〈Ninja Tune〉の代表的なアーティストであるBonobo。バンドセットで<FUJI ROCK FESTIVAL>に出演、単独公演はもちろんソールドと人気を博している彼がDJのショーケースを4月5日、LIQUIDROOMにて開催した。

主にバンドリスナーが多いイメージのあるBonoboだが、彼はDJとしても著名で、Boiler Room出演動画の再生回数は7桁を越している。クラブミュージックとバンドミュージックの音楽間にある壁に梯子をかけている人物でもある。今年2月には〈Fabric〉で新たにスタートさせたミックスシリーズ『fabric presents』の一発目として登場し、話題となったばかりだ。

開催されたパーティーは23時30分からオープンして、1時には既に満員。1Fのフロアには音楽のジャンルを繋ぐシームレスな感覚を共有するBonoboとD.A.N.のDaigo Sakuragiが登場。

そして2FにはPALM BABYSとDJ Nozaki、yahyelのMiru Shinodaが出演。DJブースの横にある、Bonoboのロゴが模様された青色のネオンが照らし出すソファーは踊り疲れた人たちへのチルゾーンになっていたが、一方でメインフロアとは異なった音を楽しむスペースに。

ここでは、あの一夜に何が起こっていたのかを振り返る。

EVENT REPORT:Bonobo

開場前にはエントランスに溢れる人ほどの人が集まっており、そこだけ見ても幅広い人がこのパーティーに注目していた。TOXGOやSUPPLY TOKYOを代表するストリートファッション、ハイブランド、バンドT、シンプルなファッションのクラバー。金曜日の夜、終電前で、ひたすら踊ったり誰かと話したり、何かを解放したくて仕方がないような波長が、既に共振していた。

オープンとなり、2Fに上がるとBonoboのネオンロゴが展示されており、そこで記念写真を撮ったりと、観光的要素で盛り上がる。多くのパーティーでは、海外アーティストが来日してゲストアクトとして登場することは当たり前のようになっている(特にダンスミュージックのイベント)が、それに慣れすぎているのかそこに特別感が欠けている時がある。が、この日は、どこか違ったのだ。

2FのLOFTで最初にプレイしていたのは二人組のPALM BABYS。音楽はもちろんのこと、2人が回してるところだけを見ても愉しい。軽快で品を保ちながら、オーディエンスと共に体を揺らすことを重点に置いていたDJでは、彼女たちから時折溢れる笑みが多くを語り、多くの人の心を躍らせたに違いない。

1Fのメインフロアでは、Daigo Sakuragiがタイトな音を鳴らす。フロアの照明やレーザーが照らし出す水色や青のライト(Bonoboのイメージは、作品のジャケットなどから水色や青が思い浮かべられる)は、水族館やプラネタリウムといったシチュエーションを彷彿とさせた。さらに、Daigo SakuragiがかけるUKの深いテックミュージックはその印象をより深めていった。ライトの色は徐々にアグレッシブな紫や赤に変化し、音楽は暴力性を増してジャングルやブレイクビーツに、時代性を表現するように光と音のストーリーが重なり合っていく。 最後は自然的なサウンドからエクスペリメンタルな余韻を持たせながらバトンをつなぐことになったが、彼が今後どのようなストーリーを紡いでいくのかと、胸に応えるようなDJだった。そして次に登場するのはお待ちかねのBonoboだ。

と、その前に、このイベントのトピックはBonoboだけではなかった。2Fに出演していた国内のアーティストにも全く目が離せなかった。2Fで二番手として登場したのは〈10 INCHES OF PLEASURE〉を主宰するDJ Nozaki。バイナルをメインに、時にエキセントリックに、オールドスクールをフレッシュに響かせるプレイの引き出しの多さには驚くばかりだ。また彼が飄々とレコードを選び回すその姿も、音から溢れる西洋感が強い情緒を強めていた。

同階のラストDJとして登場したMiru Shinodaは、〈L.I.E.S.〉などに代表される固く骨骨しいアンダーグラウンドの音を基調に、徹頭徹尾、GUCCIMAZEがデザインしたBoiler RoomのTシャツなどファッションからなにまでそのスタイルを貫く(ちなみに、DJ Nozakiはzzz名義で〈L.I.E.S.〉からリリースしている)。イベントを食ってかかるその姿勢に、踊り疲れたオーディエンスの目も釘付け。完全にダークホースとして暴れいた。より暗く深い場所で体感してみたいと思わせるようなプレイだった。

【イベントレポート】Bonobo| 神秘的で官能的なDJセットが彩る春の一夜 music0408-bonobo-djset-report-1-1920x1280
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バンドサウンド・DJで多くのファンを獲得、音楽性が一貫して支持されるBonobo。インタビューでは、自身のサウンドについて「僕にとって音楽は、風景というよりも、キャラクターなんだ。音楽を作っている時、僕はその音楽制作をしている環境から逃れることはできない。だから自分の置かれている環境がそのまま風景になる。だけど、音楽には性格やキャラクターというものがあると思っている。」と語っているが、その「キャラクター」は一聴するだけで彼の音だと分かるものになっている。

DJがスタートし、Bonoboを象徴する温度感のシンセが響くとフロアから歓声が上がる。民族的なコーラスが特徴的な“Bambro Koyo Ganda”がドロップされると、ダンスフロアは一気にヒートアップ。彼の壮大な世界観にどんどん引き込まれていった。

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Bonoboは民族音楽でもタンサンブルな要素と、神秘的でナチュラルな音のバランスが素晴らしく、音楽で踊ることから程よい距離感の中でより原理的な神秘を見つめさせられる(もしくは彼が言う「環境」なのかもしれない)。会場のレーザーはとある景色を描き、個人個人が各々の解釈を加えていく。オーディエンスの多くが手に持つiPhoneがその風景を捉えていた。そして、フロアはつねに満員だ。美しい旋律とメロディだけでなく、期待をピッチアップさせるパーカッション、そしてオーセンティックなベースが間髪いれず繰り返され、飽きる暇なくその3時間強は過ぎていく。

官能的でストイックな一面もあり、代表曲の一つである“Cirrus”やKH(Four Tet)の“QUESTION”などのキラーチューンでフロアに伸縮性を与える。隙間がないほどのフロアはどこか開放的で、桜は散り始めてしまったけど、訪れ始めたばかりの春の一夜を印象付けるには至上のものだった。

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Photo by Yosuke Torii
Text by Koichiro Funatsu

fabric presents Bonobo

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01. Bonobo – Flicker
02. Bonobo – Boston Common
03. Poté – Jacquot(Waters Of Praslin)
04. Alex Kassian – Hidden Tropics
05. Âme – Nia
06. Durante – Maia
07. Dark Sky & Afriquoi – Cold Harbour
08. Bonobo – Ibrik
09. Olsen – Femenine
10. O’Flynn – TKOTN
11. TSHA – Sacred
12. Will Saul – By Your Side
13. Titeknots – Buzzard Walk
14. Dan Kye – Focus
15. Barakas – Roach
16. R. Lyle – Perpetrator
17. Rone – Mirapolis(Laurent Garnier Remix)
18. Throwing Snow – Rheged
19. Nepa Allstar – The Way
20. DJ Seinfeld – Stargard
21. Earth Trax & Newborn JR – If You(Club Mix)feat. Annjet
22. John Beltran – Collage Of Dreams

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