フランス人のジルダ・ロアエックと日本人のマサヤ・クロキにより02年にパリで設立された〈キツネ〉。彼らの最大の特徴は、人気コンピレーション『キツネ・メゾン』シリーズに代表される、最新の音楽のトレンドセッター的な審美眼。日本の寓話で人に化けたりもする〈キツネ〉という名前は、そんな彼らの「多面性/常に変化し続けること」の象徴だ。実際、彼らが40作品にものぼるコンピ&リミックス盤やレーベルからのオリジナル・アルバムで紹介してきた面々の中には、シミアン・モバイル・ディスコ、クラクソンズ、デジタリズム、ラ・ルー、イズ・トロピカル、トゥー・ドア・シネマ・クラブなどを筆頭に人気アーティストがずらり。特定の音にとらわれず、「2人の新しい興味が反映されるのが〈キツネ〉」というレーベル・カラーを確立していった。
では、そんな〈キツネ〉の現在を知るには何を聴くべきか? 今年に入ってリリースされた、コンピ最新作『キツネ・ニュー・フェイス 2』もいいでしょう。でも今手に入れるべきは何と言ってもロンドンの4人組、シチズンズ!の最新作『ヨーロピアン・ソウル』。何しろ彼らは、デビュー作から所属する〈キツネ〉生え抜きのインディ・バンドのひとつ。つまり、この4人は〈キツネ〉が自信を持って世に送り出すバンドということであり、インディ・ロックとエレクトロを融合させた音楽性も、レーベル・カラーのど真ん中と言っていい。
『ヨーロピアン・ソウル』ジャケット
Citizens! – “Lighten Up”
2010年夏。友達のハウス・パーティでガール・ハントに失敗したメンバーが、様々な音楽をかけて「みんなが踊り続けるのはどういう曲か?」を試しているうちにバンドに発展したというシチズンズ!。12年のデビュー作『ヒア・ウィ・アー』では、「メインストリームのポップ・ミュージックをバンド編成でやる」という意志のもと、フランツ・フェルディナンドのアレックス・カプラノスをプロデューサーに迎えて作品を制作。これは、共通の友人を通してデモ・テープを聴いていたアレックスとメンバーが飲み屋で音楽の話をしていて意気投合。アレックスの方からプロデュースを買って出るという経緯で起こった出来事だった。この作品からは“True Romance”や“Reptile”がクラブなどでもアンセムに。
CITIZENS! –“True Romance”
CITIZENS! –“Reptile”