Gateballers
GODや小山田壮平バンドのギタリストとして知られる濱野夏椰がボーカル・ギターを務め、カネコアヤノバンドでもベースを担当する本村拓磨が在籍するサイケデリックロックバンドだ。

かねてから名うてのプレイヤーとして音楽界隈で知られていた彼らが9月に出した『Infinity mirror』が、素晴らしい。何が素晴らしいかって、これまでのサイケデリックな実験精神を踏まえて、キャッチーなメロディーラインに研ぎ澄まされた言葉達が並ぶことだ。活動歴の長い彼らが、何故ここにきてシンプルでキラキラとした音像を獲得したのか。

昨年リリースした2枚の作品を経て、より自由に開放されて制作されたという今作について、インドへの旅を経て制作されたというアルバム作りの背景や感じたことについてお話を聞いた。

自分自身のまま在り続ける。Gateballersが音の旅で表現する生きる神秘について interview191004-gateballers-6

Interview:Gateballers

実験精神あふれる前作を経たからできたこと

──今作の『Infinity mirror』の話をする前に、去年の話をさせてください。昨年2月にフルアルバム『「The all」=「Poem」』をリリース、12月に“Moon river”も含まれるEP『Thank you Part-time Punks』をリリースされました。今一度過去2作を振り返って、いかがでしたか?

濱野 夏椰(Gt.&Vo. 以下、濱野) 『「The all」=「Poem」』では、詞を読んで、その詞に適した音像でレコーディング作業をしました。簡単に言うと音楽的にやりたいことをやれたんです。そこから、さらに踏み込もうと思ったのが、前作のEPです。そしたらめちゃくちゃになった(笑)。

Gateballers – 「The all」=「Poem」

──めちゃくちゃって(笑)。実験的でサイケデリックな要素の強いEPでしたよね。

本村 拓磨(Ba. 以下、本村) 当初は、3曲入りのシングルをまとめた作品にしようと言っていたんです。3曲デモがある状態でレコーディングに入ったら、「どんどん録ろう!」って(濱野)夏椰くんの発言の元にセッションを重ねました。曲と曲の合間に作ったセッションを素材として構築して、それがインストゥルメンタルの楽曲を含む7曲入りの作品になったんです。

──バンドとしての基礎体力がいりそうですね。

本村 そうですね。やってみたら「できる!」ということに気づいた感じです。決めごとをしないでその場で作業したことや、メンバーが担当楽器以外のものを使ってどんどん録音を重ねていくみたいなプロセスは、今作にすごい影響を与えたんだろうなと思いますね。

──突発的な要素が強かったと。プレイヤビリティが磨かれて制作のスタイルが自由になったんですね。

濱野 『Thank you part-time punks』でも、歌詞に合う音を突き詰めたんで、それに関してはみんなすぐにできるようになりました。それから、楽曲の持つ特徴を理解して、一瞬でこの曲が生まれた奇跡に見合った音像にできるようにもなったんです。……できたよね? 意外とすんなりと。

一同 (うなずく)

──それを経て今作は基本的には聴きやすい作風になっていますね。

濱野 「シンプルにしよう」って言って、今作の『infinity mirror』ができました。楽器の垣根がなくなったというか。ベーシストなのに本村は『infinity mirror』でエレキベースを3曲しか弾いてなくて。そのかわりに俺がベースを弾いたり、大正琴を弾いたりとか。

本村 そうですね。これまでとは最終地点や目標地点が変わったかもしれません。今までは曲に対して自分がベースで参加するという前提があったんですけど、今回は作品をどう作るかに意識が向いていました。いい作品を作るのであれば「この人がベースを弾いた方がいい」、「この人がドラムをやった方がいい」っていう意識が分かれてきたんです。でも、ライブはライブでみんな各々の役割があるので、「録音」と「ライブ」という意識が完全にくっきり分かれたなと思います。そしたら、ライブはライブでより楽しくなったし、録音は録音でより楽しくなったし、なんかずっと楽しいですね(笑)。

──最高ってことじゃないですか(笑)。久富さんはどうですか? 手数を抑えた楽曲が多い印象でしたが。

久富 奈良(Dr. 以下、久富)  僕はドラマーの心理として、例えば歌モノで派手に叩くのは邪魔になっていないかとか考えちゃうんですよ。その最適解を探し続けていて。今回も現状でできる範囲の最適解でやりました。

本村 (濱野)夏椰君の地元の伊豆でレコーディングもプリプロもやったんですけど、事前にあったアイデアもレコーディング本番になったら「なんか全部違くない?」みたいな感じになったりして(笑)。「こういう音を入れるぞ」という、決め打ちっていうよりは、本番での判断も多かったですね。

──新作を披露してからライブのお客さんの反応はどうですか?

濱野 みんな笑ってますね、前より(笑)。

──前はポカーンってしてる人もいましたか(笑)?

本村 ほとんどポカーンとしてました(笑)。笑顔が増えました(笑)。

──それは何よりです(笑)。

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初の海外旅を経て生まれた楽曲群

──制作の大半はみなさんがインドに旅をしてからできた楽曲群なんですよね。

濱野 そうですね。インドに旅する前に確か2曲ありました。“スーフィー”は昨年末の最後のライブで披露したので。それからもう一曲なんだったかな……。なんかありましたね(笑)。

──それからインドに行ってみんなで遊んだから「作るぞ!」って感じになれたのか。それともそこで開放されて「あれ、やばかったね」みたいに後から突き詰める形になったのかっていうと。

濱野 意外と前者ですね。インドの貧困しているエリアに10日間いたので、日本でバンドをやれていることが奇跡だなって噛み締めました。全員で一緒にいれたのがすごいよかったよね。

──ルーフトップでライブをされたりしたそうですね。あれはヴァラナシ?

濱野 ヴァラナシのガンジス川沿いのユースホステルの屋根の上でライブをやりました。街が砂塵に包まれていて、その中に黄色い光が差し込んでいて、ライブ2曲目で停電して(笑)。

──すごい環境ですね。

本村 すごい盛り上がってたんですけどね(笑)。

濱野 真っ暗闇の中に声だけが届いてるみたいな感じで(笑)。

──“船底”の歌詞もガンジス川のお話ですよね。仮タイトルのタイミングで聴いたのが印象的だったんですけど。

濱野 ガンガー(ガンジス川)って聖なる川のイメージがあるじゃないですか。でも、実際に行ったら生活排水や工業排水も垂れ流しだし、死体も流れている。ちょうど川を見に行った時に妊婦が流れてきたんです。現地でも火葬が主流なんですけど、インドでは妊婦と赤ちゃんと蛇に噛まれた人は燃やしてもらえないんですよ。現地に行くまではガンジス川で沐浴するとか息巻いていたんですけど、実際に見たら3秒で「沐浴はしない」ってなりました。指先すら入れたくないくらいで。

──それくらい衝撃的だったんですね。

濱野 それで、もうただただボーっと川を眺めてるだけしかできないんですよ。なので、帯同していた写真家の相澤くんとボーっと眺めていました。「捨てられた川」みたいな印象がすごくあって、そういうところからできた曲ですね。

──楽曲の並び順もスムーズに決まりましたか?

濱野 微調整くらいですね。なんとなくですが、制作している時に“スーフィー”が1曲目になるだろうな、というイメージがありました。当初、用意していた楽曲全曲のレコーディングが終わった時に、「最後になる曲がないな」ってなって、レコーディングの最後に“wedding dress”のレコーディングが開始されました。みんながビールを飲み始めた夜中3時に、「もう一曲だけ作らない?」って詞を書き始めて、アレンジも考えずに、ストレートパンチの曲をやろうと。朝8時には“wedding dress”が完成していました(笑)。

──すごい。

濱野 そのままご機嫌に5月の伊豆で海開きに行きましたね(笑)。

本村 レコーディングの最終日はサポートのイタル君が唯一いない日で、久しぶりに現メンバーの3人だけで録った曲という部分も含めて、特別な感情がありましたね。

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時制を越えて響く言葉達

──歌詞の面にフォーカスしようと思うのですが、歌詞ではリアルとイメージの世界、どっちもあるよ、みたいなことをこのアルバムを通して言ってるのかなと僕は勝手に思っていました。矛盾を孕んでいる“過去と現在と未来”の時制を行ったり来たりすることとか。頭の中の世界に行ってしまうことフィジカルに何かを感じることの両方を感じられる言葉遣いだなって。

濱野 そう解釈してくれているのは嬉しいですね。アルバムタイトルになっている“Infinity Mirror”は歌詞で《道に迷ったら 待ち合わせは 合わせ鏡の古い一枚》って言っているんですけど、合わせ鏡の古い一枚っていうのは一番奥にある“はじまり”のことなんです。果たしてこれは過去の話なのだろうか、未来の話なのだろうかと考えたら難しいじゃないですか。

──難しいですね。

濱野 そこに“はじまり”の鏡があるかを認識しようとした時に、そこには既になくなっていて、またさらに奥にある。だから言葉も時系列もグチャグチャにしてみたんです。

──以前「ウェディングドレスを着る瞬間は人生で一番の幸せを約束された瞬間だ」という話をされていましたよね。Gateballersの歌詞は《体は入れ物》という言葉遣いとか、“Moon river”の《難しいことはもうやめる時間だ》とか《旅をするのに体重はいらない》とか。精神世界の中を生きるといったように、自分の人生をそういったレイヤーでみることを追いかけているのかなとかって思ったんですけどどうですか?

濱野 現代って今ここにある現実と仮想空間どっちでも生きられるみたいな世界になってきているじゃないですか。もうすぐリアルと仮想空間の垣根もなくなるだろうし、そのどちらも本物みたいな。そうなってしまったら本当に「体は入れ物」でしかなくなるし、誰でも誰にでもなれる世の中になると思っているんです。でも、個人的には、《体は入れ物》と歌いつつ、やっぱり体が気持ちいいことが最高だ、みたいなタイプなんです。自分は“美味しいと感じること”を大事にしたいんです。できれば携帯とか捨てたいし。

──言いたいことはわかります。

濱野 でも、仮想の方で生きている人もいるんですよね。いつも寂しい気持ちになるのは、死んじゃった人のTwitterがずっと残ってしまうことなんです。誰でもそのTwitterを見れば、その人のその時間を追うことができる。これからもっとそういう状況になってくると思うんですよ。石の墓場じゃなくて、0と1の墓場になってくる。それは果たしてどんなことなんだろうって考えたりもしますね。

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──それこそ、“スーフィー”が神秘主義の詩人ルーミーの『愛の詩』に影響されたものと知って。歌詞で歌われていることと、インドで見てきたものの世界の風景と感じたことが混ざっているような気がしました。でも、あの曲がインドに行く前に生まれていたのは、結構不思議ですよね。

濱野 確かにそうですね。インドは初めての海外旅行だったので、1分1秒無駄にせずにああいう歌詞の気持ちで旅をしていました。

Gateballers – スーフィー

──これまでもやろうと思えばシンプルなストレートパンチを打てたと思うんですけど、それをこれまでやってこなかったのにはどんな背景があるのでしょうか?

濱野 どうしても最初からストレートパンチを打ちたくなかったんですよ。最初からストレートパンチをやることを目的にすると、どうしても手法が人の真似になってしまうじゃないですか。それが一番嫌だったから、自分のやり方とか道具とか武器を揃えて使い方も学んで、それを使ってストレートパンチを打つ方が絶対に創作として正しいと思うんです。……意外と硬派なんですよ(笑)。

──たまたま今回、音像がストレートパンチになっただけで、歌詞の部分とか通底するテーマは変わっていない気もします。大学時代からずっと一緒にいる本村さん的にはどうですか?

本村 根元はまったく変わってないですね。

濱野 淘汰はされてきてますけどね。

本村 変わっているところもたくさんあると思うんですけど、それがあるからこそ変わっていないところにより目がいくんだろうなって思いますね。他の人に対してもですけど、 変わっていないところは本当に変わっていないんです。人といると本当にすごくはしゃいでいて、笑顔だし(笑)。でも、みんなが帰るときに寂しそうっていうのはずっと変わっていないですね。

自分自身のまま在り続ける。Gateballersが音の旅で表現する生きる神秘について interview191004-gateballers-8

──最後にこれからの野望といいますか。バンドとしてのスタンスについて教えてください。

本村 僕がパッと思ったのは、ライブをしている時とスタジオの時と比べると、笑っている量が変わらないのが重要だと思います。「この人の音何?」「なんで!?」みたいなシーンが絶えず起き続けていて、その度にみんな爆笑してたので(笑)。ライブだから笑顔になっているわけでもなく、制作でもゲラゲラやっているのは、絶対バンドのスタート地点としてあるので、それは守り続けていきたいですね。

濱野 俺はめっちゃ俺になりたいです。

──俺になりたい?

濱野 小さい頃から音楽家になることを決めて音楽家をやっているので、「バンドをやってるから、武道館を目指せ」みたいな考えは嫌なんです。あんまりどういう場所にいたいとかはないです。興味持てなくて。

──音楽を作ることが生理になっているということですね。

濱野 それに関して言えば、もっと空気を吸うように音楽を作れたらと思うし、赤ちゃんが泣くようにギターを弾けたらなと思います。最終的には、ファミレスとかに行ってギターを弾いてオムライスを注文するみたいな。本当にそうなりたいです、まじで。

──自身を強化していくことでしかないですからね。どっちにせよ。

濱野 そう。だから芸事を磨いていくのみかなと。……どうですか、(久富)奈良さん? ごめんね、いつも最後で(笑)。

久富 これからどうなりたいか……。やっぱり自分の人生を大切にしたいですね。

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Text by Hiroyoshi Tomite
Photo by Yuki Aizawa

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Gateballers
メンバーは、濱野夏椰(Gt,Vo)、本村拓磨(Ba)、久富奈良(Dr)、内村イタル(Gt,Sam / サポートメンバー)。2013年5月に東京にて結成。2014年11月に濱野が小山田壮平(AL / ex.andymori)らと共にレーベル「Sparkling Records」を設立。2016年3月に1stアルバム『Lemon songs』、2018年2月に2ndアルバム『「The all」=「Poem」』をリリース。ASIAN KUNG-FU GENERATION後藤正文主催『APPLE VINEGAR -Music Award- 2019』に『「The all」=「Poem」』がノミネートされた。濱野は「ポカリスウェット」と『FUJI ROCK FESTIVAL』のコラボCMにてギターを演奏するなど、活動の幅を広げている。2019年9月より開始される『小山田壮平バンドツアー2019』に濱野がGt、久富がDrで参加。Ba.本村はカネコアヤノBANDに参加中。

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RELEASE INFORMATION

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Infinity mirror

2019.09.04(水)発売中
Gateballers
PSCM002
¥2,484(tax incl.)

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EVENT INFORMATION

Gateballers 3rd ALBUM「Infinity mirror」レコ発ツアー

2019.10.04(金)
大阪府 梅田 Shangri-La
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ベランダ
ARSKN
Newdums(Opening Act)

2019.10.11(金)
福岡県 Kieth Flack
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HAPPY
the perfect me

2019.10.13(日)
広島県 4.14
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Gateballers
愛はズボーン
ARSKN

2019.10.17(木)
宮城県 仙台 LIVE HOUSE enn 3rd
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キイチビール&ザ・ホーリーティッツ

2019.10.20(日)
愛知県 名古屋 CLUB ROCK’N’ROLL
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HAPPY

2019.11.07(木)
東京都 代官山 UNIT
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Helsinki Lambda Club

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