＊この記事には『ゲーム・オブ・スローンズ』最終シーズンのネタバレが含まれています＊

ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』（以下、GoT）が遂に、遂に終わってしまった……。今、8年間も追ってきたシリーズが終わりを迎えてしまったことで、安堵の気持ちと喪失感が入り混じっている。

振り返るとこの1年間、ずっと『GoT』のことばかり考えていた。ネタバレ厳禁につき、パパラッチ対策にフェイクシーンの撮影まで行われていた最終章。結末を予想するため、制作/キャスト陣のコメントが発表される度にあれこれと思いを巡らせていた。『GoT』の世界にまだ足を踏み入れていない人たちのために補足しておくと、同作はジョージ・R・R・マーティンによる小説『氷と炎の歌』シリーズを原作としているが、途中からドラマが小説を追い抜いてしまったため、先に結末を読むことができなかったのだ。

キャストたちはメディアに露出する際、慎重に言葉を選びながらインタビューに対応し、結末についての質問の答えをうまくはぐらかしていた。とはいえ、親しい関係の人たちには結末を話していたというキャストも多く、その反応を伺い知ることはできた。キット・ハリントン（ジョン・スノウ役）は妻ローズ・レスリー（イングリッド役）に結末を話して3日間口を聞いてもらえなかったらしく、同じくソフィー・ターナー（サンサ・スターク役）も夫ジョー・ジョナスにネタバレして彼のことを怒らせたと明かしている。エミリア・クラーク（デナーリス・ターガリエン役）も母に話したそうだが、母はその内容を忘れてしまったのだとか。キャストたちが語る「◯◯がドラマの結末を知ったときの反応」エピソードが最終章の期待値をより上げていったのは言うまでもない。

キャストの私生活における動向も逐一話題になっていた。ソフィーがスターク家の象徴であるダイアウルフの紋章に「The pack survives.（この群れは生き残る）」という文章を添えたタトゥーを入れると、ファンたちは「サンサが生き残り、鉄の玉座を勝ち取るのではないか」と大騒ぎ。彼女は後にテレビ番組を通じてネタバレはしていないと説明していた。メイジー・ウィリアムズ（アリア・スターク役）も自身の撮了後にインスタグラムの投稿に「#lastwhomanstandhing（#最後に生き残った女性）」と綴り、アリアが鉄の玉座に君臨する結末を示唆しているのではないかとファンたちをパニックに陥れた。「知りたいけど知りたくない」 「終わりだけど終わってほしくない」。その相反する感情により、ネタバレ疑惑のある情報には一喜一憂したものだ。

また、昨年6月には劇中で恋人を演じ、現実の世界でも恋愛関係へと発展したキットとローズが結婚式を挙げた。ソフィー、メイジー、リチャード・マッデン（ロブ・スターク役）などジョン属するスターク家の面々はじめ、エミリア、ピーター・ディンクレイジ（ティリオン・ラニスター役）、ジョン・ブラッドリー=ウエスト（サムウェル・ターリー役）ら多くのキャストたちが参列し、ドラマを飛び出して『GoT』ファミリーが集結したことで世間を沸かせた。


最終章を盛りあげるべく、さまざまなコラボレーションも行われた。スコッチ・ウイスキーのブランド「ジョニー・ウォーカー」は夜の王にちなんだ限定ラベルを発売。米Entertainment Weekly誌は16種もの『GoT』仕様の表紙で最終章特集号を発刊。「Urban Decay」は『GoT』の世界に属する強い女性たちにインスプレーションを得たというコスメコレクションを発表。オレオは、コラボオレオの発売にあわせ、オレオで再現したオープニング映像までも発表していた。ザ・ウィークエンド×シザ×トラヴィス・スコット、エイサップ・ロッキー、エリー・ゴールディング、マムフォード＆サンズ、ザ・ナショナルら豪華アーティストたちがそろい踏みしたサウンドトラック『For the Throne』も話題に。

そして全世界が待ち望んでいた最終章は、毎週公開されるたびにツイッターのトレンドを独占するほど大反響だった。今シーズンの目玉は、夜の王率いる死人軍団と人間の戦い、そして七王国を制する玉座を巡る戦いだ。前半の夜の王との戦いにおいては、玉座を守るサーセイ・ラニスター軍除く主要人物たちが北部に集結。離れ離れになっていたキャラクターたちが再会し、今まで絡みのなかったキャラクターたちの交流が生まれ、敵対していたキャラクター同士で協力し合うなど、ファンサービス満載の胸熱な展開だった。トアマンドが過去に巨人の女性と関係を持ったと語るシーンや、サーセイがユーロン・グレイジョイの下半身にがっかりするシーンなど、緊張感がほぐれるようなコミカルな下ネタが散りばめられていたのも印象的だった。

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対する後半はかなりシリアスな展開に。愛する者を続々と失い部下の裏切りにも遭ったデナーリスが、王都で大虐殺を繰り広げたのだ。彼女はもともと虐げられている人たちを自由にするため、つまり弱者のために戦いを続けてきた。それを顧みて「今回の彼女の決断は極端すぎる」という声もある。自身の子どもの名前にデナーリスのことを指す「カリーシ（女王さま）」と名付けて後悔した、なんて人も出てきた。だが、デナーリスは今まで権力者や反逆者に対しては冷酷極まりなかった。だから私はこの流れに納得している。最終話も良かったと思う。この作品の主人公はやはりスターク家だった、という終わり方は同家ファンには嬉しい。また、あまりにも多くのキャラクターが死んだものだから、生き残った面々が膝を突き合わせて王国を立て直そうと前向きに会議を行っているシーンも胸を打つものがあった。愛すべきキャラクターたちが殺されなかったという喜び、そしてもともと異なる立場だった彼らが協力しあうことで、新たな王国への希望を感じられることができたからだ。


もちろん不満がないわけではない。女祭司メリサンドルはアリアが「青色の瞳、茶色の瞳、緑色の瞳を殺すだろう」と予言をしていたが、その伏線が回収されていないままだ。グレイ・ワームの不満げな顔は少し意味深だった。それに、今シーズンは全編通して『GoT』らしさである残酷すぎる展開があまりなかった。（でもあったらあったで非難轟々だろうが）世界観にそぐわない紙コップを置き忘れたまま放送してしまったり、ジェイミー・ラニスターの義手が普通の手のままになっているスチール写真が公開されてしまったりと雑な部分も目立ってしまった。

現在、最終章の撮り直しが求められ署名運動が起こっている。これだけの大作をうまくまとめたデイヴィッド・ベニオフ＆D・B・ワイスは素晴らしいと思う。だが、ジョージ・R・R・マーティンの原作を基にした最終章も観てみたいというのも本音だ。撮り直しではなく、あくまで別バージョンとして作って欲しい。さらに欲を言えば、『バタフライ・エフェクト』や『28日後…』のように複数のエンディングがあったら最高だ。つまり、これで終わりではないと思いたい。できることなら、永遠に終わりを迎えてほしくないぐらいだ。つまりは、終わりを受け入れるには、まだまだ時間が必要なのである。

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