シーズン、ロケーション、ラインナップ、ゲスト、サウンドシステム。五拍子以上が揃うパーフェクトな条件が国内外のダンスミュージックファンを魅了して止まない電子音楽フェスティバル、<Rainbow Disco Club(以下RDC)>が、今年もGWの前半4月27日(土)〜29日(月・祝)の3日間、東伊豆クロスカントリーコースにて開催された。10周年を迎えるRDC2019のメモリアルな体験レポートをお届けする。
<Rainbow Disco Club 2019>
新緑が眩しく暖かな風が吹くこの季節に、都心からアクセスの良いパワースポット、東伊豆にて行われるRDC。回を重ねるごとに国内のみならず、その絶賛は海を渡ってパーティーフリークの間に広がり、10周年を迎える今年(2019)の開催では、会場を埋める顔ぶれの半数以上が欧米人客。まるで海外のフェスを訪れているような錯覚を味わう。
日本に今や多くの大規模ミュージック・フェスはあれど、これだけセンスの良い電子音楽アーティスト、DJをブッキングしているオーガナイザーは他にいない(電子音楽=EDMと一般的には捉われがちだが、RDCはIDMとカテゴライズした方がしっくりくるかもしれない)。
というわけで、テクノ&ハウスから派生するあらゆるジャンルの電子音楽ファンである私は毎年RDCの開催を待ちわびているのだけれど、昨年から小さな子ども同伴で参加しているということは前置きしておきたい。しかし都内含め数多くの子連れOKであるクラブイベントや野外フェスに参加してきたが、RDCほどファミリー・フレンドリーな野外フェスもまた他にはあるまい。さらに今年は母子のみでキャンプ泊というややチャレンジングな計画ではあったが、快適で楽しく、親子共々最高にハッピーな3日間を過ごせたといことも、このレポートでおわかりいただけるはず。
ドロンコからの、奇跡のレインボー!ディスコ
初日は小雨予報がちらついており、踊り子号で伊東を過ぎたあたりから雨が降り始めた。会場最寄りの伊豆稲取駅周辺ではかろうじて堪えていたものの、会場のエントランスで本降りになり、気温が低いことも便乗して長蛇の列をなしている荷物チェックに並んでいたときは、子どもも大人もテンションガタ落ち。ガタイの良すぎるお兄さんによる入念な手荷物検査をクリアし、泥沼と化したエントランスをなんとか通り抜けると、奇跡的に青空が。フロアを見下ろすとヘッドライナーのひとり、MATHEW HARBERTがプレイを始めたところだ。客の熱気と音が混じり合って空に立ち昇り、その空気を吸ってようやく「RDCに帰ってきた!!」と心踊る瞬間である。(しかもこの後本物の虹が会場の空を跨いでいた!)
暗くなる前にとテントを張っているうちに、また雨がポツポツ。肌寒いのでしっかり防寒して子どもに合羽を着せ(イアーマフも装着)、駆け足でメインフロアへ!!
初日からかっ飛ばしてる(さすが拾周年!)タイムテーブルで、HARBERTとバトンタッチしたのは正真正銘のヘッドライナーDJ HARVEY! 誰もがオートマチックに体を揺らす神がかったセクシーなプレイで、大人も子どもも犬も踊る踊る!
雨を吹き飛ばすハッピーでエッジィなエナジーがフロアに充満し、4.5時間というロングセットであったが、休憩するタイミングを見つけるのが難しかった。
隙のないタイムテーブルで踊るのを止められず
早朝にかけて気温が5℃まで下がるという異例の寒さに凍えながらなんとか夜を明かし、2日目は晴天の朝を迎えた。気温はそこまで上がらないものの、お日様が照らす初夏のクロスカントリーコースは、一面に敷かれた鮮やかなグリーンの芝生が瑞々しく、踊り疲れてゲッソリした人たちの顔でさえキラキラと輝いて見える。
そんな景色にうっとりと過ごしているうち、9時にはYoshinori Hayashiによるプレイがスタート。朝のぼんやりした頭を揺さぶり過ぎないゆるいアンビエントとワールドミュージックが交互にやってきて心身を優しく癒してくれる。
香ばしい匂いにつられてパン屋(手作り!)に並び、コーヒーを買って丸太のイスに子どもと並んで朝食をとる。昨夜し損ねた歯磨きをして、今度はレモネードを買い、ハンモックに揺られていると、ステージにはレジェンド、Kenji Takimiの姿が。AMという時間に寄り添う絶妙な選曲でスタートし、日の高くなる正午に向かって極めてナチュラルにフロアを盛り上げていく。
その後12時から2時間刻みでJAYDA G、PALM TRAX、BEN UFO、この日の(RDC Stageの)トリDJ NOBU B28 WATA IGARASHIと続く。一度会場から抜け出して温泉に行きたかったのだが、抜けるタイミングが探せないこの隙のないタイムテーブル!
結局RDC Stage紅一点の出演者で最高にファンキーなJAYDA Gから、初日のラストステージを彩ったDJ DJ HARVEYに応戦するDJ NOBU B28 WATA IGARASHIのスモーキーなプレイまで、全てのアーティストがそれぞれのキャラクターを引き出し、フロアと融合させた最高のパフォーマンスを見せ、会場を後にすることができず。
拾周年で積もり、アップデイトされる思い出たち
RDCの快適さを語るポイントの一つが、RDC Stageを中心とした会場の設備がコンパクトにまとめられており、トイレや丘の上にあるフードエリア、キッズエリアやテントサイトまで、音が程よい音量で届くところである。
なのでフロアに立ち、抜群のサウンドシステムに包まれながら、トップDJたちのサウンドに酔いしれ、思うがままに体を動かすのもよし。フロアから離れ、トイレに並んだりご飯を食べたり、ハンモックに揺られたり仲間とおしゃべりしながら、耳に心地良く滑り込んでくる音に合わせて踊ることもできるのだ。
今年も久しぶりな人との再会あり、はじめましてな人とつながり、一期一会な人との出会いがあり、たくさんのレインボーな人たちと交流できたおかげで最高の3日間となった!子どもも、ハッピーなオーラを出し続ける大人たちに囲まれ、交代で抱っこされ、遊んでもらっている中で、色とりどりの世界を感じ取ってくれたに違いない。
最終日も減速しらずのラインナップ(さすが拾周年!)で19時までフロアは熱狂に包まれていたものの、良い子の時間で私たち親子は16時には退散。色々とお世話になったみんなに「さよらなら」を言い顔が見えなくなると、娘は目に涙をにじませていた。
Text&Edit:Nao Asakura
Photo:Takatomo Ishii