前だね~」って言われるんです(笑)。

――ブランドを立ち上げてから1年以上が経ちましたね。その期間を振り返ってみた時に、Azumiさん自身にとってはどんな時間だったでしょうか?

た、大変…(笑)。個々にはスタッフさんがいますけど、やっぱり基本は全部1人でやっているので忙しいですね。でも分かったのは、「音楽」も「ものづくり」も自分で全責任を負える仕事の仕方しかできないんだな~って思うようになりました。

――そうなんですか? 大変だけれど自分で全てやるっていう方が合っているという??

うーん、何かの企画に乗っかって進めるというよりは、自分で企画して納得のいくものを発表する、それを皆に見てもらう。そうじゃないとストレスが溜まってきてしまうんだということが分かった1年でしたね。

――なるほど。では、Azumiさんにとって「曲作り」や「ライブパフォーマンス」、「ものづくり」、これらの表現をする上で特別に意識の違いはありますか?

自分の中にある創作脳みたいなところがあるんです。例えば、曲を作る、歌詞を書く、アルバムを作るライブがある。そういう時にはヘアアクセのアイディアって出てこなくて。アタマの中でも創作は部屋が一緒だから、別々に考えられないんですよね。どっちもクリエイティブな作業なので、その作業をする脳が一つなんだなと思って、私、器用じゃないんだな~って感じますね。なので、ちゃんと期限を決めてシフトしないといけないってことも分かりましたね。しかも私、すごく怠け者なんですよ(笑)。

――同時進行での作業って、片方だけでも大変なのに…ですね。コレクションの準備はどのぐらい前から始めるんですか? デザイン、素材選びもすべてAzumiさんがやっているんですか??

もちろんです。今季は7月が展示会だったので、本腰入れて準備を始めたのは4月ですね。本当は4月に展示会をやる予定だったんですが、アルバムのリリースが重なってしまって(日本のヒットソングをジャズカバーした作品『NEW STANDARD』)。今年に入ってからもコレクションのデザインはやっていたんですけど、実際アイディアを一気に具現化していったのは展示会の2ヶ月くらい前からでしたね。

――結構、追い込みながら作っていくタイプですか? 出来上がるプロセスにおいても基本はAzumiさんが中心となって進めていくんですか?

音楽もそうなんですが、ギリギリになるまでやらないみたいな(笑)ところはありますね。 工程もすべて、私が作ったものを工場の方に渡してニュアンスを伝えたり処理の方法を打合せたり…とずっとそんな事をやっていますね。CA4LAさんの工場で全部作っているので、そこに行って生地選びをして、似たような生地を自分で買ってまずは自分でサンプル作って。ある程度の所までは自分で作って形にして工場に渡してますね。細かいニュアンスは工場の方に伝わりにくいので、実際に工場まで行って「リボンのレザー部分の真ん中を一回捻ってください!」 とか「上と下で捻って結んでください!」 とか、直接指示させてもらっています。

――やっぱりそこまでやらないと、違うなって感じですか? でもこの細かいこだわりが女の子にとっては大きな違いになったりしますもんね。 

ぜんっぜん違うんです。例えば、布って縦横があるので、そこが違ってしまうと形が変わってしまうんです。横にした方がたくさん作れるけど、イメージと微妙に違うものが出来てしまって縦で作ってみたら理想の形になったので、「やり直して良かったー!」 とか、妥協せずにやっています。女の子にとって重要ですよね、ちょっとしたニュアンスが自分的に「あ~惜しい!」 っていうデザインも多いですし。こだわりはちゃんと持って誠実に創ることを大切にしています。

――Azumiさんの創作意欲を掻き立てるもの、インスピレーションを受けるものは何だと思いますか?

うーん、一番はじめに動きだす動機っていうものは自分が「欲しい物」なんですよね。 洋服を着た時に「こんなのあったらなー」とか「スタッズが付いてたらな、頭にあと何かひとつポイントが欲しいな~」とか。トータルのコーディネイトですね。 そこで何か「足りない」、「欲しい」っていう気持ちが創作意欲に繋がります。あとは、映画や雑誌を観たりしながら、私だったらもっとこんな風にしたいな~とインスピレーションを受けますね。

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――なるほど、では曲作りに関しては、また別のところから受ける影響が大きいです?

メロディーからの影響が大きいと思います。私はメロディーを最大限に活かすものが歌詞だって思うんです。「詩」を書きたいだけなら「ポエム」のようになってしまう。それならメロディーはいらないし、歌詞としてはただのエゴ。メロディーを活かす事のできる言葉を選んで感情を伝えていくって言う事を大切に、その全ての要素が相乗効果となって良い曲が生まれると思います。 前々作の『ぴあのとあずみ』では初めて作曲をしたんです。アルバムの全曲出揃った時に「何か足りない」「アルバムを引き締めるための曲が欲しい」と思ってきて、これは時間もないし、自分で書くしかないなと諦めました(笑)でも、自分で書くことは説得力があるんですよね。こうやってアルバム制作も、トータルをみて、全てバランスをとるんです。

――何かひとつ足りないっていうところがポイントになってくるわけですね。でもそのスタイルがあるから、音楽もものづくりもAzumiさんワールドというか、カラーになりますよね。そしてすごく共感できる部分があるというか。

なりますか? それは嬉しいですね。なんか足りないままって嫌なんですよね、気持ち悪い(笑)。なので、作る時は妥協しないです。あとは、みんなの気持ちに応えたい、楽しんで欲しいし、喜んでもらいたいって気持ちが凄く強いです。昔から人にプレゼントする時に、どうしたら喜んでもらえるだろうって考えて選んでいるうちに、考えすぎて具合が悪くなっちゃうくらい考えるというか(笑)。見てくれる人、聴いてくれる人、着てくれる人がいて、それで笑顔になったり、ちょっと温かい気持ちになったり。誰かの心の喜びになることが、一番創作の核となる部分だと思いますね。

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