『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』などで知られるジョン・キャメロン・ミッチェル監督による最新作映画『パーティで女の子に話しかけるには』が2017年12月1日(金)に公開となります。
『パーティで女の子に話しかけるには』の舞台はセックス・ピストルズ、ザ・クラッシュなどの登場でパンクシーンが興隆する1977年のロンドン。
音楽だけを救いに冴えない毎日を送っていた内気な少年エンをアレックス・シャープが、パーティで出会った遠い惑星から来た美少女ザンをエル・ファニングが演じる、『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』のスピリットを引き継いだ斬新なボーイミーツガールの物語です。
パンク×宇宙人のボーイミーツガール映画を『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』のジョン・キャメロン・ミッチェル監督が撮ったと聞きつけたQeticで「レイチェルの全然ファイトクラブ」という映画コラムを連載しているchelmicoのRachel。
「映画について色々聞きたい!」ということでスケジュールの調整を試みましたが、『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』の舞台もあり、多忙を極める監督のスケジュールと折り合いがつかず……メールインタビューという形でお話を伺うことに!
Rachelがメールで忌憚のない質問を投げかけ、『パーティで女の子に話しかけるには』についてはもちろん最近聞いている音楽から、ヘドウィグの誕生秘話まで! 貴重なエピソードを聞くことができました!
Interview:ジョン・キャメロン・ミッチェル監督×Rachel(chelmico)
RACHEL「映画の中では様々な色が印象的だったけどジョンが好きな色はなに? 強いていうなら!」
青とか青緑が好きです。
RACHEL「緑色にはなにか思い入れがあるの? どうして緑色なの?」
宇宙人達のコロニーのインスピレーションはインドのチャクラから来ています。人体のロータスポジションの上にそれぞれのチャクラが配置されているんですが、それぞれのチャクラには色彩が決まっていて、そこからインスピレーションを得て衣装を作りました。
その中で足りていないチャクラが心臓(ハート)で、オープンハートな人という言い方をするけど、心を開くということはつまりそこに他のものを入れるということです。気持ちの上で引き入れる。第3の目というチャクラもあるけど、それはどちらかというと分析型だから、認知ということと関わっている。
でも、ハートのチャクラは気持ちとつながっているんです。それが緑のチャクラだから、そこから来ているんです。
RACHEL「サンディ・パウエル氏が衣装をデザインしているけど、どんな風に決めたの? 劇中で気に入ってる衣装はある?」
正直なところをいうと、最初は『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』の衣装をやったアリアンヌ・フィリップスにお願いしたんだけど、トム・フォードの『ノクターナル・アニマルズ』に入っているからできないと言われてしまい、怒りのあまり、彼女の最大のライバルであるサンディにアプローチしました(笑)。
ただ、よく考えてみればアリアンヌはマドンナと仕事をしたことがあるけど、サンディはデレク・ジャーマンとしたことがあるから、そういう意味では彼女の方が大物かもしれないね(笑)。彼女がイギリスでベストな人材であるのは間違いなく、『シンデレラ』や『メリー・ポピンズ』からマーティン・スコセッシまで衣装を手掛けている人だから。
一番お気に入りのルックは、PTステラたち(オレンジのコロニー)だね。
RACHEL「1番はじめに撮り始めたシーンはどこ? その日はどんな感じ? 映画を撮り始めるときは緊張する?」
はい、緊張します。まだスタッフのことをよく知ろうとしている段階だし、大体撮影の最初のカットは永遠に時間がかかってしまうんです。みんなそれぞれ初めて仕事をするし、例えば役者の髪型なんかもそこで最終的な調整が入ったりするし、キャラクターも衣装もそうだし、時間がものすごくかかる。だから、最初のシーンはシンプルなものを撮るように心がけているんだ。
主人公を演じるアレックス・シャープはこれが初めての映画だから、彼にとってはそれが初めてカメラの前に立つ瞬間でもあった。だから、込み入ったシーンにはしたくなかったというのもありました。
RACHEL「出演者の人の中には、パンクを知らない人もいたと思うけどどうやって教えたの? みんなが自分で勉強したのかな?」
読んでねと本を渡しました。観てほしい映画や『The Filth and the Fury』(※セックス・ピストルズのドキュメンタリー)のDVDも渡したし、この映画のために作った架空のパンクバンドのメンバーによるライブにも連れて行きました。
今は古風になってしまったけど、ステージダイビングとかそういうものに初めて触れてキャスト達は興奮してました。縦ノリやスラムダンス、今風でいうとモッシュだけど。誰もが少しはパンクの精神を持っていて、それを解放することが僕の仕事だったんだ。
The Filth and the Fury (2000) | Trailer | Film4
RACHEL「最近よく聴いている音楽はなに?」
いろんな音楽を聴いています。以前ほど新しいものを探しに行く時間がなくて、今日はケイト・ブッシュとニック・ドレイクを聴いていた。最近いいなと思うのは、Mitskiかな。日米ハーフの女の子なんだけど、この映画の最後の曲“Between the Breaths”を歌ってくれている。集中力を必要とする作業をしていることが多いのもあって、あまり音楽を聴けないんだよね。だから家を掃除している時ぐらいしか聴くことはないんだ。お風呂に入っている時とか。ストリートを歩きながら音楽を聴くタイプではないから。
映画『パーティで女の子に話しかけるには』エンディングソング Mitski 「Between the Breaths」
RACHEL「あの男の子たち3人にとっては劇中の出来事はトラウマ級にすごいことだったと思うけど、エン以外の2人の後日談みたいのってあったりするの? それとも考えてない?」
全員にとってトラウマというほどにはなっていないよね。例えばヴィックは、最後はエイリアンと3人でキスをします。少しのトラウマを経験するけど、初めての何かは何事であってもトラウマになりませんか? デジタルスティミュレーション(デジタルの刺激)という言葉があるんだけど、デジタルには2つの意味があって、電子的なという意味と、デジット(Digit)は指という意味でもあって、それをクネクネすることによる刺激……つまりお尻へのあのことだけど(笑)、それも経験している。
ボディシーアが「進化するか絶滅か」と言うけど、それを聴きながら男女の双子と口づけをする。観ている人はそれをいいことなんじゃないかと感じてくれるんじゃないかと思います。ヴィックも、自分の性差別主義的なマッチョな要素、今まで作ってきた表面的なものを捨て始めると感じるんじゃないかと思います。彼の最後のセリフは、「自分を世間知らずのクズだと思え。そうやって信頼を築くんだよ」というものだけど、彼のトラウマはポジティブな方へと転換されていくんじゃないかな。
RACHEL「初めてのパーティーの思い出を教えてください! (覚えてたら)」
自分で最初に開いたパーティのことは覚えているよ……確か14歳ぐらいで、自分の家の地下室で、小さな学校だったからクラスメイトの全員15人ぐらいを招待して、僕がDJをやったんだ。当時かけた曲は今でもDJをやる時にかけているよ。
「天国での3分間」というゲームがあるんだけど、男性と女性という組み合わせでランダムに2人を選んで、クローゼットの中に3分間入らないといけないというゲームです。でも、僕自身はカミングアウトする前、18年間クローゼットの中にいたんだ。ちょっと長すぎたよね。でも僕のドラッグクイーンの友達たちが言ったのは、「そこまで長い間クローゼットにいたんだったら何か着たくならない?」ということなんだ。そしてヘドウィグが生まれたのさ。
『パーティで女の子に話しかけるには』
12月1日(金) 新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ渋谷他全国順次ロードショー
Rachel(chelmico)
chelmico 講談社ミスiD2014のMC RACHEL とMC MAMIKOから成る女性2人組ラップ・ユニット。2015年5月にヒイラギペイジ作曲、chelmico作詞の1st song「ラビリンス’97」を発表し本格的に音楽活動を開始。2016年10月19日には1st album「chelmico」リリース。現在はライブ等都内を中心に精力的に活動中。
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