フリー・ミックス音源で世界中の注目を集め、<SXSW2013>の圧倒的なライブパフォーマンスで話題をかっさらったスコットランドのエジンバラ出身のヒップホップ・クルー、Young Fathers(ヤング・ファーザーズ)。世界各地でブレイクを果たしているCHVRCHES(チャーチズ)までもが再三に渡り彼等へラヴコールを送るなど、計り知れない可能性を持つ彼らに、今回インタビューを行った。
インタビュアーには、ラッパー/トラックメイカー/DJ/作詞家/プロデューサーと多くの顔を持ち、独特の言葉選びと先鋭的な音作りで様々なシーンから支持を受けるイルリメ(鴨田潤)が! ヤング・ファーザーズの持つ自由さと真実性のある表現に引き込まれたという彼が、同じアーティストの立場から斬り込んでゆく。
Guardian、Clash、BBC Radioを初めとするメディアが挙って大絶賛した1stフルアルバム『DEAD』が記憶に新しいヤング・ファーザーズ。奥行きある言葉の中に、彼らの音楽に対する信念がにじみ出るインタビューは必見だ。
Interview:Young Fathers(聞き手:イルリメ)
Young Fathers -“LOW”
※固執されたイメージを避ける為なのか、ストレートな回答を避けている部分も多いインタビューとなっている。(レーベル談)
──アルバムとてもよかったです。SoundCloudで“LOW”を聴き、あまりの素晴らしさにリリックの意味を翻訳したりするほどでした。どの曲も表現に自由さと真実性があり、引き込まれました。
ありがとう!
──あなた達3人がヤング・ファーザーズという名前で活動するようになった経緯を聞かせてください。
(名前の由来)ヤング・ファーザーズーー僕らは父親の名前を授かっている。僕らは兄弟であり、同じ血が流れているからだ。
(クルー活動について)初めは、ただひたすらに若い汗をダンスフロアの上で流していた。でも本当は踊っている事が大切ではなくて、1つになる事と、何かヤバいコトが待っているという気持ちが大切だと感じ、カラオケの機械と安いマイクを使い、夜10時(※)に追い出されるまで必死で活動していたよ。
(※地元ではクラブ・シーンが盛んではなく、限られた時間の中で必死に活動していたように思われる)
──ヤング・ファーザーズがミックステープを発表し、世界へ広がっていく経過のなかでいちばん印象的だったことは何ですか?
蜘蛛の巣のようにインターネットの隅っこにまで行き届いたことかな。まるでウィルスが広がっているようだったよ。しかもそれは、一度広がり始めたら、もう止める事が出来ないんだ。人は皆、音を聞いてそれについて行く。僕らの音楽は暇を持て余す若者と年寄りに、聖書の中の福音みたいな形で現れたのかもしれないね。
──ヤング・ファーザーズの音楽の制作方法を教えてください。例えばどんな事からインスピレーションを受けていますか?
(想像してみて)道を歩いていて、地下へ下がってドアを開け、さらにもう一つのドアを抜けたら普段自分が運んでいる「モノ」が「金(ゴールド)」に変わるんだよ。その金が音楽になるのさ。
Young Fathers -“Come To Life”
──あなた達の曲は、どの曲もビートと歌がリンクしています。トラックの音色に呼応するように声が、その曲にとってベストな表現で歌われていて、テーマにむけて三人がひとつになって向かっていくように聴こえます。それがヤング・ファーザーズの素晴らしいところだと思います。これだけトラックを作る人とリリックをかき歌う人と表現の意思疎通ができるのは面白いです。曲作りはリリックが先ですか? ビートが先ですか?
歌詞……。いや、ビート……。いや、やっぱり歌詞。僕らにはルールなんて必要ないんだ。重要な事は全てが形になる事。どういう事かというと、歌詞とビートにはつながりがあるんだ。例えば、60年間結婚している背の高い男性と背の低い女性が居るとする。1人は仏教徒でもう1人はカトリック。子供はいないけどペットはたくさんいる。そこでもし1人が死んでしまったら、もう1人も死んでしまうんだ。なぜなら違いが多いからこそ2人はお互いがなくてはならない存在だからだ。そう、僕らの音楽におけるビートと歌詞は、そのように繋がっているんだ。