「お金が使えない、触れられない」というなんともキテレツな「お金恐怖症」の主人公・タケと、田舎“かむろば村”の人たちとの交流を描いた、いがらしみきお原作の漫画『かむろば村へ』を、作家・演出家・俳優・映画監督・脚本家とマルチに活躍し続ける松尾スズキが堂々の映画化。『ジヌよさらば〜かむろば村へ〜』が4月4日(土)からいよいよ公開となる。
ファン待望の、実に8年ぶりとなる松尾スズキ監督の最新作。独特のユルい空気感に、絶妙なセリフ回しはそのまま、主人公を始め、現実離れした個性豊かな登場人物たちのやりとりに笑いは絶えず、久々の松尾スズキ節に心地のよさを感じた。大人計画の錚々たるメンツをはじめとして、主人公に選ばれたのは『恋の門』以来、監督松尾スズキとは10年ぶり二度目のタッグである松田龍平。その他に、どこか俗っぽい神様を演じた西田敏行、阿部サダヲ、松たか子や二階堂ふみなど、彼らは松尾スズキの手によってどのような化学反応をおこしたのだろうか。
自身も今作で多治見役として出演も果たしている、監督・松尾スズキに、久方ぶりとなる映画の現場への思いや、役者と監督をこなす自身の在り方について語ってもらった。
Interview:松尾スズキ
(『ジヌよさらば〜かむろば村へ〜』監督・脚本・出演)
––––『ジヌよさらば〜かむろば村へ〜』は『クワイットルームにようこそ』以来8年ぶりの監督作品でしたが、松尾さんの映画に対する向き合い方や作り方などに何か変化はありましたか。
撮り終わって感じたことですけど、前みたいにカット割に凝ったりとか、「これは映画なんだ」と強く思う力が抜けたかなって気はしますね。それは多分『クワイエットルームにようこそ』でついた自信ではあるとは思うんですけど。「ちゃんと人間が芝居していれば、そんなにカットは割らなくていい」っていう。前は、舞台出身だけど映画の監督になったということで、舞台出身だって強調されることがすごく嫌だったので、「より映画的に」ってちょっと囚われていたような気がしていて。そこから解放されたことが、自分にとって良かったかなとは思います。
––––『恋の門』も原作に忠実だったと思うのですが、今回は忠実の意味が違って、映画が松尾さんの血肉になっているのかなっていう感じがしたのですが。
そうかもしれないです。8年間、撮らなくて発酵したものがあるかもしれないですし、自分が映画を見るときの好みも変わってきたのかなとも思いますし。いがらしさんの作品のリズムっていうのも大きく影響はしていると思うんですけど。
––––久しぶりだけど、肩に力がはいらずに撮影できたと。
撮ってはなかったんだけど、松本人志さんの映画などに出ながら「次撮るときはどうしよう」とか監督さんの撮り方をよく見てて。そうして出来上がった作品を見て「こういう撮り方もあるんだ」っていうシュミレーションをずっとしてました。今回は撮影に入るまでの準備をしっかりしたのもあって、わりとリラックスした状態で現場に入ることができましたね。