今回、紹介するワンカットMVはシザー・シスターズ(Scissor Sisters)“She’s My Man”です。早速、MVを観てみましょう。
Scissor Sisters – She’s My Man
ご覧の通り、男女間のストーリーを非常にシニカルかつブラックなユーモアで描き出したMVとなっています。
シザー・シスターズは、ロック好きならばちょっとノスタルジックを感じてしまうようなグラムな出で立ちと、ポップかつロックな楽曲で一躍人気者となったアメリカのバンド。
しかしながら、このMVを観た多くの日本人は、MVの中で演じられるパフォーマンスに条件反射的にあるテレビ番組を連想してしまうのではないでしょうか?
そう! 萩本欽一さん司会の素人参加型番組『欽ちゃんの仮装大賞』です!
『欽ちゃんの仮装大賞』とは、日本全国から集まった参加者が思い思いにアイデアを詰め込んだ仮装でパフォーマンスを行い、それを審査員が採点する……という概要の説明が不必要なくらい、日本人にはお馴染みの長寿番組です。
そんな『仮装大賞』と、このシザー・シスターズのMVは、構成が非常に似ていると思うのです。
具体的には、パフォーマーがワンカットの長回し、しかも、カメラワークを全くといっていい程使用しない、一方向からの定点カメラ的な撮影の前でパフォーマンスを行っているところです。
しかも、このMVで観ることができる身体の切断やセットをグルグル回して視点を切り替えるギミックは、『欽ちゃんの仮装大賞』で様々な参加者がパフォーマンスに用いていた定番のトリック。今にも画面の端から欽ちゃんこと萩本欽一さんがバニーガールを引き連れて飛び出してきそうです。
アメリカでもこういった『仮装大賞』的なパフォーマンスって文化的に昔からあったりするものなのでしょうか……?
勿論、お茶の間的な微笑ましい“緩さ”がある素人がテレビの中で行うそれに比べると、Scissor SistersのMVはずっとテクニカルで完成度の高いパフォーマンスを行っていますが、日本人ならば思わず強烈な既視感と共に、欽ちゃんの顔とステージ脇に据えられた得点表示の電光バーを連想してしまうこと必至なMVです。
もしも、このMVの出演者たちが『仮装大賞』に出演したら……結果は、間違いなく「合格」! 満面の笑みを浮かべた欽ちゃんが、メダルをその首にかけてくれるでしょう。
こちらも非常にユニークなワンカットMVです。