1994年のデビュー・アルバムの発売以降、ギターをメインに卓越した演奏テクニックを駆使してあらゆる音楽の要素を取り入れたサウンド、さらに喜びや葛藤まですべての感情をさらけ出した歌詞と歌声で「生」の叫びを綴り続けるベン・ハーパー(Ben Harper)の、単独としては実に14年ぶりとなる来日公演が3月に迫ってきた。今回はこれまでの彼の軌跡とともに、ステージの見どころを紹介。また、本人からのスペシャルムービーを独占先行公開する。
幼い頃から磨かれたギターテクで新世代ブルースの担い手に
ベン・ハーパーは、米カリフォルニア・サクラメント生まれ。レナード・コーエン(Leonard Cohen)やタージ・マハル(Taj Mahal)、ボブ・ディラン(Bob Dylan)なども通ったと言われる楽器店・The Folk Music Center and Museumを営む祖父母などの影響により、5歳の頃からギターを弾き始めた。
母親エレンと、The Folk Music Center and Museumにて少年期のことを語るベン
10代に入るとギター・テクニックに磨きをかけ、ステージでのパフォーマンスを本格的にスタートする。その実力が認められて、1990年にはタージ・マハルのアルバムやツアーに参加し、1992年にインディーズで限定版のアルバムをリリース。そして1994年にアルバム『Welcome to the Cruel World』を発表した。
同時期にデビューしたベック(Beck)やG・ラヴ(G. Love)と共に「新世代ブルース」を担う存在として一躍注目を集め、アルバムはアメリカで50万枚のゴールドセールスを記録した。その後も、炎の中で叫ぶアルバム・ジャケットがインパクト大の『Fight for Your Mind』、生きることの喜びや苦しみなどむき出しの感情を綴った『The Will to Live』、彼のセッション・バンドであるイノセント・クリミナルズ(Innocent Criminals)が初めてクレジットされた『Burn to Shine』と、コンスタントに作品をリリースしてきた。
『The Will to Live』収録“Jah Work”
ライブではお馴染みの1曲 『Fight for Your Mind』収録“Burn One Down”
ジャック・ジョンソンとの出会い、そして「サーフ・ミュージック」の代表的存在へ
1990年代には、彼は運命的なミュージシャンとの出会いを果たす。それがジャック・ジョンソン(Jack Johnson)だ。ベンの長年のマネージャーであり、ジャックのデビュー作『ブラッシュファイアー・フェアリーテイルズ』のプロデューサーでもあるJPプルニエを介して出会った2人。その後、ベンのステージにジャックがオープニング・アクトとして出演することによってオーディエンスに紹介されると、瞬く間に話題を呼び、その後のブレイクの礎を作った。
また、ジャックのヒットをきっかけに、サーファーを中心とした幅広い世代や嗜好の音楽リスナーにもベンの楽曲が浸透し、「サーフ・ミュージック」というムーブメントが築かれた。そして2003年にリリースされたアルバム『Diamonds On The Inside』は全米チャートでトップ20入りを果たし、2006年発表のダブル・アルバム『Both Sides Of The Gun』では全米チャートでトップ10に入り、日本でも10万枚に迫るセールスを記録した。その年に行われた単独ツアーも各地で大熱狂を呼び、音楽だけでなくライフスタイルにおいても、多くの人々に影響を与えるカリスマ的な存在感を放つようになる。
『Diamonds On The Inside』収録“With My Own Two Hands”
ジャック・ジョンソンとのデュエット・バージョン“With My Own Two Hands”
『Both Sides Of The Gun』収録“Better Way”
グラミー獲得も。本物たちが認めるその表現力
「サーフ・ミュージック」人気によって、一躍時の人となったベン。その一方で、レジェンド的なミュージシャンなどとのセッションも積極的に行ってきた。2004年には盲目のゴスペル・グループであるブラインド・ボーイズ・オブ・アラバマ(Blind Boys Of Alabama)とのコラボ・アルバム『There Will Be a Light』を発表し、翌年のグラミーでは同作が2部門の最優秀賞を獲得した。
また2013年には、ブルース界の実力者であるチャーリー・マッスルホワイト(Charlie Musselwhite)との共作『Get Up!』においてもグラミーを獲得した。彼らと共演が実現できたのは、ベンの圧倒的な表現力、そしてコラボレーターの魅力をうまく引き出せるプロデュース力があるからこそ。また、どの作品も少年のようなピュアな眼差しでセッションを楽しんでいる様子がうかがえることも、評価に大きな影響を与えているだろう。
ブラインド・ボーイズ・オブ・アラバマとの共演曲“There Will Be a Light”
チャーリー・マッスルホワイトとのセッション“No Mercy in This Land”
様々なプロジェクトで刺激を生み出し続ける
圧倒的な人気と実力をつけた2000年代前半、それ以降もベンの進化は止まらなかった。2009年には新たなバンド・リレントレス7を結成し、アルバム『White Lies for Dark Times』をリリース。彼の持っているパッションを吐き出したようなエモーショナルなバンド・サウンドを作り出し、その年の<FUJI ROCK FESTIVAL>でも熱狂を呼んだ。
また2010年には、ビートルズ(The Beatles)のジョージ・ハリスン(George Harrison)の息子であるダーニ・ハリスン(Dhani Harrison)らと共にフィストフル・オブ・マーシー(Fistful Of Mercy)を結成し、メランコリックで美しいアコースティック・サウンドを展開。そして母親であるエレンとの共作アルバムなどのさまざまなプロジェクトで、リスナーたちに驚きとともに、人生に光を与えるような作品を発信し続けている。
そして、ソロ名義で2019年にリリースされたシングル「Uneven Days」では、必ずしも思い通りに行かない「不均衡な日々」をピアノの弾き語りでじっくりと歌い上げている。キャリアを積んできた彼が、これまでに想いを巡らせながらも新たな音楽フェーズへと向かい、力強い一歩を踏み出している。
ベン・ハーパー名義の最新曲「Uneven Days」
待望の来日公演の見どころとは
ソロ名義で作品を発表して25年以上の時間を経て、間もなく開催されるベン・ハーパーの14年ぶり(来日自体は4年ぶり)の単独公演。今回は、彼の長年のコラボレーターであるバンド、イノセント・クリミナルズのオリジナル・メンバーを従えてのステージとなる。これまでの彼の音楽に触れてきた人は、時代が変化しても色褪せない、彼の音楽に対するピュアな衝動を体感できるはず。
また、さまざまなギターと会話をするように丁寧かつダイナミックに演奏するテクニックには、思わず鳥肌が立つことだろう。ギター・テクニック以外も時に興奮させ、時に甘い余韻を与える、あらゆる感情を揺さぶるパフォーマンスになることは確実だ。本物のミュージシャンの「魂」に触れられた気分が味わえる、この貴重な機会をお見逃しなく!
※ベン・ハーパー・アンド・イノセント・クリミナルズの来日公演は、新型コロウイルス感染症の感染拡大防止、及びお客様の安全確保を考慮し、開催中止となりました。チケットの払い戻しのご案内は、詳細が決まり次第改めて発表させていただきます。お手持ちのチケット(紙・電子チケット共に)は払い戻しに必要となりますので、紛失されないよう大切に保管をお願い致します。
Ben Harper最新アコースティック演奏ムービー
EVENT INFORMATION
Ben Harper & The Innocent Criminals
来日公演
2020年3月2日(月)
OPEN 19:00/START 20:00
Osaka BIGCAT
2020年3月3日(火)
OPEN 19:00/START 20:00
名古屋ダイヤモンドホール
2020年3月5日(木)
OPEN 19:00/START 20:00
豊洲PIT
スタンディング 前売り:¥8,500