このバンドがモノトーン主体なのには、シアトリカルな意味がある

――あなたたちはヴィジュアル面でのイメージも表現の一部として大切にしているように思えます。例えば、モノトーンを中心とした写真や映像などを意識して使っているように思うのですが、今後バンドが進んでいくにあたって、これになにがしかの色が入ってくるようなことは想像できますか?

G ……もちろん、うん(笑)、ありえると思うけど、なんというか、私にとってこれ(モノトーン主体であること)はかなりシアトリカルな意味があって、つまりそうすることで、ステージにいるときに動きや自分達の作るサウンドにフォーカスできるようになるからなの。人物が全て黒を着ていると、そこが強調されるでしょう。私達はパフォーマンスを頭に置いて曲を書いているから、4人の登場人物がステージ上でどうふるまうのか、それを突き詰めていくと、服を単純化して黒で統一、つまりモノクロームにすると、動きに目が行くようになって、人のスタイルなんかを考えないようになって、人が体をどう使ってサウンドを作り出しているかを考えるようになるわけ。だからシンプルなシアトリカルな理由で……それだけのことよ、うん(笑)。

――とはいえ、将来的に色が入ってくる可能性がないわけではない、と。

A あははは。

G だからっていきなりピンクのスーツで登場することはないと思うけど(笑)、もしかしたらね。否定はできないってことで。

――セカンド・アルバムについて、そろそろ構想は出来てきたりしていますか? どのような感じになりそうでしょう?

G 実は1月に曲作りを始めたところで、クリスマス休暇から戻ってすぐ取り掛かり始めて、新しいアイデアがいくつか出てきてる。たぶん今のサウンドから劇的に変わるようなところはなくて、ライヴにフォーカスする点も、パフォーマンス面を考えながら曲を作ってるところも同じ。まだどんなふうになりそうかまではわからないけど、私達のサウンドであることに変わりはないはず。

――楽しみに待ちたいと思います。最後に、サヴェージズというバンド名はウィリアム・ゴールディングの小説『ロード・オブ・ザ・フライ』からつけられたそうですし、ファースト・アルバムの冒頭にはジョン・カサヴェテスの映画『オープニング・ナイト』からの引用があることだけを見ても、あなたたちには音楽だけでなく様々な分野の表現に対する興味を持っているとわかります。最近、特に興味を持っていること、ハマッていることなどを教えてください。

G 今すごく興味があるのは、フランスの詩人・画家であるアンリ・ミショーね。

A 私が最近読んでるのは、探検に関する本で、エベレストやK2の登山とか……私は昔からずっと個人の冒険に興味があるの。困難を克服したり、人間と自然との闘いだったりとか。

G あと、まだ読んでる途中なんだけど、今すごく興味を持ってる本は、ルー・アンドレアス・ザロメの伝記で、彼女はロシア系ドイツ人の作家。確か1937年に亡くなったと思うけど、ニーチェやフロイトの作品のインスピレーションになった女性で、その頃ミューズとして大きな存在だった人よ。「女性はこうあるべき」とかいう伝統的な考え方に反抗した最初の女性作家と言える人でもあって、境界線を押し広げて、男性の哲学者や作家のサークルで生きることを望んで、自分が女性ということではなく、作品で判断されることを望んでいた。それからジェネシス・P・オリッジ(スロッビング・グリッスル/サイキックTV)にも興味があって、彼の、あ、彼女のアイデアーー繰り返しや瞑想、音楽を通して身体性の限界を超えていくことで聴く人をどこか別の場所へ連れていこうとするっていうアイデアは、私達が作る音楽の中にも込めようといつも努力してる。最近ジェネシス・P・オリッジのドキュメンタリーがいろいろ出ていて、初期のものを観たんだけど、彼女が彼だった頃……初期のスロッビング・グリッスルの頃はものすごく恐ろしいハードコアなパンクに見えて……でも、当時の彼らが何をしようとしていたのかをカメラに向かって説明していた映像を見ると、それがすごく説得力のある話で、まさに私達が実現しようと目指しているものだと感じられたの。とにかく、すごく生々しくて、すごくパンクなのよね。ジェネシスは昔からずっと大きなインスピレーションで、スロッビング・グリッスルの前身となったクーム・トランスミッションズの始まりの話とかもすごく興味深いと思う。

text&interview by Yoshiyuki Suzuki
photo by 古溪 一道(コケイ カズミチ)

Savages – “Husbands”

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