2006 年、大阪で結成されたHEY-SMITH。猪狩秀平(Vo.&G.)、Mukky(B.&Vo.)、満(Sax)、Iori(Tp)、Task-n(Dr.)からなる、ホーン隊を擁したメロディックパンク・バンドだ。“えっ!? ホーン隊? それってスカパンクじゃなくて?”と訝しがっている諸君。そうなのだ。彼らはホーン隊を擁しながらも、スタイルはあくまでもメロディックパンク。ハードエッジで疾走感溢れる、メタリックテイストも交えたサウンドを基調に、キャッチ―で印象深いリフやオブリを乗せていくホーンとの融合も特徴的なバンドなのだ。既に海外でも作品がリリースされ、国内ツアーに於いては、ほぼ全都道府県でライヴをソールドアウトさせている彼ら。昨夏に発売されたニューアルバム『Now Album』に於いては、オリコン総合チャートトップ10入りを果たしており、動員、作品セールス共に高い人気を誇っている。
そんな彼らは、昨秋より同作品を引っ提げた58公演にも及んだ全47都道府県ツアー<『Now Album』JAPAN TOUR>を敢行。この度、そのファイナルとなった地元大阪なんばHatchでのライヴを余す所なく収めたライヴDVD『Your Freedom』のリリースに至った。多数のカメラを用い、当日の熱気や迫力、盛り上がりをしっかりと収めた映像に、奥行きやダイナミズム、リアルで臨場感溢れる音質がミックスされた同DVDは、まさに彼らならではのこだわった逸品だ。そんなHEY-SMITHからボーカル&ギターの猪狩が、このバンドの特異性やこれまで、そして昨夏からのツアーと今回のライヴDVD、他、自分たちの今後のビジョンまでも語ってくれた。
Interview:猪狩秀平(HEY-SMITH)
聴いていてウキウキしたり、弾んでくる、
そんなテンションが上がる感じを大切にしてる
――これはあくまでも個人的な印象なんですが、HEY-SMITHってホーン隊を擁しながらも、あくまでもメロディックパンクにこだわっているバンドというイメージがあって…。
全部じゃないけど、そういった意識はありますよ。元々俺たち、オーセンティックやルーツのスカを聴いてきたわけじゃないし。根本には「スカバンド」というより、「パンクバンド」という意識の方が強いですね。パンクの精神性や勢い、それらを大切にしながら、ここまで演ってきた感じかな。
――メロディックバンドなら3ピースでも良かったわけじゃないですか。そこにホーン隊を入れた理由は?
まずは友だちだったから(笑)。あいつらが友だちで、たまたまトランペットとサックスをやっていただけ。あと俺、むっちゃ管楽器の響きが好きなんですよ。で、NOFX等の海外のメロディックパンクだと、時折ホーンが入ってくるバンドっているじゃないですか。あれがたまらなく好きで。俺らが始めた頃って、まだ3ピースのメロディックサウンドに管楽器が乗ったスタイルが周りに見当たらなくて。“だったら自分たちで、やってみよう!!”となったんです。
――それを必要な時だけ吹いてもらうスタイルではなく、あえてパーマネントにしたところがポイントですもんね。そのホーンにしても、サックスとトランペットの2管だけだから良いバランスなんでしょう。
ホンマそんな感じ。これ以上ホーンが多いと、今度はそっちがメインになりかねないから。それだけは許せない(笑)。俺はギタリストなんで、やっぱりバンドはギターが目立ってナンボだと思ってますから(笑)。なので制作の時にも、よくケンカになりますよ。“ここでギターソロに行くか? ホーンのソロで行くか?”で。まっ、そんな時は絶対に譲らず、ギターソロで強引に進めちゃいます(笑)。
――だけどライヴだと逆に、そのホーン隊がフロントの2人が弾いたり、歌に専念している分、アクティヴに動き回ってます。
「踊り子か!?」ってぐらい、自由に動き回ってますからね、アイツら。あれはホンマうらやましい。俺も暴れたいっすよ、一緒になって。アイツら最初から服脱いでステージで暴れてますから。12月の野外のライヴでも、あの2人は上半身裸で踊ってたし。
――では、ハードエッジで疾走感のあるサウンドに、キャッチ―なホーンをバンドの信条にしてると。
それからPOPな部分も。これは絶対。
――それは?
これはポップスとはまた違った意味なんやけど。ハードなんだけど凄くポップに感じるバンドっているじゃないですか。ジャンルや音楽性関係なく、なんか聴いていてウキウキしたり、弾んでくるような、テンションが上がる感じ。それらは大切にしてます。
――ちなみにHEY-SMITHを始めた頃は、どのようなバンドがフェイバリットだったんですか?
ジャンルにはこだわらず、総じていえばライヴが良いバンド。で、ライヴを軸にしているバンド、かな。となると俺の場合、やっぱりパンクが多かった。SABOTENとかGOOD 4 NOTHING、それからPANとか。これらは高校の頃、思いっ切り観に行ってましたから。そんな中、誰も聴いたことのないタイプの音を出したくなったんです。影響は受けたし、大好きだけど、その先輩方とは違った道を歩みたくなったというか…。あえてみなさんとは同じことをしたくなかったんです。みなさん自分たちの音楽性を確立している上にカッコイイじゃないですか。同じ手法や近いことをやっても絶対に勝ち目がないんで。“だったら自分たちらしい音楽性でやっていこう!!” って。それが今でも続いてる感じかな。