生憎の雨。したらせましょうかねぇ〜
ここは岸壁。岩手の内陸から流れてきた生命の山水が閉伊川からそして宮古湾へと飛び出る瞬間の場所。海と川の合流地点だ。
リアス式海岸に面した宮古は、新鮮な海産物がとっても旨いんだ。マンホールには「鮭」が刻印されていて、住民は鮭と共に生活を営んできた。11月11日は全国的にはポッキーの日だろ? こちとりゃ鮭の日さ。漢字の旁ね。市全体で盛り上がるマラソン大会がこの日開催されるくらいだからね(母は毎年出場し記録と闘ってる。行く機会があったら応援してやってくれ) 。秋になるとそこら中の家庭で鼻曲がり鮭が外で干されている妙な光景は、なかなか郷土を感じると思うぜ。
俺はガキの頃、干された鮭の頭をカワイイカワイイと言って抱きながら寝てたっけな〜。
ここの岸壁ではよく姉貴と釣りをした。「ハゼ100匹チャレンジ」とかやってたな。持って帰ってシコタマ怒られたの覚えているよ。
食ったけどね(笑)。
ニュースでみんなもよく見たでしょ? ここ。東日本大震災、押し寄せた真っ黒な海水がこの壁を乗り越える瞬間。後ろの市役所の屋上から撮られた映像だ。
横浜から戻ってきたときに住んでいた家はなくなった。生き残った倉庫の中には、未だに乾いた泥が壁を褐色に塗りかえている。雑草だけが、力強く生えていた。
ここは「女戸優(おなつぺ)」という海水浴場。夏は家族やカップルで活気に溢れる場所だった。高岩家も一億回は来たね。まぁ宮古市街からだと少し遠いから仲間は大体「蛸の浜(たこのま)」ってとこにチャリ飛ばして行くんだけどさ。ここ女戸遊には飛び込み台にちょうどいい波止場があるから特別さ。
ザッブーン
思わず革パンのまま飛び込んでしまったし、冷えてきたから早く帰ってシャワーを浴びたい。今日のご飯はなんだろうなー。あっ、ヨーグルトケーキつくっておいたって言ってたなママ。コーヒーでも入れてピアノで遊ぼうかしら。いや、今日の夜はダチ公らとBBQだっけな。
この三回はMY HOOD宮古へのお盆帰りをテーマにお届けしました。
こうしてアーチストとして皆さんと接し、キメキメで東京で生きる高岩くん。
田舎もん、バンカラ魂忘れず、がむしゃらにやってるつもりなんだけど、なんだか一番大事なことを忘れていたよ。
故郷に帰れば俺は、
柔道部の、ラグビー部の、ピアノとかやる、ダンスとかやる、カラオケじゃ洋楽しか歌わない、丸坊主頭で太っちょジャイアンの、少年野球チームじゃ足をよく引っ張った、人が家に来れば母のエプロンの中に隠れる、鮭の頭を抱いて寝る少年、りょうくんでさ。
俺がスター気取ってハーレー跨って風切ってバリバリやっても、宮古じゃなんの意味もなくてさ。暖簾に腕押しでさ。
けど、これが最高に嬉しくて、居心地がよくて、幸せだったんだよ、
そして、
俺はまだ何者にもなれていない。
とも思わせてくれた。
「錦」飾れてねぇんだなテメェ。
よーし!
すぐに東京戻らねぇと、
羽伸ばしちゃいられねぇ。
江戸をぶっ潰す。
この国を変えてやる。
オーライ。
続きは次号でドン
P.S
次に夏帰ってくるときは、高級車で帰ってきてやるからな。ヨロシク
高岩遼のよろしくHOLIDAY
高岩遼
岩手県宮古市出身。ヒップホップチーム「SANABAGUN.」、ロックバンド「THE THROTTLE」のフロントマン。謎多き表現者集団「SWINGERZ」の座長。ソロ活動ではジャズを唄い、2018年10月にビッグバンド率いたソロデビューアルバム『10』を発売予定。“平成のスター”に相応しい圧倒的存在感、スキル、ショウマンシップで大衆を魅了する。
Twitter / Instagram / ザ・スロットル Official HP / SANABAGUN. Official HP
Photo by 横山マサト