ビョークやシガー・ロス、ムームといった著名なアーティストを輩出してきた音楽国、アイスランド。大規模な音楽フェス、<Iceland Airwaves>の開催でも世界的に知られる同国において、夏の一大イベントとして新たに定着し始めているのが<All Tomorrow’s Parties Iceland>だ。今年、現地で同イベントに参加してきた筆者が、その見どころを紹介したいと思う。
<All Tomorrow’s Parties Iceland>とは何か?
<All Tomorrow’s Parties Iceland(以下、ATP Iceland)>は、その名の通り、オルタナティヴ、インディー系ロックの祭典である<All Tomorrow’s Parties>が夏のアイスランドで行う音楽イベントである。ホストとなるミュージシャンやクリエイターがキュレーションを務め、それぞれの感性でラインナップを決めるというユニークな手法で音楽ファンから支持を得ている<All Tomorrow’s Parties>。
そのアイスランド版となる<ATP Iceland>は、世界中からバンドが集まり、3日間に渡ってライヴステージが繰り広げられるというスケールの大きなものになっており、今年は7月2日(木)から4日(土)にケプラヴィークにて開催された。このイベントの初開催は、2013年。ポーティスヘッド、シェラック、モグワイらを招聘した2014年に続き、本年度が3回目の開催となるまだまだ新しいロックフェスである。
インディー系のフェスティヴァルということもあってか、チケット価格はかなり安い。チケットは、<Super Early Bird><Early Bird>
会場ではチケットと引き換えに、リストバンドを貰える。この辺りは、通常のロックフェスと変わらないのだが、おもしろかったのはそのリストバンドが6年前に行われたATPイベント(ディーヴォ、キリング・ジョーク、スリープらが参加した<ATP Vs The Fans 2::The Fans Strike Back!>)のものを使い回していたところ。
この辺りの独特の緩さというか、如何にもインディーらしいローファイ感も一種の味か。
<ATP Iceland>その豪華ラインアップを振り返る
本イベントは、一部のステージに出演するアーティストを除いて、特定のキュレーターを設けず<ATP>主催の“ロックフェス”形式でのラインナップ展開を行っている。その為、これまでの<ATP>開催事例に比べても、よりバラエティーに富んだバンド、アーティストが揃っている。
今年の<フジロック・フェスティバル>にも来日したベル・アンド・セバスチャンのような人気アーティストを筆頭に、パンクロック界のゴッドファーザーたるイギー・ポップ、ポストロックのゴッドスピード・ユー!・ブラック・エンペラー、オルタナ、グランジ代表マッドハニー、後に続くエモコアの礎を築いたポストハードコアバンドであり、奇跡の再結成を果たしたドライヴ・ライク・ジェフも参戦。
ジム・ジャームッシュの映画『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』への出演でも知られるホワイト・ヒルズ(写真)や、ニューヨーク・アンダーグラウンド・ロックシーンのドン、スワンズなど、実に<ATP>らしいバンドも揃っている。
さらに、ラン・ザ・ジュエルズにパブリック・エネミー(残念ながら昨年の来日では入国できなかったフレイヴァー・フレイヴがフロントにいる完全体のPE!)といったヒップホップ組やゴースティジタルのようなテクノ、エレクトロニカ系のアーティストまでもが<ATP>の旗手の下、アイスランドの地に集結するのだ。
特定の音楽性やスタイルに偏ることなく、様々な音楽ファンにアプローチできるラインナップでありながら、その選出には“オルタナティヴ”や“インディー”のエッセンスがシッカリと感じられるのは、音楽ファンにとって嬉しいポイントだろう。
これだけのバンド、アーティストを前述のようなチケット価格で観ることができるのだから何ともありがたい。演奏時間は、基本的に持ち時間40分から70分程の“フェス仕様”ではあるものの、バンドによっては2時間のロングセットが組まれていたりもするので、満足感も十分だ。
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