今年の冬は、ここ数年例を見ないほどに見逃し厳禁なUSインディ系アクトの来日公演が目白押し。11月20日(月)から始まるファイスト12年振りの単独ツアーを皮切りに、ミツキ、シンズの来日があったかと思えば、年明けにはフォスター・ザ・ピープルやフリート・フォクシーズ、ファーザー・ジョン・ミスティの貴重な単独公演も控えている。
そんな来日ラッシュの中で、どのライブを選んで参加しようか悩んでいる人もきっと少なくないはず。そういった人にとってはまた悩みの種を増やすことになるかもしれないが、本稿では、大物による来日の合間だからといってスルーすると、きっと後悔するに違いない旬なアクトを二組紹介したい。
その二組とは、12月19日(火)に待望の初来日公演を行うフューチャー・アイランズ(Future Islands)と、1月22日(月)・23日(火)に東京・大阪をツアーするマック・デマルコ(Mac DeMarco)。
音楽性こそ全く違うものの、彼らはどちらもライブでこそ真価を発揮するタイプのアーティストだ。英米・ヨーロッパではすでに熱烈なファン・ベースを築いている彼らの、何者にも代えがたい魅力とは一体何なのか? 一組ずつ見ていこう。
フューチャー・アイランズ
百聞は一見に如かずなパフォーマンス
まずはボルチモアを拠点とする3人組、フューチャー・アイランズ。彼らのライブほど、「百聞は一見に如かず」という言葉がピッタリなパフォーマンスは他にない。今すぐにYouTubeで「future islands live」で検索して、出てきたライブ動画を片っ端から見てもらいたい。
そこで鳴らされる音楽は、ニュー・オーダーを彷彿とさせる80年代風シンセ・ポップ。ただ、その真ん中で歌っているのは、美麗で耽美的な音とは不釣り合いな老け顔の男。ゴリラのような体型に薄い頭髪、ダサい服装で、クネクネと身をくねらせながら熱いロマンスを歌い上げるこの男こそが、世界中を虜にしているカリスマ・フロントマン、サミュエル・T・へリングである。
2006年の結成以降、トータスらを擁するポストロック系レーベル〈スリル・ジョッキー〉から2枚のアルバムをリリースしたものの、決して大きな注目を集めていたわけではないフューチャー・アイランズが運命を変えたきっかけは、2014年3月3日、たった一回のTV番組出演。
アメリカでは知らない人がいないほどの老舗番組『レイト・ショウ・ウィズ・デヴィッド・レターマン』で、当時リリースされたばかりのシングル“シーズンズ(ウェイティング・オン・ユー)”を披露するやいなや、その衝撃的なパフォーマンスがインターネット上でまたたく間に話題に。
Future Islands – Seasons (Waiting On You) – Later… with Jools Holland – BBC Two
冴えない男のやたら熱い歌とダンスからなぜか目が離せず、何度も繰り返し見てしまう。ひとしきり笑った後に、なぜか目頭が熱くなる。不器用で滑稽だけど全力、だからこそ感動的。このTVパフォーマンスは世界各地でフューチャー・アイランズ中毒者を生み、彼らのキャリアは大きな転機を迎えることになった。
その直後、名門〈4AD〉への移籍第一作としてリリースされた4作目のアルバム『シングルズ』は、キャリアを通して初めてのビルボード・チャートにランクイン(最高40位)。件のシングル“シーズンズ(ウェイティング・オン・ユー)”は、『NME』、『ピッチフォーク』。『スピン』といった英米の主要音楽メディアによって軒並み2014年のベスト・トラック一位に選ばれ、同年を代表するインディ・アンセムとして高い評価を受けた。
その後、サミュエルの存在はインディ・シーンを超えて注目の的となり、近年はヘムロック・アーンスト名義でラッパーとしても活動。ヒップホップとジャズをクロスオーバーさせるトロント発のカルテット・バッドバッドノットグッドや、エイサップ・ロッキー、マック・ミラー等への楽曲提供で知られるプロデューサーのクラムズ・カジノといったヒップホップ系アーティストの作品にもゲスト参加するなど、活躍の場を広げている。
今年3年振りにリリースした5作目『ザ・ファー・フィールド』でも、フューチャー・アイランズ節は健在。“シャドウズ”におけるデビー・ハリーのゲスト参加にも象徴されるように、80年代のシンセ・ポップ/ニューウェイヴへの愛はさらに深まり、哀愁のダンス・ビートとサミュエル・へリングの男臭い熱唱が生み出すコントラストはさらに鮮明に、強烈に。このアルバムを聴いて、来たるライブに足を運べば、誰もがフューチャー・アイランズの虜になるだろう。
EVENT INFORMATION
フューチャー・アイランズ来日公演
2017.12.19(火)
OPEN 18:30/START 19:30
Shibuya WWW X
ADV ¥6,300(1ドリンク別)
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