──今の状況にある日本人に最も伝えたいことを教えて下さい。

Alec 96年頃にはじめて日本に来た時よりも、海外に対して開かれていると思ったよ。たとえば看板。当時は英語で書かれた看板なんてほとんどなくて、トイレを探すのにも苦労したんだけど、今はたくさんの言語で書かれていて、すごく充実している。海外を受け入れる体勢が広がったことによって、日本の文化を広めやすくなってきているよね。これは素晴らしいことだと思う。

みんなは当事者なので気付きにくいのかもしれないけど、日本には音楽・デザイン・テクノロジー・アート・ホラー映画でさえも良いなと思えるところがたくさんある。宗教にとらわれていないところも素敵だし、食べ物だって魅力的。ヨーロッパが日本文化に影響されて作り出した良いものだってたくさんあるんだよ。

震災の直後は政府が真実を発表していなくとも、ブログなどのネットメディアから情報を得ることもできたのに、今は政府による言葉の規制やフィルターがあって、それすら難しく、どんどん自由がなくなっているよね。でもそういう環境だからこそ、日本のみんなは自分たちらしく、今までどおりクリエイションを続けていってほしい。ATRがこうやって自分たちのスタイルを続けてきたようにね。

──漫画などはいわゆる「オタク文化」で、すごく閉鎖的な環境の中で文化形成されてきた背景があります。クールジャパンなどの政策で安易な海外流出が行われることによって、今までしっかりと育ってきた「日本的な漫画」が育ちにくい環境になってしまうのではないかという危惧もあります。

Alec 良い質問だね。ただ、俺は危険だとは思わないな。もしもっとオープンになったとしても、たとえばドイツ人に気に入られようとしてマンガを描こうとする人なんていないと思うんだ。日本のマンガそのものが世界に受け入れられたわけだから、そのスタイルを大事にしようとする人が多いと思う。開示する、開示しないの問題じゃないんじゃないかな。

Rowdy 音楽でも同じことが言えるね。他の国で売るときに、その作品のアートワークだけを変えたりすることがあるんだけど、そうやって作品そのものは変えずにまわりやビジュアルを変えていくやり方もある。たとえばマンガでも、ドイツ語に訳してキャラクターの名前を変えたりね。そういう融合によって、新しい良いものが生まれる可能性もある。

Alec 俺は『AKIRA』にとても影響を受けているんだ。もし『AKIRA』がドイツに来てくれなかったら、ATRがいなかったかもしれない(笑)! だから海をわたってきてくれるというのはすごく大事なことなんだ。日本はテクノロジーと良い付き合い方をしているし、みんな良いイメージを持っているよね。僕の親の世代なんかは「ロボット」と聞くと人を殺す悪の機械のような言い方をしている(笑)。進化するのが早いのが日本の素晴らしいところでもあると思う。

──ありがとうございます。今後のATRについて、教えてください。

Alec ヨーロッパとアメリカではまだアルバムが出ていないし、まだまだこれからたくさんのライブやミュージックビデオの制作もあるし……。そうそう、今年はクラクソンズのニューシングルのリミックスもするんだ。まだまだはじまったばかりだね!

text&interview by Kentaro Okumura
photo by TEPPEI

ATARI TEENAGE RIOT、『リセット』が意味する答えとは?


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