レコードショップの聖地と称される渋谷区宇田川町の通称“シスコ坂”に店を構える老舗レコード店FACE RECORDS。
Qeticでは注目のレコード店として渋谷に店舗を構えるFACE RECORDSを始め、姉妹店として下北沢のGENERAL RECORD STORE、ブルックリンに店を置くFACE RECORDS NYC、さらに買取専門店ECOSTORE RECORDSをまとめた記事を公開。
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そこで、前回に引き続きFACE RECORDSの魅力を紹介すべく、渋谷のFACE RECORDSと下北沢のGENERAL RECORD STOREへQetic編集部が潜入しました!
GENERAL RECORD STOREでは、店長の和田拓海さんとスタッフの星野智彦さん、FACE RECORDSでは、店長の早川鈴之助さんにお店でセレクトしている商品についてや、それぞれのおすすめレコード、初心者へのアドバイスなどお訊きしました! 敷居が高いと感じている初心者の方必見のインタビューですよ!
下北沢・GENERAL RECORDS STORE
2016年3月に下北沢でオープンし今年で3年目に突入したFACE RECORDSの姉妹店GENERAL RECORD STORE。
GENERAL RECORD STOREでは、幅広い年代のROCKやMODERN JAZZの輸入盤、和モノを中心としてAVANT-GARDE、WORLD MUSICなど世界各国の貴重なオリジナル盤のLPや7インチまで幅広く取り扱っています。
インタビューでは、店長の和田拓海さんとスタッフの星野智彦さんにお話を伺いました!
Interview:店長・和田拓海さん&スタッフ・星野智彦さん
——GENERAL RECORD STOREの特徴をお伺いしてもいいですか?
和田拓海(以下、和田) FACE RECORDSは基本的にBLACK MUSICを軸として展開しているのですが、うちはROCKやMODERN JAZZ、和モノに力を入れているのが特色です。ROCKはCLASSIC ROCKから90年代のオルタナティヴまで幅広く取り揃えています。和モノは70年代から80年代の日本のロックを中心に、山下達郎や人気のシティーポップといったものからアバンギャルドな作品まで充実しており、さらに近年リリースされたものまで取り揃えています。あとは下北沢っていろんな年代の方や多趣味の方がいらっしゃるので、たまにふらっときた人が何か面白い一枚を見つけられるような、民族音楽や電子音楽など幅広く対応ができるラインナップを心がけてます。
星野 「亜モノ」っていうアジア系のレコードも取り扱っていて、世界の民族音楽等にプラスして、そういったものも放出しています。
——どれぐらいの年代の方がお店にはいらっしゃっているんですか?
和田 40代からちょっと上の人や若い人も。
星野 バンドが好きな人や、DJの人がいらっしゃったりもしますね。
和田 聴いてみないとわからないレコードをたくさん視聴して、まとめて買ってくれる人もかなりいます。
——お店がオープンをして今年で3年目ですが、オープン当初と現在を比べて、何か変化はありますか?
和田 まず、お客さんが定着してきたなっていう印象がありますね。毎週末、ジャンルを絞って「ROCKのセール」とか「JAZZのセール」等を行っているんですけど、そのセールごとに固定のお客さんがついてきたり。この前、JAZZのセールで〈BLUE NOTE〉というレーベルのオリジナル盤をまとめて一挙大放出したセールを行ったんですけど、その時は海外の方までもセールを目掛けて来日してくれて。
——海外に向けても発信をしてるんですか?
和田 Discogs(※)とか、そういったものに商品を出品していて、告知とかも英語で行っているんです。それを見て海外の方から発注があれば、海外発送も行ってます。(※レコード、CD、カセットテープなどのデータベースとマーケットプレイス)
星野 来日した際に立ち寄ってくれる方もどんどん増えてきてますね。
——セール以外にお店で工夫していることはありますか?
星野 レコードをメインに取り扱いながらも、CDやカセットだったり+αで店舗の持つ要素をどんどん強化しています。中古音楽本の放出もあります。あとは多種多様な中古機材・楽器が定期的に入ってきているので、常にそういった商品も変化しているのは面白い部分かなと思います。ターンテーブルが大量入荷し、機材棚にざーっと並べられる時もあるんですけど、今はエフェクターやシンセサイザー等のラインナップが充実しています。
——機材を扱うのは珍しいですね。
星野 機材からギター等の楽器まで扱っているレコード店は珍しいかと思います。下北沢という街にはロックが根ざしていて、ライブハウスも多いので、バンドマンの方達がライブなどで寄ってくれた際にそれらを買っていってくださったりもします。
和田 レコード店ですけど下北沢っていう土地柄、バンド活動をしている人たちに響くものがレコード以外にもあるのがうちの特徴ですね。
星野 そうですね。渋谷店とはまた違った要素(ロック)を活かしてお店づくりをしていっています。
——GENERAL RECORD STOREならではの取り組みを沢山していると思うのですが、和田さんが考えるレコードショップの在り方や、お店の軸はありますか?
和田 レコードという文化を次世代にも継承していくことを考えていて、そのためにはどういったお店づくりをすべきか意識して取り組んでます。レコード屋って入りづらいイメージがあると思うんですけど、うちはもう一人女性スタッフがいて、自分も含めてスタッフが全員20代なので、比較的若いお店だと思うんです。親しみやすく丁寧な接客で、積極的に答えるように心がけているので、お気軽にお声掛けいただければと思います。
——お店でプッシュしているレコードがあれば教えていただきたいです。
和田 CLUSTER(クラスター)っていうドイツの電子音楽のユニットで、エレクトロミュージックシーンでは初期から活躍している人たちなんですけど、難解な内容かなと思いきや割と聴きやすくて、しかも実験性に富んだレコードで。ジャケットも可愛いので、推させていただいてますね。
——ここからは初めてレコード店に訪れた方への質問です。まず、初心者の方がレコードを選ぶ時に選ぶポイントがあればお伺いをしたいです。
和田 うちの商品は基本的にプライスカードのところにコメントを書いているのですが、そういったものを参考にしていただきながら気になったものがあれば、視聴もできるので一度聴いてみてから買っていただくのが一番いいと思っています。あとは、レコードの醍醐味のひとつとしてジャケットが大きいというのもあるので、見てて気になるジャケットやデザインがあればそれを買ってみるっていうのも楽しい買い方の1つだと思います。
——初心者の人にぜひ聴いて欲しいみたいなおすすめのレコードってあったりしますか?
和田 山下達郎の『FOR YOU』っていうレコードですね。和モノの人気が年々高まってきているんですけど、依然としてこのレコードは人気の1つでして。海外のお客さんが来ればかなりの確率で「ヤマタツありますか?」って問い合わせもある一枚です。初めての人にも聴きやすくて、今の耳でもまた新しい発見のあるいいレコードだと思います。
——ストリーミングやCDでは味わえないレコードの魅力はどんな所だと思いますか?
和田 レコードはデジタルのコンテンツとは違って、一回性の強い体験だと思うんですよ。針を乗せて再生ボタンを押さないと音が出ないっていう。音を止めるにしても針をあげなきゃいけなくて。
星野 一枚ずつ手にとって、ジャケットからレコードを出してターンテーブルに乗せてっていうその工程も含めて、ストリーミングとは違った魅力があると思います。
——ジャケットも大きいですし、お部屋に飾るのもいいですよね。
和田 一枚絵としてもめちゃくちゃいいです。
星野 モノとして存在しているっていうのが一番大きいかなと思います。
——今後、お店で何か企画していることはあったりしますか?
星野 今後はインストアイベントでDJを呼んだり、バンドを呼んでライブをやったり、トークショーなどを企画したいと思っています。まだ具体的なものにはなっていないのですが、
今年中にどれかを開催したいと思っています。
和田 あとはFACE RECORDSのニューヨーク支店ができたので、今後はアメリカでの買い付けも強化し、現地でしか手に入らないものなどを取り揃えたお店のセールも実施できたらと考えています。
星野 楽器や機材もさらに増やしていけたらと考えていますし、オーディオ機器も取り扱うなどレコード以外の要素にも力を入れていきたいと思っていますね。
和田 ハイエンドオーディオっていう、ちょっと高級なオーディオなんですけど、修繕や修理ができる専門知識を持ったプロのスタッフがいるので、そういったものも展開できればと思ってます。
渋谷・FACE RECORDS
1996年に渋谷区に開店(その後、現在のシスコ坂に移転)した中古盤中心のレコード店、FACE RECORDS。
国内外から買い付けた良質なSOUL、FUNKやJAZZに代表されるBLACK MUSICのレコードを中心にREGGAEやBRAZILIAN MUSICのラテン音楽から、HIP HOP、HOUSEといったCLUB MUSICまで取り扱っている。そして、日本の文化を海外に向けアピールできる和モノや7インチ(国内盤多数)の品揃えも充実しており、レコードファンを魅了し続けている。
さらに現在、FACE RECORDS創業25周年を記念しコラボレーションが実現したピーナッツ(スヌーピー)とのオリジナルコラボグッズも展開している。
Interview:店長・早川鈴之助さん
——まず店舗の特徴などをお伺いできればと思っています。
SOUL、FUNK、JAZZ、そしてRARE GROOVEに焦点を当てたBLACK MUSICの専門店として長くお店を続ける中で海外のお客様にも数多くご来店いただいています。そうした海外のお客様に日本産の音楽“和モノ”を聴いてもらったところ、反応がすごくよくて。最近ではそういった和モノ・和ジャズにも力を入れてます。
——FACE RECORDSは25年の歴史がありますが、長く続けられている理由はどんなところだと思いますか?
以前から来られていた海外のお客様との関係を構築していったことが、かなり大きいかなと思っています。国内だけに絞って販売をするというのではなく、海外のお客様が喜んでもらえるものを提供できるということがFACE RECORDSの強みですね。
——海外だと、どこの国の方がいらっしゃることが多いのでしょうか?
当初はアメリカのお客様が多かったのですが、そのレコード愛好家の間で話題になったのか、だんだんヨーロッパの方にも注目していただけるようになって、最近ではヨーロッパの方とアメリカの方が半々くらいでいらっしゃってます。アジアに関しては、中国や韓国の方が特に熱狂的というか、ここからここまで欲しいみたいな感じでまとめて買われていく方が多いですね。
——近年、ストリーミングが主流になったりなど、音楽の聴き方がすごく変わったと思うのですが、早川さんはレコードのどんなところが魅力だと思いますか?
当店が扱ってる商品は中古盤が中心になるんですけど、同じものが一個もないっていうのが魅力だと思いますね。ジャケットの状態だったりとか、盤の状態だったりとか、当然傷が入ったものがあったりするんですけど、一点しかないものに巡り合ったという感覚が、やっぱりストリーミングにはない魅力だと思います。アーティストの方がリリースしたばかりの新譜や、新品の商品も販売してるんですけど、そういったものも所有してから自分が聴いて、また味が出てくるというか。当然傷ついちゃうときもありますし、埃がちょっとかぶったりして、それだけでも音が変わったりするので、そういう楽しさを感じられるのも魅力ですね。
——確かに同じものがないのは魅力ですね。
あとはトレードとかですね。友達との間で「これ欲しかったんだよね」ってなった時にお互いのレコードを交換したり。それを考えた上で、「あいつ多分これ欲しいから、買っとこう」と思ったときに2枚目、3枚目を買っておいて、「これいいからちょっと聴いてみなよ」ってプレゼントしたりすることで、コミュニケーションになるというか。ストリーミングはひとりのなかで完結しがちなので、レコードはコミュニケーションツールになると感じてます。
——同じ仲間が増えるのは楽しいですね。
そうですね。結構そういうので知り合った方も多いです。
——今お店でプッシュしているレコードがあれば教えてもらいたいです。
中古盤が多く一点ものが多いので、アーティスト単位になってしまうんですが、マーヴィン・ゲイ(Marvin Gaye)とスティービー・ワンダー(Stevie Wonder)。本当に偉大なアーティストですが、こういったアーティストは時代によって雰囲気も変わるので、違いを楽しんでもらいたいと思います。
——ここからはレコードを買ったことがない人へFACE RECORDSさんがどんな工夫をしているか、またレコードを選ぶ時のポイントなどをお伺いできればと思います。まずレコードへ興味を持ってもらうために何か行っていることはありますか?
自分の好きなアーティストを調べたときにFACE RECORDSへ繋がってくれて、そこで興味を持ってもらいたいと考えているので、SNSの発信を行っています。またインストアイベントにも力を入れていますね。イベントへ来ていただいて、お店の雰囲気を感じてもらうことを重点的にやっていきたいと思ってます。
——これからレコードを聴く人に向けて、レコードを選ぶときのポイントをお伺いしたいです。
レコードにはシングル盤とLP盤と言われるものがあり、レコード文化にはDJ文化が密接に関係してるんですけど、DJ文化に興味を持って、その延長線上でレコードに興味を持った方は、シングル盤を買った方が面白いと思います。LP盤のアルバムに入っていないバージョンが入っているのがシングル盤の醍醐味ですね。LP盤はどちらかというと家でゆっくりしている時とか、このアーティストをもっと知りたいとか、そういう形で聴いてもらうのがいいと思います。まず自分がどういう形でレコードと接していきたいかが選ぶポイントですね。
——初めてレコードを聴く方に聴いてほしいというレコードとかありますか?
大貫妙子さんの『サンシャワー』。これはLP盤でアルバムなんですが、先ほど紹介をしたマーヴィン・ゲイの曲で“ホワッツ・ゴーイン・オン”っていう有名な曲があるんですけど、それにインスピレーションを受けたようなアルバムです。当店が昔からプッシュしているというか、BLACK MUSICを聞いている人も、聴きやすいレコードとしてプッシュしています。海外の方に聞いてもらってもすごく反応が良くて。これからレコードを買う人は、間違いない1枚というか、まずこれを聞いて欲しいですね。
——最後の質問になりますが、お店で何か企画していることがあれば教えてください。
FACE RECORDSの創業25周年記念でピーナッツ(スヌーピー)とコラボしてTシャツとキャップの販売をしているんですけど、そのグッズのモデルをしていただいた水原佑果さんにDJをしてもらうインストアイベントを8月18日(土)に開催します。
——楽しそうですね。そこでどういったコミュニケーションがうまれてほしいなど、イベントを通して伝えたいことはありますか?
やはりレコード屋にあまり来たことがないっていう人にも来ていただいて、レコード屋の雰囲気を感じてもらえたらなと思ってます。どうしてもレコード屋って閉塞的に感じられてしまうことがあったり、知識がないと入りづらいとか、そういう雰囲気とかがあると思うんです。実際そういうところはないんですけど、そういう風に思われてしまうことがあるので、水原さんのように音楽が大好きな方にDJをしていただいて「レコードでも気軽に音楽を楽しめる」っていう感覚が伝わればいいなと思います。是非遊びに来てもらえたら嬉しいです。
FACE RECORDSとGENERAL RECORD STOREでは敷居が高いと感じている初心者の方でも安心して楽しく訪れられますよ! ぜひ、皆さんもお気に入りの一枚を探しにレコードショップに行ってみてはいかがでしょうか?
EVENT INFORMATION
CRATE DIGGERS×FACE RECORDS IN STORE DJ EVENT
2018.08.18(土)
START 15:00
FACE RECORDS
入場無料(トートバッグ・ステッカーなどDISCOGSのグッズの無料配布、フリードリンクとして「COCALERO」の提供有)
【DJ】
MIZUHARA YUKA
MARIA FUJIOKA
ATSUKO SATORI
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