世界の電子音楽を牽引する〈raster-noton〉の創設者の1人であり、オーディオ・ヴィジュアルのパイオニアでもあるフランク・ブレットシュナイダー(Frank Bretschneider)が3年振りに来日する。
待望のパフォーマンスを前に、今年発表した最新アルバム『Sinn + Form』の事などを中心に語ってもらった。
Interview:Frank Bretschneider
ーー今年、『Super.Trigger』以来約2年振りのアルバム『Sinn + Form』を前作と同じく自身の〈raster-noton〉からリリースされ日本でも好評ですが、このアルバムに込めた意図やコンセプトなどをご紹介下さい。
『Sinn + Form』では、、音楽という枠内において、SINN(内容)とFORM(形式)の関係性を明らかにしたかったのです(補足:芸術、文学、映画における「物語」とそれを伝える「構成」の関係性の様に、彼は音楽において「内容」と「形式」という語をここでは当てている)。両方が統合される様な点を見つけようと挑戦しました。それは例えるならば、現代のデザインや建築で見られる「形態の機能に対する追従性」と言えるでしょうか。この作品で明らかなのはリズムが存在しない事でしょう。少なくとも、ビート/小節と分類され得る、容易にカウントが行える様な類のリズムはありません。前作と比べると、即興性/ハーシュ性/攻撃性といった要素を感じるかもしれません。『Sinn + Form』はある種、20世紀の前衛的な電子音楽や即興音楽へのオマージュなのです。レコーディングは2014年7月、ストックホルムにあるEMSスタジオにてBuchlaとSergeのモジュラーシンセサイザーを使用して行いました。
『Sinn + Form』
ーー長いキャリアをお持ちですが、制作に関する一貫した考え方はありますか?
私にとって「決まった方法/固定観念/古びてしまった表現」を避ける事が、制作においての重要事項です。まだまだ多くの事を学習、探求しなければなりませんし、常に新しい方法を模索しています。音楽において、驚きの瞬間という時があります。次に何が起こるかを知る事無く、方向性自体が、速度/音/強度/雰囲気において完全に変化する瞬間です。計測不能、予知不能であり魔法の瞬間と呼び得る時です。
ーーあなたにとってオーディオ・ヴィジュアルとはどのような意味合いを持ちますか?
音楽を可視化する事です。私はヴィジュアルをある種、音楽を完成させる為の付加もしくは案内役として捉えています。しかしながらヴィジュアルで詳細な解説を行う様な表現は避けています。ストーリーを伝えたいのではありませんから。ですので多かれ少なかれ、抽象的な形式:幾何学模様、パーティクルエミッター、ベクトルスコープ(リサジュー図形の様な)を使用しています。
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