外資系証券会社の資本市場本部長として、日々激務をこなしている藤川大策氏には、もうひとつの“顏”がある。週末には、プロのピアニスト・作曲家として、D flat(ディー・フラット)の名のもと、精力的にライブや作曲活動を精力的に行っているのだ。今回は、藤川氏ことD flat氏へのインタビューを通し、一度は金融の世界に身を投じながら、プロのピアニスト・作曲家として脚光を浴びるに至った軌跡を辿る。
その正体は、外資系証券会社で管理職を務める証券マン
藤川大策氏は、外資系証券会社で管理職を務めるエリート証券マンだ。資本市場本部のトップとして、世界のマーケットで、企業の株式や社債、各国政府や国際機関などが発行する債券の引受・販売を行っている。この2ヵ月の海外出張は4回。日々世界市場に対峙し激務をこなしているとは思えないくらいに穏やかな笑顔を浮かべる彼は、週末は、ピアニスト・作曲家として活動を行っている“Weekend Pianist”だ。これまで、D flat名義で3枚のCDを発売。テレビ番組にも音楽を提供するなど、作曲家としても活躍中だ。
D flat氏がピアノを習いはじめたのは4歳のとき。小児科医に「耳がよくないかもしれない」と言われた両親がなにか音楽を習わせようとしたのがきっかけだ。
「今は精密な機械で検査ができますが、私が子どもの頃は背後からパンと手を叩き、振り返ったら聴こえていると判断していたんです。私の場合、あまのじゃくだったらしく振り返らなかったんですよ(笑)。当時の細かい記憶はありませんが、『ピアノ習いたい?』と母に質問されたことだけは覚えています」
作曲に夢中になった少年時代を経て、早稲田大学に進学、気がつけば音楽の道を離れ銀行マンに……
Text:長谷川 あや
Photos:大石 隼土