偶然ではあるが、9月11日(土)という自身の音楽性のルーツ的には忘れがたい日付に初のフルアルバム『Naked』を発表した、東京都内を中心に活動している3ピース・バンドThe ManRay。同作品は彼らの現体制やメンバーのラインナップのブランニューさも含め、非常に興味深い音楽性の移行が感じられた。

元々US/UKインディーズへのシンパ性やオルタナ、ガレージ、ロックンロール・リバイバル的な要素に、様々なタイプのダンサブルさをブレンド。そこにシンセやツインギターを活かした過去のサウンドも特徴的であった彼ら。

打って変わり3ピース体制となった現在は、その三位一体性やいい意味での隙間やシンプルさ、多少の洗練さや、歌を荒げず、あえてクールな表現も印象的。
そして何よりも各曲がバラエティに富み、その幅や間口の広いサウンドへの移行には驚かされるものがあった。そして、その集約が上述の彼ら初のフルアルバム『Naked』と言える。

各曲が全く違ったアーティストの楽曲のような趣きを擁し、結果的に、新生The ManRayを高らかに宣言しているかのように響いた同作品ではあったが、この日行われた彼らの同アルバムのレコ発ライヴを観て、ちょっと印象が変わった。当初は、今作を全く変異的に生まれた作風に捉えていたのだが、実は彼らのこれまでやってきた音楽性と、現在、そしてこれからがキチンと地続きであり、それらの点が線で繋がり、その先にキチンと今作が結びついていた。そんな印象に変わったのだ。

本来の粗野性や汗、土臭さ、感情の起伏や生々しさ、その辺りもシッカリとライヴで放たれており、私はそこに現在の、そしてこれからの彼らの逞しさを感じ取ることが出来た。

以下は共演のDrive BoyDJたちも交えた、レコ発ライヴの一夜を私の所感や雑感を交えてお送りしたい。

LIVE REPORT
2019.9.28(SAT)@表参道WALL&WALL
The ManRay 1st.Album『Naked』 Release Party

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フロアに入ると、DJ Bearがホットでファンキーなチューンを次々にスピン。会場の高揚感を高めていた。
そんな中、この日のライヴアクト1番手のDrive Boyがステージに現れる。シンセを擁した心地よい音楽性と英語詞楽曲が魅力のUS/UKインディーズにシンパシーを抱かせる、東京都内を中心に活動している4人組ロックバンドだ。
彼らもちょうど現在はレコ発ツアー中、UKでのツアーを経て、国内を回っている最中ながら、The ManRayのこの大事な一番に駆けつけてくれた。

シンセ、ボーカル&ギター、ドラム、ベースの編成の彼ら。「好きに乗って欲しい。楽しんで欲しいなって」との気持ちを込めて、各曲が贈られたこの日。

早い鼓動のようなSEに乗ってメンバーが登場。バンドが放つ深海から浮上していくようなデモンストレーション音から“Midnight Run”に。白玉の多いベースと神秘性を帯びたシンセ、タイトなドラミングと共に、ややゴス調のニューウェーヴィーなボーカルが重なる。適度な疾走感が心地いい。力強い4つ打ちとブライトでファンキーなカッティングから明るい場所に引き連れるように“Sapient”に入ると、ミラーボールも回り至福な気持ちへと誘われていく。続いての“Night Crawler”はメランコリックさも交えたミディアムなナンバー。ボーカルも、たゆたうように歌い崩し、会場も委ねるように身体を揺らすようにノる。

ドラムが繋ぎ、オルガン的音色と運指の多くなったベースが生み出す躍動さも印象的な“J.J.”が楽しげな雰囲気を場内に呼び込めば、ボーカルもギターの弦をタッピングしながら独特のトレモロ的雰囲気を作り出した“The Reboot”が再びライブを走り出させ、ヴォコーダー的なコーラスも楽曲にふくよかさを寄与していく。ラストは上昇感とグイグイと引き込みつつも開放感を有した“Wachowski”が会場を、ここではないどこかへと引き連れていってくれた。

最初は無反応だったフロアが最後はしっかりとリアクションを見せていたのも印象的であった、この日の彼ら。しっかりとThe ManRayへとバトンが継がれていく。

間にはDJのDiscocigsがテクノ、トライバル、フィーリーソウル、ファンキーチューンやディスコミュージックをエフェクトを交えてガシガシにつないでいく。フロアがわらわらと再び埋まっていく中、熱いビートに身を委ね、続くThe ManRayの登場を待つ。

このWALL&WALLはクラブ仕様も兼ねており、ミッドやローが効いたサウンド・システムも印象的。が故に、この日もThe ManRayのグルーヴ感やしっかりと腰で躍らせ、うねる部分を作品以上に補完し、その結果、彼ら本来の土臭さや踊れる感じ、そしてヘヴィーな面やグルーヴィ―な感じを引き立てていった。

アサトタクロウ(Vo./Gt.)コガコウ(Ba.)オオキリョウスケ(Dr.)The ManRayの3人が現れる。フィードバック音の中、重くちょっとダルなストーナーロックライクなインストを放つ3人。それがそこそこヘヴィで心地良い。同曲も持つブルージーな雰囲気の中、いきなりの未発表の日本語詞ナンバー“Feel like babe”が場の空気を変えるように始まる。重くて乾いていながらもインタープレイを交え、会場をグイグイ惹き込んだ同曲、歌を通し、「赤ちゃんの気持ちで感じてみろ!」と楽しみ方を指南する。

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ここからは文字通り体感していく曲が続く。“Ride My Car”が、さぁ、俺に乗れ! やっちゃおうぜ!と悪い誘い。コガもプリングを織り交ぜ、跳ねる部分を増大させた“Naked”では不穏な雰囲気を醸し出しつつも、その分、そこを抜けて表れるサビでの開放感がより一層の爽快感を味合わせ、ラストに向けオオキがヴ―ドゥーに場内を腰で躍らせていく。

ここからはニューアルバムでの多彩さを改めて感じさせてくれる曲が楽曲毎に誘い、アサトのロートーンの歌声がより前面に表れた。と、同時に作品で実はこうしたかったといった部分を補うように補完されていく。ムーディなカッティングとメロディアスな歌声の“砂の上のバカンス”、続く“Sea Side Motel”がトムウェイツ的なラ・ボエームな雰囲気とロードムービーさを醸し出せば、“Rollin’ Daddy”では、持ち前のファンキーさが場内にスリリングさとオオキが生み出すダンサブルさを寄与していった。

“Brown Sugar”から数曲は元メンバーであるキーボードのモーリスもお祝いに駆けつけるように加わり、前メンバー時代の楽曲が立て続けに現れる。前のめりなリズムの上、トロピカルな音色も特徴的な、その“Brown Sugar”を経た、“You will be mine”では、アサトのたゆたうようなフロウの歌い方も印象的であった。

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ここからは早くも出来立ての新曲たちが披露された。”Razorbeam”がドッシリとした安定感を見せながらも、ちょっとしたアンニュイさにて場内をたゆたわせていけば、アサトも景色感豊かなギターを楽しませてくれた“Waterfall”では会場が軽快に躍っていく様を見た。

“Everybody wants“はコガが作詞/作曲/歌唱も務めたナンバー。短いながらもホッとした気持ちが歌われた。また、上昇感とこれからの明るさへと一緒に誘ってくれた未発表の”風船“ではラストに向かっていくにつれ、まるで光に包まれていくかのような幸せな雰囲気に包んでくれた。

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ライブはぐんぐん進んでいく。“Fly To The Moon”が適度なドライブ感で会場を惹き込み、場内のテンションをグングン引き上げていけば、本編ラストはパーティ感たっぷりに“Alrightman”が場内をハッピーに楽しげにしっかり躍らせた。

アンコールでは3人とも上半身裸でステージに現れた。ここで12月1日(日)にツアーファイナルが同じく表参道WALL&WALLで開催されるというアナウンスがメンバーからあり場内が歓喜に沸く。その声量からこの日への高い期待値が伝わってくる。

アンコールは2曲。それぞれ『Naked』からの曲たちだった。まずは“Madness”がドライブ感とシューゲイズ的な展開にて場内を走り出させると、ラストはスタックスビートに乗った“Lemontea”が、前半は荒げに、中盤からは求愛フレーズの数々がステージとフロアの距離を一瞬にしてグッと縮めていく。同曲では会場も一緒に大合唱。ストイックなのだが、その実、親しみやすい彼ららしさが垣間見れた。「また12月1日(日)に、ここで会える人は会いましょう!」(アサト)の言葉を残して彼らはステージを去った。

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振り返ると『Naked』は正直、幅やバラエティさ、歌を全面に出し聴かせる作品性や、お互いの立ち位置やバランスを気にし、尊重し合っていた面もあったのだろう。アルバムでは彼ら本来の土臭さや汗、粗野な部分が、いい意味で「洗練」されていたように感じる。
しかしこの日のライヴではその辺りの互いの尊重性はほとんど見受けられず。逆にバトルやバウトのように己の音やリズム、グルーヴや歌をぶつけ合うように各々放ち合っていたのも印象深い。両方の武器を手に入れた感があり、それらは誠に3人を頼もしく映させた。

彼らはこれから今作と共に各地でライヴを行い、再びファイナルとしてここ表参道WALL&WALLに還ってくる。その際にここは各地で放った彼らの音楽性に魅了された者たちが再び集う約束の地になることだろう。気が早いが私の気持ちは既に、その場で楽しそうに彼らの音楽性に身を委ねている、そんな自分の姿を思い浮かべている。

Photo by Yosuke Demukai
Text by 池田スカオ

The ManRay 1st.Album『Naked』Release Party

2019.9.28(SAT)
表参道WALL&WALL
LIVE:
The ManRay / Drive Boy
DJ:
Bear / Discocigs

SETLIST

Drive Boy
1. Midnight Run
2. Sapient
3. Night Crawler
4. J.J.
5. The Reboot
6. Wachowski

The ManRay
1.Intro
2.Feel like babe
3.Ride My Car
4.Naked
5.砂の上のバカンス
6.Sea Side Motel
7.Rollin’ Daddy
8.Brown Sugar
9.You will be mine
10.Razorbeam
11.Waterfall
12.Everybody wants
13.風船
14.Fly To The Moon
15.Alrightman
-Encore-
En-1.Madness
En-2.Lemontea

セットリストのプレイリストはこちら

The ManRay – “Naked” Release Party //2019.09.28 in TOKYO WALL&WALL

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The ManRay

2014年、都内にて結成。
UKインディ/ガレージ/オルタナ/パンクをルーツに、ブルース/ソウル/ファンクなどのブラックエッセンスを混ぜ合わせた、独特で荒々しく土臭いサウンドに気怠いなかに苦みを効かせたヴォーカル、クールかつルードな佇まいで、時代に媚びないロック美学を熱く貫くネオ・ロッキン・ブルース・スリーピースバンド!!

2017年6月に1st.EP『You will be mine』をリリース。リードトラック“Brown sugar” がSpotify 国内バイラルチャートで2位まで駆け上がるなど、そのサウンドに注目が集まる。2018年4月に 2nd.EP『Fly To The Moon』をリリース。タイトルトラック“Fly To The Moon”が【FRED PERRY for JOURNAL STANDARD】 のコラボキャンペーンのタイアップソングに選ばれ、イメージモデルとして本人達もWEBムービーに出演。

2019年3月より配信限定にて6カ月連続で毎月1曲ずつリリースし、9月に初のフルアルバム『Naked』をリリース。

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RELEASE INFORMATION

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Naked

2019.09.11(水)
The ManRay
CUCL-800
¥2,000(+tax)

詳細はこちら

EVENT INFORMATION

The ManRay “Naked”RELEASE TOUR

2019.10.27(日)
埼玉・北浦和KYARA
2019.10.30(水)
千葉・LOOK
2019.11.06(水)
宮城・仙台MACANA
2019.11.09(土)
愛知・豊橋club KNOT
2019.11.10(日)
大阪・GROOVYROOMS 2019
2019.11.14(木)
京都・京都MOJO
2019.11.16(土)
岡山・岡山PEPPERLAND
and more…

<FINAL ONEMAN>
2019.12.01(日)
東京・表参道 wall and wall

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