今回は、ちょっとマニアックな米国のバンドによるワンカットMVをご紹介! 今回、ピックアップしたいのがNOVA MOBによる”Old Empire”のMVです。
NOVA MOB – Old Empire
先ずは、このバンドのディティールについて簡単に解説をさせていただきます。皆さんは、Husker Du(正確なバンド表記は、“u”の上に所謂メタルウムラウトの点々が付きます。読み方は”ハスカー・ドゥ”)というバンドをご存知でしょうか?
Husker Duは、80年代のアメリカン・ハードコア・ムーヴメントを代表する伝説的な存在であり、現在に繋がるパンク、ハードコアのサウンドに多大な影響を与えたバンドです。
ギター&ヴォーカルのボブ・モールド、ベースのグレッグ・ノートン、ドラムのグラント・ハートの三人によってミネソタ州で結成されたHusker Duは、結成時は猛烈なスピード感を有した荒々しいハードコアパンクを鳴らしていましたが、徐々にポップでエモーショナルなサウンドとメロディアスな歌声をパンクロックに融合させていき、90年代以降に世界的に大ブームとなる”メロコア”や”エモコア”の元祖というべきサウンドを完成させます。
Green Dayのように世界的な名声を得たメロディックなパンクバンドもこのHusker Duからの影響を公言していますし、ミニアルバム『Metal Circus』やオリジナルアルバムの『Zen Arcade』『New Day Rising』、そしてメジャーレーベル移籍後に発表した『Candy Apple Grey』といった諸作品は、パンク、オルタナティヴロックの歴史に残る名盤中の名盤。アメリカのロックロック・ヒストリーを振り返る上で決して無視することができない重要バンドの一つと言えるでしょう。
NOVA MOBは、そんなHusker Duのドラマーだったグラント・ハートが、Husker Du解散後に結成したバンドであり、中期〜後期Husker Duのサウンドを色濃く受け継いだメロディアスなロックを聴かせてくれます。
“Old Empire”は、1stアルバムであるセルフタイトル作『Nova Mob』冒頭に収録された楽曲。そのMVは、ワンカットで製作されており、主演のグラント・ハートがエレベーターや階段を使ってビルの中を上へ上へ…と上昇していく姿がシームレスな映像の中にパッケージされています。
エレベーターのように如何にもコントロールの難しそうなギミックや数多くのエキストラを駆使しつつも、呼吸とタイミングを見事に合わせて構成された映像には、その音楽性と同様に胸に迫ってくるような強烈なエモーションが感じられます。
後半、明らかに焦りながら階段を駆け上がっていくグラント・ハートの姿なんて、思わずグッときてしまいますよね。
とてつもなくメジャーなバンド、MVではありませんが、NOVA MOB……グラント・ハートが残した“Old Empire”のMVは隠れた名曲であり、素晴らしいワンカット作品だと思います。