始まる前にお腹いっぱいになってしまった映画はいつ以来だろう。前情報を遮断しようとしても、「ちょっとだけ……」、そう自分を甘やかして膨らんでいった想像と期待。本作の監督を務めるアンソニー&ジョー・ルッソ兄弟は『アベンジャーズ/エンドゲーム』についてこう告げた、「『インフィニティ・ウォー』とは違う語られ方をする、トーン的にも異なる、全く別の映画」だと。そうじゃなきゃ困る。『インフィニティ・ウォー』のような絶望感はもう懲り懲りだ。ただ、そんな不安は杞憂に終わる。上映時間、3時間1分。観客はアベンジャーズの希望、そしてMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)の未来を目の当たりにするのだ。

想像を上回る形で詰め込まれた登場人物・展開・伏線回収

最速レビューということだが、客観的な事実なんて書けるわけもなく、少しでも映画のネタバレがこの記事にあったら炎上必至。それでもペンを取るなら、ここで書くべきは提示された事実ではなく、『エンドゲーム』という歴史に残るであろう超大作において、アベンジャーズの宇宙の命運と仲間の命を懸けた壮大な戦いを見届けた、いちマーベルファンとしての想いだけだ。


まず冒頭でも触れたが、前情報などから物語の展開を予想することに明け暮れている人がいるならば、もうそれはやめておいた方がいい。きっとそれはことごとく裏切られるだろう(ルッソ兄弟あっぱれ)。早々に僕の予想はソーのハンマーのごとき威力で叩き壊され、それはまさに「まっさらな気持ちで純粋に作品を楽しめよ」と、ルッソ兄弟に言われているようだった。


そしてさらにルッソ兄弟は、予想をはるかに上回る形で、ファンの願望をこれでもかと詰め込んでくる。登場人物、展開、そして伏線回収と、あらゆる場面で時にさらりと、時にベッタベタな形で。でもそれがベッタベタな形だとしても、きっと嫌悪感なんて抱かないだろう。なぜならそれはみなが心の奥底で待ちわびていた願望であり、本作はマーベルファンなら「待ってました!」と言わんばかりの、奇跡のようなシーンが次々とスクリーンに現れる。


結末を左右するそれぞれの信念。そしてヒーローの定義

話をストーリーに移そう。『インフィニティ・ウォー』のあと、サノスのしたことは善悪では計れず、置かれている立場によって変化するーーそう自分に言い聞かせていたが、この作品においてまず打ちひしがれるヒーローたちの姿を見ると、「やっぱ悪だよ悪!」と言いたくなった。

全宇宙の生命の半分、35億通りの死に身を引き裂かれる想いを感じている人たちがいて、その悲しみに耐えた上で、アベンジャーズは立ち上がった。だからこそ一致団結する姿には無条件に鳥肌が立ち、物語が進むほど、心の中のエールは増していく。そして最終的に『エンドゲーム』では “大義”への信念の強さ、その信念がブレるか、ブレないかが結末に大きく関わってくる。

さらに、本作がこれまでのアベンジャーズの戦いと決定的に違うのは、避けようと思えば避けられる戦いだということ。突如、チタウリ軍やロキやウルトロンやサノスに地球を侵略されたわけではない。絶対にして唯一のルール。サノスに逆らわなければ、戦いは起こらないのだ。


それでもアベンジャーズは仲間のため戦うことを決意する。自己犠牲を賛美するわけではないが、勝利・敗北を度外視し、自分が守りたいもののために彼らは命をかける。いつの時代もヒーローは冷静ではやってられない。ヒーローにはリスクを承知で挑む無謀さと、盲目的なパッションが必要だ。それをアベンジャーズのヒーローたち一人一人が、本作で改めて教えてくれるだろう。

マーベル史上最大級のバトルを経て、一つの時代が終焉


『エンドゲーム』は『インフィニティ・ウォー』のように、ある意味わかりやすいバトルを本筋としたストーリーではない。登場人物の喜怒哀楽をできる限り丁寧に、ただそれよりもできる限り“取りこぼす”ことのないように、多くのバリエーションで描いている。

MCUの壮大なストーリーにおける一つの終焉、そして現アベンジャーズたちの“卒業式”への布石は次々と打たれ、フィナーレで迎える宇宙の命運を賭けたマーベル史上最大級、大集結のバトル。その時点で観客は、無心でアベンジャーズを応援するだけだろう。

この作品は果たしてハッピーエンドだったのか。それは観客一人一人が判断すればいい。ただ一つ言えるとしたら、何の犠牲もなく迎えるハッピーエンドなど存在しないということだ。

2008年に公開された『アイアンマン』から足掛け11年。フェーズ1から3まで(フェーズ3はまだ『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』が残っているが)、魅力的なヒーローたちのストーリーの数々を堪能してきた。観終わった段階ではまだ、フェーズ4以降の未来のヒーローたちに思いを馳せる余裕はない。今はただただ言いたい、アベンジャーズありがとう!

text by ラスカル(NaNo.works)

アベンジャーズ/エンドゲーム

4月26日(金)全国公開

監督:アンソニー&ジョー・ルッソ
制作:ケヴィン・ファイギ
出演:ロバート・ダウニー Jr./クリス・ヘムズワース/マーク・ラファロ/クリス・エヴァンス/スカーレット・ヨハンソン/ジェレミー・レナー/ポール・ラッド/ブリー・ラーソン
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