新型コロナウィルスによる世界的なパンデミックが我々の生活を変えてから、約1年半近くが経過した。生活のみならず、様々な分野の経済活動に大きな影響を及ぼし、未だかつてない危機に対して、今まさに変革が求められている。その一例として、音楽における“現場”を示すライブシーンもその象徴のひとつとして数えられるだろう。
そんな重要な局面を迎えた令和の時代に、その新たな可能性を示したのが、あらゆるエンターテインメントの共体験を提供するクリエイティブ集団「PARTY」が開発した『VARP』というバーチャルパークシステム。これは最新のテクノロジーを駆使した次世代型のバーチャルライブの基盤として機能する画期的なシステムで、スマートフォンに専用アプリをダウンロードすることで、楽曲の世界を表現したバーチャルワールドにアバターとなって参加ができる画期的なコンテンツだ。
昨年の夏には、HIPHOPアーティストのkZmとの共同企画によって実現した、『VARP』のお披露目ともなったヴァーチャルライブ<VIRTUAL DISTORTION>で、そのシステムを認知した人も少なくないだろう。そして同年の12月に、『VARP』を活用したバーチャルライブを日本を代表するロックバンドでもあるRADWIMPSが実装。誰もがRADWIMPSの楽曲世界の主人公になれる体験を可能にした<SHIN SEKAI>をローンチして大きな話題を呼んだことも記憶に新しいはずだ。RPGならぬ“ROLE-PLAYING MUSIC”と掲げるテーマの下、その続編とも言える<SHIN SEKAI “nowhere”>が今年7月16日(金)からの三日間限定で開催。前回とは異なり、今回は有償ながら、全世界40カ国で配信される。
ここ数年フィジカルからの移行で主流となりつつあるデジタルストリーミングサービスの台頭も追い風となり、リアルライブのできない昨今の現状で注目を集める各種ライブ配信サービス。だが、その先の景色を描く『VARP』は、次の時代の音楽ライブの在り方、ひいては新しいコミュニティの形を提示するコンテンツとも言える。
新世代の国内ラッパーとして常に革新的な活動を企ててきたkZmと同様に、新しい音楽ライブの体験を模索していたアーティストでもあるRADWIMPSとPARTYの邂逅から始動したという本プロジェクトは、どのようにして生まれ、形成されていったのか。先立って行われた<SHIN SEKAI “nowhere”>の先行体験会及び、RADWIMPSのメンバーとPARTYの主要スタッフが参加したトークセッションの模様を通して、その全貌をレポート形式でお届けする。
RADWIMPSとPARTYによるSHIN SEKAI “nowhere”が目指すもの
先行体験会当日、会場となった渋谷のPARCO 8Fに構えるシアタースペースのWHITE CINE QUINTO。通常の映画上映はもちろん、舞台挨拶や試写会など様々な用途で使われる同スポットは、4度目の緊急事態宣言の期間真っ只中での開催となり、徹底した新型コロナウィルスの感染対策が行き届いた空間に。規定のレギュレーションに沿ったガイドラインの下、適切な人数制限が設けれられ、厳選されたメディア関係者が集結した。
受付を済ませ、各自専用のスマートフォンが渡され、WHITE CINE QUINTO内の大型スクリーンと連動する形で、いざ体験。アプリケーションを立ち上げ、それぞれが自身の分身となるアバターのキャラクター設定を行うと、手のひらの小さな画面世界に<VIRTUAL DISTORTION>や前回の<SHIN SEKAI>同様に、最新のアニメーション映画、あるいはFortniteなどのオンラインライブ・ゲームさながらのフィーチャリスティックなビジュアルが冒頭映像として映し出される。
それは、多くのファンを魅了し続ける唯一無二な音楽性もさることながら、著名なクリエイター陣と共に幾度となく作り上げてきた様々なアートワークにも定評のあるRADWIMPSらしく、はるか先の未来の到来を予感させる美しい楽曲世界で、まさに『VARP』とRADWIMPSが共鳴する部分でもあり、その真骨頂とも言える。
アバターやアイテム、ライブの演出、デジタルインセンティブなど、各イベントに合わせたカスタムメイドが可能になった点やアプリ内課金による物販機能も引き続き反映されている。また各楽曲のテーマやコンセプトに合わせ、ステージの映像も変わり、前回と比較して、よりインタラクティブな機能として複数のステージやパビリオンを設置するマルチステージにも対応。さらに音源との距離や方向をリアルタイムで反映したサウンドシステムも今回より搭載しており、自由度の高いユーザビリティも向上し、リアリティを体感できる機能も魅力的だ。
さらにアバターのレスポンス機能も前回より大幅にパワーアップし、その時の気分や音楽によって、アバターの動きも選択できる。実際の体験時にもバーチャル空間上で空高く飛び跳ねるアバターやヘッドバンキングをして乱舞するアバターが確認できた。
約40分で終えた、スクリーン上映と連動した配布スマートフォンでのシュミレーションプレイ。五感で体感できる<SHIN SEKAI “nowhere”>の世界は、リアルライブとは一味違った臨場感を体験でき、分断された現実と非現実の境目を払拭した新感覚なライブ内容。息つく暇もなく、瞬きをすることさえ忘れてしまうほどの没入感が味わえたのはおそらく筆者だけではなかったはず。
そしてその後に行われたトークセッション。ボーカルの野田洋次郎が「画面上では普通にライブをしている姿を皆さんは見ているんですけど、その裏側では筋肉の動きや繊細な動きをより正確に見せるために、僕らはモジモジくんみたいな全身黒タイツを着て、顔も真っ黒なタイツで50個近いセンサーを体中に付けて、ひとりひとり撮影していたんですよね。それが一番の辱めでしたね(笑)」と語ったように、物体の動きをデジタルで記録する3Dモデリングによるモーションキャプチャーの動きも大きな見所で、制作の裏側や苦労話、RADWIMPSとPARTYそれぞれが込めた想いなどが語られた。
“離れていても、そばにいる”。SNSの普及やリモートでの社会活動が一般化された現代では、新しい価値を見出していく人々の陰で取り残されていく感覚が際立ち、精神的にも孤立していく若者たちが社会問題としてクローズアップされることも多い。開発を担当したPARTYチームが口を揃えて語るのは、ステートメントにもある「リアルライブの代わりとしてではない、新しいコミュニティの場所」というメッセージ。今後新型コロナウィルスが終息を迎え、かつての活気溢れる現場が戻ってきたとしても、様々なテクノロジーによるコミュニティの在り方が誕生していったとしても、おそらく『VARP』が可能にする世界はひとつのニュースタンダードになることは間違いない。
例えばリアルライブと並行し、海外の大型フェスに参加できなかったとしても、世界中の仲間たちと繋がり、共体験できる機会を創出してくれる。また提供する側であるアーティストとしても、表現の場が広がり、ミュージックビデオや音源の発表に関わるクリエイションにも大きく影響を与えてくれるはずだ。
テクノロジーの進化ばかりにフォーカスが当たる未来予想図。しかし、いつの時代も繋がりを求めた想いによって紡がれていく可能性から“now here”な未来は切り開かれていくのだろう。
SHIN SEKAI “nowhere” RADWIMPS ROLE-PLAYING MUSIC teaser 2
Text by Yuho Nomura
EVENT INFORMATION
RADWIMPS – SHIN SEKAI “nowhere”
2021年7月16日(金)/17日(土)/18日(日)
各日 11:00~/16:00~/22:00~
主催 voque ting
企画制作 PARTY
協力 TOKYO FM/FM802/ユニバーサル ミュージック合同会社/ボクンチ
協賛 AZLA/ラリルレコード
3 Days Pass|限定早割:2,820円 通常:3,060円
ボクンチ会員限定 3 Days Pass|限定早割:2,820円 通常:3,060円
3 Days Pass+Prologue Live アーカイブ|限定早割:3,300円 通常:3,540円
ボクンチ会員限定 3 Days Pass+Prologue Live アーカイブ|限定早割:3,300円 通常:3,540円
Prologue Live アーカイブ|490円