「オランダの爆音に踊った夏 Hardcore 野外Festival 2016最前線:前編」では、<Defqon.1 2016>を紹介しました。次に紹介するフェスは<Dominator 2016>。私の「Hardcore」の世界観を変えてくれた<Dominator 2016>をレポートしていきます。
オランダのHardcoreフェス<Dominator 2016>レポート!
<Dominator 2016>の開催は2016年7月16日の1日だけである。チケットは1日券で65ユーロ(約7,500円:1ユーロ115円換算)とオランダのフェスの中では割高の値段設定であるが、6月頃にはソールドアウトのアナウンスがされていた。会場入口に到着すると60から70台のバスが停留しており、どのバスからも「Hardcore」が流れていた。エントランス付近では、会場オープンを今か今かと待つ男たちが異様な雰囲気を漂わせていた。札付きの悪風な男達がたむろしている。
<Dominator2016>は全8ステージで構成され、私は「THE HAVOC」の撮影クルーとして参加をした。
THE HAVOCは、Hardcoreのジャンルでも特にBPM(テンポ)が180から200と非常に早い「Terror」と言われるジャンルを中心としたDJ陣がランナップされている。<Dominator>は「Art of Dance」がフェス全体のオーガナイズを行っているが、「THE HAVOC」のブースを取りまとめていたのは香港系オランダ人AKIRAである。彼はオランダで「HONG KONG VIOLENCE」と言うチームを持っており、コアなHardcoreヘッズ達から絶対的な信頼を得ている。「AKIRA」と日本のHardcoreシーンは非常に密接で「Superbad MIDI Breaks」のリーダーKousei Murakiと非常に親交が深い。国を越えて、お互いが開催する日本・オランダのイベントでブッキングを行っておりAKIRAは過去3度来日している。
THE HAVOCのブースでは総勢12組のアーティストがラインナップされていた。個人的には2015年の<Dominator>でも出演をしていた青色の髪を携えたMITHRIDATEのアクトを撮影できるのが楽しみであった。今年も期待通り、非常に重いキック、ビートを中心に曲を繋ぎながら、要所要所に可愛いファンシーでメローな曲も挟みこんだりする。そのギャップがチャーミングで魅力的に感じるのだ。MITHRIDATEには男性ファンは勿論の事、女性ファンも多く、彼女に声援を送るHardcore女子を今年も沢山見ることができた。
そしてMITHRIDATEの次に登場したのは、オランダ第2の都市ロッテルダムを拠点とする「PRSPCT」チームのTHRASHERの登場である。「PRSPCT」は、オランダのHardcore界でも際立っているチームで知られている。その理由は、音楽性はもちろんのこと、メッセージ性、目玉をモチーフにしたロゴデザイン、何よりメンバーから漂うアンダーグランドの雰囲気とカリスマ性である。「PRSPCT」は、唯一無二の存在感を持っているチームで、リーダーのTHRASHERが、DJステージに立つと、目当ての客が一気に集まった。
盛り上がりどころで、鮮やかなタトゥーが施された腕を空に掲げ、オーディエンスもそれに呼応する。DJセットのパフォーマンスだったが、まるでライブを観ているという感じであった。「PRSPCT」は、Hardcoreにオランダで非常に人気の高いDrum&Bassの音を取り入れており、この2つのジャンルを組み合わせて、感性を刺激するような選曲と最高のステージを作ってくれた。
また、夕方の時間帯ではTHRASHERが「PRSPCT」のメンバーと共に活動するHardcore+Drum&Bassバンド形式のチーム「THE HARD WAY」名義で同ステージに出演した。Hardcoreのフェスティバルでは珍しいギター・アンプがステージ上に設置され、さらに、ステージには、THE HARD WAYのフラッグ2枚が威風堂々と飾られていた。
ドレッド姿でミキサーを操るBong-Ra、黒いサングラスをかけVAIOのPCを操るLimewax。この3人がステージに立つと、より一層の迫力を放っていた。THRASHERがギターをかき鳴らし、マーシャルアンプからは歪んだギター音が聞こえる。バックには両サウンドチームが次々と、激しいリズムを入れ込んでくる。後半には、観客席に飛び降りて血管を浮き立たせながらシャウトするTHRASHERの姿に鳥肌が立った。「PRSPCT」のウェブサイトを是非チェックしてみて欲しい。
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