凝縮された音のエネルギーはザ・ビートルズ(以下、ビートルズ)に勝るとも劣らない。全員が岡本太郎好きで、ラモーンズのように全員苗字はオカモト。だからOKAMOTO’S。ちょっと人を食ったような遊び心もまたビートルズ流なのだろうか。映画『にがくてあまい』の主題歌“Burning Love”を発表したばかりのOKAMOTO’Sの4人の中で、最もビートルズのことが好きなオカモトコウキ(ギター)に、ビートルズのライヴ・ドキュメンタリー映画の関連作品として発売される『ライヴ・アット・ザ・ハリウッド・ボウル』の聴きどころについて訊いた。
Interview:OKAMOTO’S(オカモトコウキ[Gt])
――まず、聴き終えていかがでしたか?
ハリウッド・ボウルのライヴは、当時出たレコードも聴いていましたが、今回は音質や音の分離がとても良くなり、リアリティがすごく増していますね。歓声も、もともと3トラック録音だったというので作業は苦労したと思いますが、大きさも含めていい落としどころになっていると思います。
ビートルズがライヴでどんなふうに演奏していたのか、どんな熱量を持っていたのか、それがひとつにまとまって伝わりやすくなったなと。“Roll Over Beethoven”など、1回途中で演奏を下げ、また上げて盛り上げる演出や、音量差のある演奏はダイナミクスがあります。小さいライヴハウスで活動していた強みというか、生音の強みを感じました。それにしても、ドラムの前にアンプがあって、モニターの返しがないという劣悪な環境なのに、よくあそこまで息を合せられるなと。コーラスも含めて。ビートルズは、場数を踏んだうまいバンドだったということですね。
――それぞれの楽器についての印象は?
第一印象としてはリンゴのドラムが強力でした。音も迫力があり、すごくスウィングしているというか、単なる8ビートではなく微妙にシャッフルしている彼ならではのドラムが味わえる。ドラムだけでグルーヴしている。リンゴは普通のプレイでも半ハットのシャッフルで叩きますが、あれをできる人はなかなかいませんね。ギターも今と違って歪んでいるわけではないのですが、塊になってダーンとくる感じが凄い。
ヴォーカルはジョンが特に強力ですね。“Twist And Shout”は、声が出ていてすごくやる気もあったんだなと。ポールは普通の発声で声を出すからライヴをやればやるほど声が出るけど、ジョンはだんだん声がかすれていってしまったりするので、善し悪しがはっきり出る。でもこの時はコンディションが良く、ジョンの一番いい時期のヴォーカリストとしての魅力が伝わってきます。
Twist and Shout: Live At The Hollywood Bowl
photo by The Music Center Archives/Otto Rothschild Collection
――当時出たハリウッド・ボウルのライヴ盤はいつごろ聴いたんですか?
高校生の時です。叔父の家にビートルズのLPがたくさんあり、ハンブルクのスター・クラブのライヴ盤もそのころに聴きました。あれはデビュー直後の乱暴でパンキッシュな勢いのあった時期の演奏ですが、ハリウッド・ボウルのライヴ盤は、デビュー後のいちばんいい時期の演奏だと思います。66年になるとだんだんやる気がなくなってくるので(笑)。“Help!”や“Ticket To Ride”のようなライヴ後のレパートリーも入ってきて、64、65年はバランスもいいですね。
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