どことなくシュールで、どことなくキュート。洋楽ファンのマスト・イベントとして定着した<Hostess Club Weekender(以下、HCW)>において、ひときわ目を引くのがポスターやフライヤー、リストバンド、そしてオフィシャル・グッズなどにあしらわれた個性的なアートワークだ(もちろん、<HCW>のオフィシャル最新Tシャツのキャラクターデザインも手掛けている!)。その仕掛け人こそが、UK出身で現在はイタリア・ボローニャを拠点に活動するアーティスト/イラストレーターのスティーヴン・チータム(Stephen Cheetham)氏である。
毎回10組におよぶ出演アクト全員の特徴を的確にすくい上げ、鮮やかにデフォルメする彼の絵はインパクト抜群でありながら、常に対象への愛にあふれた優しいタッチが魅力。それもあってか、日本の老舗デパート「高島屋」が、チータム氏を母の日&父の日キャンペーンのデザイナーに抜擢したのも頷けるというもの。彼のクライアントはグーグル、ブリティッシュ・エアウェイズ、ナイキ、UNIQLOといった国内外の大企業にとどまらず、ブルームバーグやオックスフォードといった名門大学も含まれるが、一体どのような経緯で<HCW>のアートワークを手がけることになったのか? そのエピソードや制作時の裏話はもちろん、彼自身のルーツやインスピレーションの源も尋ねてみた。
Interview:Stephen Cheetham
活動初期に影響を受けたのはピート・ファウラーで、
彼の描くスーパー・ファーリー・アニマルズのアートワークから影響を受けたんだ
――現在はイタリアのボローニャを拠点に活動されているそうですが、幼少時代はどこで生まれ育ったのですか? また、どんな子どもでしたか。
地元はイングランドのコヴェントリーだよ。育つのには楽しいところで、18歳で大学に行くまでそこで過ごした。僕はいい子だったよ。宿題もいつも期限までに終わらせて、叱られることもあまりない、おりこうさんだったね!
――アーティスト/イラストレーターとしての道を志したきっかけは?
大学を出た後、ロンドンに引っ越してプロダクト・デザイナーとしてのキャリアをスタートさせようとしていたんだ。それが大学の専攻だったからね。デザイナーとしての仕事の機会を見つけるのはすごく大変だったんだけど、ロンドンの友達数人がライヴの企画をやっていて、彼らのためにポスターを作ってくれないかって聞かれたんだ。報酬はビールとライヴへの入場が無料になることだった。そしてみんなポスターを気に入ってくれて、もっとイラストをやってみようと思うようになったんだ。それが始まりだよ。
――あなたのイラストを初めて見たとき、真っ先にジュリアン・オピー(ブラーのアートワークなどで有名)やジェームス・ジャービス、そして若野桂さんの名前を連想したのですが、あなたがもっともインスパイアされたアーティストや人物は誰ですか?
ジュリアン・オピーとジェームス・ジャービスは間違いないね。正直に言うとモシノ・カツラはよく知らないんだけど、何だか知っているべきな気がするから、このインタビューの終わった後ですぐに調べてみるよ。僕はイラストレーションのちゃんとしたトレーニングを受けたことがないから、イラストレーターの人たちのことは自分で調べて知ったんだと思う。ジャービスの作品は、僕自身おもちゃが好きだったから知ったんだ。以前はビニール・フィギュアを集めることやストリートウェアが大好きだったんだけど、その頃近所のスケートショップで「Tattoo Me Keith」の人形を見かけてすごく気に入ったのを覚えているよ。今でもすごく好きだよ、どうしてアレを買わなかったんだろう!? 他に活動初期で影響を受けたのはピート・ファウラーで、彼の描くスーパー・ファーリー・アニマルズのアートワークから影響を受けたんだ。学校で、『ラジエイター』(97年)のジャケットのオレンジ色のキャラクターをノートに描いたのを覚えているよ。
スーパー・ファーリー・アニマルズ『ラジエイター』ジャケ写
――チータムさんは実在のモノ・ヒト・コトをデフォルメするのが得意とお見受けしますが、創作活動におけるインスピレーションは主にどんなところから受けますか?
シンプルさやクリーンさのあるイラストが好きなんだ。ずっと前から、スケッチの線よりもクリーンでぱりっとした線の方に惹かれるんだよ。その好みがどこから来ているのかは分からないけど、元々自然とそういう好みみたいだね。それか、僕がコンピューター無しでは絵を描けないせいかもしれないけど!
――今ではグーグル、ブリティッシュ・エアウェイズ、UNIQLOのような大企業から、ブルームバーグやオックスフォードといった大学の仕事も担当されていますが、初めて「人のために」描いた絵はどんなものでしたか?
学校のアートの授業以外で初めて描いたイラストは、「This Is Music」っていう僕の友達がロンドンでやっていたライヴイベントのフライヤーだったよ。何のバンドだったかとか、内容が何だったのかは思い出せないけど。