道の傍らには、散った桜の花びらの山。道路のゴミと混ざって、無残に踏みつけられている。東京のお花見シーズンはもう終わりのようだ。
4月半ば、IMALUによる新プロジェクト、LULU X(ルルエックス)のホームページにて限定公開された“Where Are You Now”のミュージック・ビデオ(short ver.)が話題になっている。撮影はKOHHなどのミュージック・ビデオを手掛けたことでも知られる気鋭のクリエイティヴ・プロダクション「Havit Art Studio」の今野里絵。吉村界人、阿部ジュリアら新世代のモデルたちの出演もその映像美とともに鮮烈な印象を残す。
このミュージック・ビデオには様々なカップルが登場するが、しかし彼らは必ずしも幸福そうには見えない。燃えるように咲き、やがて散ってしまう桜の花びらのように、刹那的で、うっすらとどこかに不安の影を漂わせる。この儚くも美しい映像に、LULU Xの歌声がそっと寄り添う。
今回は6月20日(火)に配信限定の6曲入りミニ・アルバム『Do I』、これに先駆けて4月28日(金)に先行配信シングル“Where Are You”をリリースしたLULU XことIMALUにインタビュー。後半では同じく本日フル尺公開された“Where Are You Now”のミュージック・ビデオにフォーカスを当て、IMALU×今野里絵(Havit Art Studio)×吉村界人のスペシャル鼎談をお届けする。
LULU X “Where Are You Now” (Official Music Video)
Interview:LULU X(IMALU)
IMALUもLULU Xももちろん私であることには変わりはないんですが、LULU Xはより、実験的というか、ラボラトリー的な感じで考えていて、いろんなものに変えられて、いろんなものを自由に表現できる、ある意味、実験の場にもしたいなと。
——今回のリリースにあたり、IMALUからLULU Xと名前が変わりました。まずその理由から教えていただけないでしょうか。
LULU X 実は今回もIMALUとしてリリースする予定だったんですけれど、作品を作り終えて、自分で作品を聴いてみたら、やっぱり変えたいと思って、自分からお願いをしたんです。
——それはなぜだったんですか?
LULU X 19歳のころにIMALUという名前でデビューして以来、テレビのお仕事をはじめ、いろいろなお仕事をやらせていただいてきて。その中で、IMALU=タレントというイメージを持ってくださっている方も多く、そういう方々にも音楽をやっているということを知ってもらいたかったのと、IMALU=タレントというイメージを取り払ってフラットな感覚で新しい作品を聴いてもらいたいなと思って。実はタレント活動をするうえでの芸名と音楽活動をするときの名前をわけたほうがいいんじゃないかという議論は当時からあったんです。
——そうだったんですね。
LULU X はい。でも当時、20歳そこそこの私は「どちらも自分の活動なのに、なんで変えなきゃいけないの?」って思って。例えばテレビのお仕事だと、共演者さんやスタッフさんと力を合わせて、一緒に良いコンテンツを作っていくという感じなので、自分だけが前面に出るということは考えないですけれど、音楽活動はよりパーソナルな表現で、孤独というか、自分というものをより強く打ち出さなくてはいけないですよね。であればこそ、どちらも自分の本名でもあるIMALUでやるべきだと思って。ただの頑固だったのかもしれないですけれど(笑)。
——自身の音楽活動をより知ってもらいたいということでしたが、YouTubeで様々なアーティストの楽曲をカヴァーするシリーズもやっていらっしゃいますよね。
LULU X そうですね。あれはまさにそういう目的でスタートしたものだったので。そもそも音楽をやっているということを知らない方も多いと思ったので、まずは知っていただこうと。
IMALU Live Lounge – The Weeknd Medley (The Weeknd) – Cover
——ちなみにLULU Xという名前にはどういう意味が?
LULU X 「LULU」というのは、私が小学2年生の時にいちばん最初に飼ったわんちゃんの名前なんです。いま飼っている犬も「Baloo(バルー)」。実は最初の「LULU」の曾孫です。私は動物が大好きで、犬と過ごしている時間は自分の人生において、とても重要な時間なんですね。ある意味、家族以上の存在というか。
——「LULU」という名前はIMALUさんが付けたんですか?
LULU X そうです。昔から「LULU」という響きがなぜかすごく好きで。なぜか好きな色とか、なぜか好きな数字ってあるじゃないですか。理由はわからないけど。私にとっては「LULU」もそうなんですよね。
——Xは?
LULU X Xは何にでもなれるという意味で。IMALUもLULU Xももちろん私であることには変わりはないんですが、LULU Xはより、実験的というか、ラボラトリー的な感じで考えていて、いろんなものに変えられて、いろんなものを自由に表現できる、ある意味、実験の場にもしたいなと。今回も信頼できる素晴らしいクリエイターの皆さんと一緒に作品を作ることができたわけで、そういう意味では、私個人のプロジェクトという概念すらなくて、いろいろな人たちと関わりながら、面白いことに挑戦していく場所くらいの感じで考えています。
——音楽性、あるいはファッションやヴィジュアルのイメージなどにおいてのコンセプトのようなものはありますか?
LULU X まだまったく固まっていないです(笑)。むしろあまり固めずにいろんなことをやっていきたいなと思っています。今回、アーティスト写真を撮影する時も少しイメージを変えたいなと思って、髪を青く染めたんです。テレビのお仕事だとなかなかこういう色にできなくて。お料理の番組だったり、朝の爽やかな番組で、この髪の毛の色は絶対にないし(笑)。いまのはかなりちょっとした例ですけど、LULU XではIMALUではなかなかできなかったこと、自分が純粋にやりたいと思うことを、制約を作らずにどんどん表現していきたいですね。
——本作『Do I』を制作していくうえで、何か方向性のようなものはあったんですか?
LULU X 今回は本当にゼロからでした。どんな音がいいかなあというスタッフや周りにいる方々との話からはじまり、デモを作ったり、スタジオに行って作業をしたりしているうちにだんだん出来上がっていった感じです。今回作品に入っていない曲も結構ありますよ。あと今回はChocoholicちゃんとの出会いも大きかったですね。
——Chocoholicさんは今回4曲手掛けられていますね。彼女との出会いはどういうものだったのですか?
LULU X 彼女のことを知ったのは、SoundCloud(音楽ストリーミングサイト)ですね。当時、彼女はアルバイトをしながら、たまにDJをするという生活を送っていて、あまり情報がなかったんです。SoundCloudにもたぶん3曲くらいしか楽曲を上げていなかったんじゃないかな。でもその3曲が強烈に印象に残って。ぜひ一緒にやりたいと思って、自分からコンタクトを取ってオファーしたんです。
——Chocoholicさんのサウンドのどういうところに魅力を感じたのですか?
LULU X すごい独特だし、かっこいいし、センスの塊というか。とにかく大好きです。私よりも年下ですけれど、同性だし、世代も近いし、いろいろプライベートな話もするので、歌詞を書くとき、彼女のプライベートな状況に影響されたりもしました。
——どういうことですか(笑)?
LULU X 「好きな人ができた」とか「彼氏と別れた」とか、そんなことも話すので、「好きな人ができた」時はすごいハッピーな曲がくるし、逆もある(笑)。私は曲をもらってから歌詞を書くから、彼女が作ってくる曲のテンションからインスピレーションというか、かなり影響を受けますね。プライベートも知っているだけに(笑)。でも肝心の自分がしばらく恋愛をしていないので、恋愛についての歌詞は、なかなか言葉が出てこなくて困りました。恋愛をしていたら、スラスラ書けるんだろうなーと。恋愛のようにわかりやすい感情が自分にない状態だったので、むしろ今回は自分を掘り下げる方向にいきました。自分と向き合って、もう掘るとこないくらい、えぐってえぐって、言葉を捻り出しました。それはそれでとても新鮮な作業でしたけど。
——表題曲の“Do I”は、決意というか、力強いメッセージを感じる歌詞だと思いました。
LULU X “Do I”は、これからはじまることへの不安をストレートに言葉にしています。不安だけどやるしかないというか。まさにこの作品を作っているときの心境ですね。今回は長いブランクを経ての再出発でもあり、LULU Xとしてのデビューでもありだったので、これで聴いてもらえるのだろうかとか、売れなかったらどうしようとか、すごい不安もありました。でも決して嫌な不安ではなく、新しいことがはじまるドキドキもあって。そんな心境を歌った曲です。