CHAPAHとAru-2によるジョイント・アルバム『Leave it』が3月10日にリリースされた。本作品はInstagram上のやりとりのみで、約1ヶ月半という超短期間で完成させたという。
CHAPAHは知る人ぞ知る〈VLUTENT RECORDS〉(ブルテン・レコーズ|以下、VLUTENT)に所属し、レーベルのポッセVLUNTENT ALSTONESや、盟友KAICHOOとのGAMEBOYSでの作品や、近年ではソロ作品をコンスタントに発表し続けている。TOKYO HEALTH CLUBやISSAC(ROCKASEN)のアルバムへの客演も記憶に新しい。
Aru-2はISSUGI、仙人掌、環ROY、JJJ、C.O.S.A.、Daichi Yamamoto、KID FRESINO、NF Zesshoなど、楽曲プロデュースに携わった面子の名前を挙げるとキリがない。さらに自身のソロ作品や国内外のレーベルからリリースしているビートテープ、リミックス、直近では映画『POP!』の劇伴音楽を手がけるなど、発表されている作品数は数知れず、まさにミュージック・ミュータントである。
『Leave it』が初の共作となった2人は、シーンのなかですれ違っていた。Aru-2の多岐にわたる音楽的営みと〈VLUTENT〉が挑んできた先鋭的な活動から生まれたコミュニティーの広がりがついに交差した、とも言えるだろう。その経緯を辿るべく、『Leave it』リリースに際して2人の対談を行った。インタビューには、CHAPAHのメンターとして〈VLUTENT〉からdoq、VOLOJZA、W.Oを迎えた。
INTERVIEW:
Aru-2 × CHAPAH
「最高のEPが爆誕しました!」
──まずお互いに面識はあったんですか?
Aru-2 面識はなかったんですけど、piz?さん経由で〈VLUTENT〉の方々を知っていたんで、CHAPAHさんのことも知っていました。それに、佐々木(KID FRESINO)の『Shadin’』収録曲“Granny”にCHAPAHさんが客演していたこともあり、聴いたことありました。でも、濃い繋がりはなかった。
CHAPAH Aru-2くんはメディアで見る人、というイメージでした。提供とかどんな感じでしていますかと聞いたら、「機会があれば声かけてください」と言ってくれたので、嬉しかったです。お声がけをしてすぐ、ドンッとビートが送られて来ていて! 早速4曲いただいて、本当に早いなと。
KID FRESINO – Granny feat. Chapah(prod. by jjj)
Aru-2 いろんな方からビート提供の話をいただくんですけど、全員の依頼に答えられるわけではなくて。でも、CHAPAHさんはラップをどんどんアップデートしてる人だなと思いました。だから一緒にやりたかった。最初の4曲はとりあえず、こんな曲が合いそうかなって。
CHAPAH 本当にその通りでした。その4曲は全部収録されてます。ビートがすぐ来たから、俺もすぐ聴いて。本当に良かったから、その日に1曲書くくらい気持ちが乗ってました。でも、Aru-2くんが聴いてみて、どう思うかは分からなかった。その部分は一番気にしてましたね。でも、とりあえず3曲書いて送りました。
Aru-2 それが届いたのは、たぶん10日もかかってない。めっちゃ早かったですよ。曲を書くのが早い人はいるけど、この短期間で数曲まとめて送り返してきた人ははじめてだと思います。
──そのやりとりもInstagram上で完結したと聞きました。
CHAPAH そうですね。確認したら、年末までに仕上げて1月にリリースする目標で、最後の曲を昨年末の30日に送ってました。そうしたら、ミキシングが終わった音源が1月5日に帰ってきて、もう出来てた。「最高のEPが爆誕しました!」って。
Aru-2 言ってたな(笑)。
CHAPAH 俺は最初、EPを作りたいって依頼をしてたんですけど、作品の頭にイントロも入れてくれて、結局8曲になったんです。それでこれはもうアルバムだと。自分の判断でアルバムとしました。Aru-2くんのビートではすごく順調に曲が書けて、自然に出来た。ラップを送るときはめちゃくちゃ不安でしたけど、1回やりとりしてからは方向性が開けて。1ヶ月半すごく楽しかったです。
──Aru-2さんとCHAPAHさんは、これまで様々なアーティストとコラボレーションを重ねていますが、それを踏まえたうえで、お互いにどんな魅力を感じましたかか?
Aru-2 ラップをアップデートしている点は一つ。それと今回の作品や過去のものに関しても、等身大で、みんなの生活に寄り添うようなリリックをラップする人だと思いました。 ラッパーは刺々しい曲が好きな人も多いし、どぎついドープなサウンドをパスしても良かったんです。でも今回はその要素を取っ払って、その人の日常に寄り添ってくれる作品にしたい、そんな思いがありました。CHAPAHさんはすごく物腰が柔らかい印象があった。謙虚でこっちも構えないで良いなという落ち着きがあった。
あと、逆に自分からビート提供したものでも、合わないって言われる事もモチロンあって、確固たる音楽的な軸がある人は、それにハマればやるけど、そうでない場合はやらない、とか。でもCHAPAHさんは対応力が凄いあって、コチラのやりたいことをしっかり汲み取ってくれる方でした。余談ですが、昨年リリースしたアルバム『Little Heaven』ではそれが色んな方々に協力してもらってはじめて実現できた作品でもあります。
Aru-2『Little Heaven』
ここから聴く
CHAPAH Aru-2くんのビートには、すごく綺麗な印象がありました。いただいたビートはすごく温かみがあって、寄ってくれたのかなって。ラップを乗せるとき、今回はこれまでと大きく変わった手法を使ったわけではないけど、はっきり言葉を言わなかったりとか、ビートに合わせてラップをしました。ソロになってからリズムに合わせることを重点に置いたけど、今回は特にそうかなと。言葉を削る作業はあまりやったことがなかったのですが、例えば「俺」を「れ」だけ発音したり、「とき」の「と」を言わなかったり、とにかく音を重視しました。
Aru-2 黒人みたいですね(笑)。
CHAPAH とはいえ、ミキシング/マスタリングでかなり補正していただいたので、自分のイメージからかなりグレードアップしてました……。
CHAPAH – Hyuuu(Prod.NaBToK)
──お二人の共通点として、リリース量がとにかく多いことが挙げられると思います。Aru-2さんはビートテープや楽曲提供、リミックスなど。CHAPAHさんはMAXIRIES/WAQWADOMのNabTokさんとジョイント作品を近年に2枚リリースしてるだけでなく、その他シングルやEPも出してる。他のインタビューで語られているように、Aru-2さんは日常的にビートを制作しているとのことですが、CHAPAHさんは一昨年から突然リリースの量が増え、制作のスピードが上がったじゃないですか。それはなぜだったんですか?
CHAPAH 自分はGAMEBOYSというグループでやっていたんですが、1人でやるようになってからは音の確認などいらないし、自分のなかで完結できるのが大きかったです。あとは純粋に、ビートをくれる人が近くにできた。加えて、Aru-2くんも、NabTokさんもそうなんですけど、ビートを提供してくれて、意見をくれて、ミキシング/マスタリングまで瞬時にしてくれる。
Aru-2 ビートメイカーの人のなかには、ビートだけ送って「ハイ、終わり」の人も多いんですけど、僕は作品全体の流れとか、ミキシング/マスタリングも含めてその人の魅力をプロデュースしたいタイプなんです。
──Aru-2さんは〈Dogear Records〉の作品など、相当な数の作品でミキシング/マスタリングを担当されてますよね。
Aru-2 僕にエンジニアの仕事をくれたのは、Budaさん(BudaMunk)でした。最初はJoe Stylesの作品を頼まれて、そのあとはBudaさんの作品もそうだし、Budaさんの繋がりからFitz Ambro$eのマスタリングなど。そうしていくうちにISSUGIさんからエンジニア仕事の相談をもらって、それから沢山の作品に参加させてもらっているうちに、今では〈Dogear〉の専属エンジニアみたいになってますね。ありがたいです。たとえば、〈Dogear〉は確固たる〈Dogear〉の色があって。ISSUGIさんもそうで、 自分が描いてるビジョンがあるので、 そこに向かってエンジニアリングしていくんです。だからすごい勉強になることがたくさんありますね。
CHAPAHと〈VLUTENT〉
──Aru-2さんは埼玉県川口市出身で、CHAPAHさんの地元は千葉の柏ですよね。
CHAPAH そうです。生まれは愛知なんですけど、育ちは千葉です。ヒップホップのシーンに関わりを持ったのは柏が最初です。個人的にはCOBA5000が最初の入口で、影響を受けました。WAQWADOMやZAGSYSTEMが活躍してたときです。俺はネットでイベントを探して、ノルマ払ってイベントに出たり、都内でもやってた。そのときにVOLOJZAと初めて会ったのがGAMEBOYSの最初だと思います。あとはROCKASEN。自分たちがやってるなかで、イベントに声をかけてもらったりと、この人たちには頭が上がらないなと。COBA5000に影響を受け、ROCKASENに憧れ、最終的にVOLOにたどり着いたということです。
──CHAPAHさんの音楽的なターニングポイントはどこでしたか?
CHAPAH うーん。〈VLUTENT〉に入ったことかもしれないですね。
──ここで改めて、CHAPAHさんが所属する〈VLUTENT〉について教えてください、
VOLOJZA 〈VLUTENT〉が結成されたのは2011年で、今年で10周年です。そもそも〈VLUTENT〉はVANADIAN EFFECTのレーベルなんですよ。VANADIAN EFFECTのpiz?とABC(AIR BOURYOKU CLUB)ってユニットを昔やってたんですけど、ABCの作品をリリースするときに、自分に流通会社での作品を流通した経験があったから、その一環を手伝った流れで〈VLUTENT〉に入ったんです。GAMEBOYSが入ってくれた流れも、VANADIAN EFFECTと自分がやりたかったことのバランスを取るときに、自分に幅が出るから。VANADIAN EFFECTはハードコアなグループだったから、もっと柔軟にできると思った。
GAMEBOYSxJZA-ODEKAKE-Short Version-
CHAPAH 自分は〈VLUTENT〉に入る前からVOLOとKAICHOOとはずっと遊んでたり、クラブに行ったりしてて。それまでKAICHOO(GAMEBOYS/VLUTENT ALSTONES)と2人でいそいそとEPを出したりしてました。
VOLOJZA そのときもビートはNabTokさんなんだよね。
CHAPAH あと自分で作ってたトラックでやったり、DJ AGA、フリップとか。それで、〈VLUTENT〉に入る前は柏でやりたい気持ちがすごく強かったんです。逆に隣町にいたVOLOは「俺は千葉って言うのは恥ずかしい」ってずっと言ってて(笑)。
VOLOJZA そんなことは全然ないよ(笑)。変にカテゴライズされるのが嫌だっただけ。
Aru-2 その感じはすごく分かります。川口の自分の周りにはそういうコミュニティーがなかったけど、ここだけと群れるみたいな行動があまり得意じゃなかった。
VOLOJZA 本当にその通りで、地元のパーティーに行くと楽しいけど、でも他のパーティーに行ってもカッコいい人はいるじゃないですか。
左からW.O、doq
──先日Campanellaさん主催のイベント<mdm>で、出演していたDJのnutsmanさんが四つ打ちの流れでVOLOさんの曲(“AAAA-4”)をプレイしてました。〈VLUTENT〉の音楽的特徴として、ジャンルレスでエッジの効いた部分があると思うのですが、意識していることはありますか?
VOLOJZA 単純にその時作りたい音楽をやってるし、いつも気にかけてることはオーセンティックな表現との距離感かな。ヒップホップだけが好きな人はちょっと抵抗感あるかなって部分もやりたくなる。王道を継承するようなスタイルは少なくとも自分には役不足に感じるし。でも難しいのは、あまりにまとまりがないからこれといって分かりやすい〈VLUTENT〉の色が出ない。かといって、固めるのも違ったり……。
──〈VLUTENT〉にはFla$hBackSとの繋がりがあって、たとえば、VLUTENT ALSTONES・あべともなりさんのEP『大地讃頌』はJJJさんのフルプロデュースですよね。
VOLOJZA それはpiz?がすごいから(笑)。あいつは分け隔てないし、気さくなんだよね。piz?がいなかったら、Aru-2くんもそうだし、俺らのコミュニティーも広がってない。piz?は本当に音楽が大好きで、ヤバい人にはすぐ声をかけてた。
そのなかでもFla$hBackSはすごかったね。佐々木とかラップしてなかったのに初めて録音したの聴いたら、異常に上手かったしカッコよかった。FEBBもそう。最初はDJしかやってなかったと思うんだけど、ADAMS CAMPのリミックスでラップしてたのがすごい良くて、巷で話題になった。
録ってたのが〈FIVE STAR RECORDS〉っていうMUTA(JUMANJI)のいたスタジオで。そこでVANADIAN EFFECTとか、FEBBもしょっちゅう行ってた。JJJはそこでエンジニアでVANADIANの録音を手伝ってくれてた。あべちゃん(あべともなり)のオケは、JJJがまだそんなにトラックメイカーとして知られてない頃にころにpiz?がめっちゃキープしてるオケが確かあったんだよ(笑)。俺がやるからって、ビートをめちゃくちゃ持ってたの。でも本当に、JJJのビートはヤバイから。
【MV】あべ ともなり/ヨルナンデス
VLUTENT ALSTONES-VLUTENT YEAR feat.VOLOJZA CHAPAH WO2X7 doq KAICHOO ilo あべともなり piz?
W.O あいつの営業能力はすごいんだ。
Aru-2 piz?さんにはめちゃくちゃお世話になったっすよ。いろんな遊びを教えてもらって(笑)。
CHAPAH それこそ佐々木も、piz?がいきなり俺の職場の下に連れてきて、「CHAPAH、こいつKID FRESINOっていうんだよ!」って紹介してくれた。
──CHAPAHさんとAru-2さんは、今回の作品に至るまでに実は何度もすれ違っていたんですね。そのなかでも、共通人物として、Aru-2さんの最新アルバム『Little Heaven』のジャケットを手掛けた日本横丁さん(Marfa by Kazuhiko Fujita)が、『Leave it』のアートワークを担当されています。
CHAPAH あの男は本当にイイ男なんです。中止になってしまったけど、去年4月にアルバム『MUK』のリリパをやろうとして、そのとき用に、収録曲にちなんだTシャツを何枚も擦ってくれてたんですよ。doqには言ってたらしいんですけど、それを半年ぐらい言わないまま、「こういうの作ったんだけど、どうする?」って送ってくれたんです。そのときの感動たるや。そのTシャツの売り上げを、お前の次の制作費に当ててくれって、渡してくれて。いつもめっちゃ生意気なやつなのに(笑)。
Aru-2, CHAPAH『Leave it』
「Aru-2のビートはすべてを肯定してる」
──昨日、Aru-2さんが劇伴を担当する映画『POP!』の上映会にお伺いしたのですが、アフタートークで監督の小村昌士さんが「Aru-2のビートはすべてを肯定してる」とおっしゃってました。これは『Leave it』にも言えることだと思っていて、CHAPAHさんがラップする「どうにもならない日常」というテーマを、Aru-2さんのビートが優しく包み込む、そんなイメージがあります。
CHAPAH 俺は常にネガティブで、自分のことばかりで小さい話ばかりしてるんですけど、Aru-2くんのビートのなかでは、今まで自分がやってきたことと全然違う自分が見つけられたと思います。Aru-2くんはビートに名前をつけて送ってくれるんですよ。そこに「Leave it」ってタイトルのものがあって、ちょうどニュアンスと自分の感情がマッチしてたんです。「置いていく」というか。いろんなことにそれが当てはまると思った。
Aru-2 ビートに関しては、CHAPAHさんのラップの良さを伝えたいアティチュードで作ってまとめてました。CHAPAHさんのラップは押し付けたり説教がましくない、強要しないというか。答えを明確に提示する形ではなくて、そのままを受け入れる気持ちになれる。僕がその名前をつけたのはたまたまで。曲が最初にできるから、ビートの雰囲気は言葉にするとどういうことなのか、ということです。理由とかはないですね。感覚。
VOLOJZA 肯定感が出るよね。CHAPAHのリリックはずっと前向きになってきてるんだけど、それが更新されたと思う。「これでいいんだ?」を「これでいいんだ。」まで持ってこれた。
──Aru-2さんは会社員の経験を経て、それから音楽へ専念していますよね。他のインタビューでは人間関係などで辛い時期があって、2016年あたりには自己治癒的に優しいビートばかり作っていたとか。それからボーカルを入れた作品やダンスミュージック的な作品経て、『Aggressive』や『Fool is Good』など、ポジティブなタイトルのビートテープをリリースしてますよね。映画『POP!』では、映画用に制作した100個くらいのビートをボツにして、自分のストックを提供したと上映会のアフタートークで耳にしました。最終的に劇伴で使用したビートには、近年にリリースされたビートテープのテイストに近い楽曲などが採用されていたと思うのですが、なぜここでポジティブさが前面に押し出されてるのでしょうか?
Aru-2 生きていく意思が明確になったからだと思います。それこそ2016年まではもがき苦しんでて、生きていく希望も見えなかった。音楽にすがってた時期だけど、それ以降に出会いが広がっていって、いろんな人に支えられている事を実感した。それ以来、自分自身も変わってきて、その結果だと思います。
CHAPAH 人と会ったり、ライブ自体もそんなに好きじゃなかったんですよね。
Aru-2 そうですね。 基本的に、家で音楽を作るのが好きで、人と関わるのがあまり好きじゃなかったんですよ。でも、人と関わることで自分が変わっていったり、良い変化が絶対にある。
CHAPAH 自分がやってるなかで、これだとつまらないなと思って声を乗せたり、作品を自分で変えていく姿勢は影響を受けます。
Aru-2 新しいことをしたい気持ちが常にあるから、それこそ今回のCHAPAHさんのラップで「最新の自分でいる」ってリリックもあるし、そういう部分にすごく共感します。
CHAPAH 方向が自分に向いてる。こう思われたい、こういう反応がどうとか、飯食いたいとかじゃなくて、常に音楽に対して自分に方向が向いてるのはアーティストとしてすごくカッコいいと思います。
──最後にお二人のこれからの展開についてお伺いさせてください。Aru-2さんはこの前、小袋成彬さんとスタジオに入ってましたよね。
Aru-2 もともと知り合いでしたが、5年振りくらいに最近会ってスタジオでセッションしました。あの人はすごく頭の良い人だけど、動物的な感覚もあるから、フィールしやすいというか。刺激的で楽しかったですね。
今後はTALK BOXプレイヤーのKZY BOOSTとのコラボアルバムが、夏にリリース予定だったり、プロデュース曲が色々リリースされたり、変わらず自主でもリリースして好きなものを発信していきたいですね。
CHAPAH 出したかったシングルをリリースします。去年書けなかったんだけど、ようやく書けて。あとはもう一枚ソロでEPを作っているのと、GAMEBOYSのEPを出したいなと思ってます。
最後に、インタビューにもたびたび名前が登場したDope Smilly.K a.k.a piz?から『Leave it』によせたコメントが到着。インタビュー同様、『Leave it』を紐解く手助けの一つになれば幸いだ。
CHAPAHから「実はAru-2と次の作品を作ってるんだ。まだ誰にも言うなよ。」と告げられた時点で、曲も聴いていないのに何故か自然と今作がどんな作品になるのかを予測してしまったことを覚えている。この2人が共同作業をするということは「人間的な温度」を帯びた作品になることは想像できたし、同時に彼らの人物像が半透明になって透けて視えるような作品になることを期待していた。
実際に今作はその期待を十分に満たしてくれていたし、非常にオコガマシイがそれぞれの日常を経て「都市生活者としての成長」を少し前方から後ろを振り返るようにして極めて前向きな形で提示してくれたようにも感じられた。物理的に距離の離れたバンコクから今作に至るまでの2人の足跡を客観的に観察していた自分にとって今回の邂逅は極めて不思議なワクワクを与えてくれた。なぜなら個人的には彼らに「共通点」を感じることがあるからである。それは「ひたすら実直に歩みを止めない人間」という基礎的な事実であり、愛や温かみ・優しさを独自の態度・物腰で表現できる人間であるということだ。そのため彼らと接したことのある人間は恐らく彼らに「優しい・柔らかい」という印象を抱くかもしれない。しかし彼らに感じる共通点の本質は「変態性」にある。彼らは紛うことなき「人間的な情緒と愛を帯びた変質者・変人」なのである。
そんな共通点を持つ人物同士が互いの「今」を持ち寄った、ある種の「交換日記」を盗み見ることが許されたのが今作なのである…といえば、少しは本作への興味も深まるだろうか。言葉と音の感触はとても暖かい。今すぐにマスクを外して誰かと再会できそうな気分になる。様々な感情と経験を経て、2人が今日に辿り着いたことを長年の友人として嬉しく誇りに思う。
取材・文:船津 晃一朗
写真:ヒゲノカメラ、Kazuki Hatakeyama(フィルム)
取材協力:イクチャム (iccham)
SP THX:COBA5000、doq、piz?、VOLOJZA、W.O
Aru-2
1993年生まれ、埼玉県川口市出身の音楽ミュータント。 これまで多くのソロ作品集やコラボ作を発表。 ISSUGI、仙人掌、環ROY、JJJ、C.O.S.A.、DAICHI YAMAMOTO、KID FRESINO、NF ZESSHOなどラッパーへの楽曲プロデュースに携わる。 その他マスタリングエンジニアとしても数々のアーティストの作品を手掛けている。
Twitter|Instagram
CHAPAH
〈VLUTENT RECORDS〉所属のラッパー/トラックメイカー。VLUTENT ALSTONES、KAICHOOとのタッグGAMEBOYSでも知られ、2020年にはアルバム『MUK』をリリース。アルバムにはWAQWADOM、MAXIRIESのメンバーNabTokが全曲プロデュースし、TOKYO HEALTH CLUBのdullboy、盟友VOLOJZA、doqが客演した。さらに同年、CHAPAHはTOKYO HEALTH CLUBや千葉の同志ISSACの作品に客演を果たす。2021年1月には同じくNabTok全曲プロデュース、METEOR、VOLOJZA、WO、本田Qが参加した『MAZE』を発表。chelmicoのレイチェルがSNSで取り上げるなど、話題となった。
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