ーー“我が儘”のミュージック・ビデオでは、ドラムを一度も叩いていないですよね。“Miss.ミスミー”では、ドラムを叩いているけど、設定はOLじゃないですか。2曲とも、これまでのミュージック・ビデオと比較して、すごく新鮮でした。
“Miss.ミスミー”は、演技らしい演技が難しかったですよね。電話を切るにしても、「最初はにこやかで、最後は怒って電話を切ってほしい」と言われて、「話し相手がいないので苦戦しましたけれど、楽しかったです。“我が儘”は恥ずかしかったですね。今まではドラムを叩いて汗をかく。その映像を録って、編集して、「よーし、録ったぞー!」 っていう感じだったんですけど、今回は埠頭に行って、寒空に吹かれながら歌って「はい、OKです!」 と言われても、「本当ですか? 大丈夫ですか?」みたいな感じになりました。
ーーこれまでとエネルギーの使い方が違うMVだと思っていて。
そうですね。今までは体力勝負みたいな感じでしたけど、今回は表情一つで勝負することもあって、そういった違いがありました。
ーー同じ演じるという行為でも、使っている力が全然違うというか。“我が儘”はプライベートに近い感じですもんね。
素に近いから歌に集中出来たというか。今まではアクションがあって、髪の毛がかかっていて顔が見えないところがかっこよく見せたかったんです。それに慣れていた分、表情一つで表現することはシンプルだけどとても難しかったです。
ーーじゃあ、次のカードにいきましょう。
これで!
ーー…OLですね。“Miss.ミスミー”にはOL、会社というキーワードがありますけど、以前、“キケンなふたり”のインタビューが、ちょうど新卒の就職活動の時期だったんですよ。インタビューが始まる前にその話題になったことを覚えていて、カフカさんが「就職活動、やってみたかったんですよね」ってこぼしたのが印象に残っているんです。
企業に採用される、選ばれるって、どういうことなんだろう? それを知ってみたかったんです。採用した人間に対して給料を支払う。ある意味、守りながら仕事を与えることが、一体どういうことなのか、そこに興味があるというか。採用された人間はそれに対して、どう責任を感じて、どんな結果を返していくんだろうって。私、面接を全く受けたことがないんですよね。自分をアピールしてまで働きたいって、「私を雇ったらいいじゃないか」っていうことじゃないですか。そういうアピールを一度でもしておけば、今の私とは違った知識が増えて面白かっただろうなって思うんです。もちろん、今の私にもそれなりの楽しさと苦しさがあって、ないものねだりなんでしょうけど。
ーーミュージシャン以外になりたかった仕事ってありますか?
インテリアデザイナーを高校生の時に目指そうとしていましたね。本当にやりたいことは音楽でしたけど、それしか残さないのは危険なんじゃないかって。
ーーインテリアデザイナーになりたかったのは、何か家具との出合いがあったんですか?
とにかく家具を観ているのが好きで。カタログとかを観ていて「こういう形の椅子があるんだったら、こういうのはどうかな」って想像をしていましたし、落書き程度に絵を描くことも好きだったので、その延長で出来そうな気がしていたんですよね。
ーー音楽以外のフォーマットのものづくりにも興味があったんですね。
例えば、どこかの地方で布を染める職人さんに弟子入りするとか、ガラス細工とか、ふと日本の伝統工芸のことを考えたりはします。きっと好きなんでしょうね。あとは、イタリアでスカーフのデザインを修行してみたいと思った事もあります。
シシド・カフカ -“Miss.ミスミー” ~“我が儘”
ーー“Miss.ミスミー”のミュージック・ビデオでは、制服を着ていますけど、学生時代を含め、制服なんて久々ですよね。
高校に制服がなかったんですよ。アルゼンチンにいたときに制服があっただけなので、中学生以来でした。
ーー社会人としての制服を着るのはどうでしたか?
楽しかったけど変な感じでした。自分がコピーを取っているシーンとか、オフィスを歩いているシーンとかを見て、こういう人生の選択肢も自分の中にあったのかなって想像はしました。
ーーOLなんだけど、頭はリーゼントだったり、ドラムを叩いていたり。
あはは。私の本業をひたすらやっているだけですもんね。違和感で遊ぼうっていうコンセプトなんです。
ーーたしかに、スタンダードな商社が舞台だから映える演出というか。
それこそ外資系の企業とかだと、女性にお茶を頼むとかもないでしょうし、ああいう制服すらないでしょうし。想像しやすくて一番分かりやすいものに違和感を作った方が面白いんです。