SixTONESが今年1月より開催した全国アリーナツアー<on eST>には、ライブ初日の急遽の無観客配信化や、有観客公演の一部スケジュールの後ろ倒しなど、様々な困難が立ちはだかった。そして同時に、彼らのステージは、タイトルに掲げた「最上級=est」に名前負けしない、圧倒的なクオリティを誇るものだった。

そんな同ツアーより、10月20日にライブ映像作品on eST』が発売となる。そこで本稿では、同作に収められる2021年6月7日の神奈川・横浜アリーナ公演の模様や、特典映像の見どころをピックアップしながら、SixTONESというグループの特性について改めて想いを巡らせてみたい。

ヒップホップベースのフロウの進化
従来のアイドルソング像を覆すボーカルアプローチ

今回のツアーにおいて最重要だったのが、グループ結成史上初めて、SixTONESのオリジナル楽曲だけでセットリストが構築されたこと。というのも、デビューの節目となった前回のツアー<TrackONE -IMPACT->まで、彼らは先輩ジャニーズの楽曲をカバーしてきたのだ。

だが、今回のツアーまでに、3枚のシングルと初フルアルバム『1ST』を発表したことで、持ち曲が一気に増加。つまり、今回のステージはどこを切り取っても、SixTONESのオリジナル楽曲が並んでいたのである。その結果、後述する通常盤の特典映像にて田中樹も言葉にしていた通り、前回のツアーとは「まったく別のものを作っている感覚」を体験したという。SixTONESとファンにとって、この部分を抜きに今回のツアーを語ることはできないだろう。

さて、ライブ本編は“Mad Love”で幕開けに。プロジェクションマッピングを駆使した生パフォーマンスのシルエットワークは、松村北斗曰く「心のなかに覚悟がないとできなかった」とのこと。この情勢下で、ようやく再会を果たせると会場を訪れたファンに、その渇望をもう一段階だけ飲み込んでもらうという勇気が必要だったと明かしている。そんな“Mad Love”を歌い終えると、“NAVIGATOR”や“S.I.X”といった激しいダンスチューンを、なんと6曲連続で披露。途中に短いメンバー挨拶を挟んではいたが、あまりのストイックさに思わず目を見張らされるに違いない。

同時に、彼らがあらゆる「決まりごと」から解き放たれた音楽を体現していることにも気がつくだろう。メンバー自身が「楽曲に恵まれている」とたびたび口にしている通り、彼らのオントレンドなサウンドメイクにはいつも驚かされる。また、ジェシーと田中を筆頭に、深淵から轟くような「うなり」や「がなり」を交えた歌声は、いわゆる一般的なアイドル像とは一線を画しているほか、ヒップホップをベースにした自由なフロウやアドリブ(=合いの手)は、本ツアーで初披露となった2ndシングル“NAVIGATOR”以降の楽曲でますます伸び伸びと発揮されているところだ。

SixTONES – NAVIGATOR [YouTube Ver.]

そして何より、そのステージには極めて特徴的なものがある。メンバーの振る舞いに、とにかく余裕のある風格を感じること。前述のメンバー挨拶時、田中は「まずは俺らが作る“最上級”の時間、楽しんで」とさえ当たり前のように言い切ったが、その根底には強靭な楽曲に鍛え上げられながら、それらを歌い、踊りこなせるようになったことでの絶対的な自信があるとだと想像できる。ネガティブな意味ではなく、ファンよりもどこか一歩上の立場から不敵な誘いをしてくることで、リアルな現場への参加時はもちろん、今作のように画面越しであっても、彼らの織りなす空間にもっと浸り、熱狂していたいと思わされるのではないか。

さらに言えば、ダンス中にサングラスをずらし、時にはジャケットをはだけさせて肩をチラ見せし、さらにはライブ中盤、スタッフからの5回にわたる静止をやり過ごしながら、20分弱に及ぶボケ倒しまくりのMCを続ける……そんな彼らのアイドルらしく、その人柄にくすっとさせられるギャップにも、何度も心を射抜かれてしまうのだろう。SixTONESは「」だ。

SixTONES – 「Special Order」 from LIVE DVD/Blu-ray「on eST」(2021.06.07 YOKOHAMA ARENA)

サーフロックやジャジーヒップホップまで
多様な音楽性に現れる表現力

7曲目“Special Order”までの強力なステージを前に、これ以上のパフォーマンスを浴びるとアイドルに対する見方を大きく揺さぶられてしまうと微かな畏怖すら抱いたところで、少し空気が緩やかに。そうかと思いきや、この後の比較的にポップに思える楽曲すら一筋縄ではいかないのがSixTONESである。

例えば、髙地優吾と森本慎太郎が地元愛を爽やかに歌うサーフロック“My Hometown”や、京本大我の高音と松村の低音のハーモニーが染み渡る“ってあなた”など、ユニット曲も完成度が非常に高い。全員曲でも、レゲトンを交えたトロピカルポップ“Lemonade”から、ジャジーなR&B・ヒップホップの“Coffee & Cream”、さらには愛する人に捧げる爽快なディスコチューン“Strawberry Breakfast”まで、とにかく楽曲が洗練されている。本当に月並みなことは一切しないグループだと痛感させられるに違いない。

SixTONES – Strawberry Breakfast

ライブ終盤は、メンバーが「追い込み」と表現していた通り、ロックチューンの揃い踏みに。ここからは、今作の特典映像の内容も交えながら解説していこう。今回は通常盤に、ツアー初日から最終日までの舞台の裏側を追いかけたドキュメンタリーを収録。同映像では、ジェシーがオリジナル楽曲だけで構成したステージについて「よりホーム感があった」とコメント。4日間で7ステージにわたった横浜アリーナ公演を終えて、「正直、無観客だったら(体力が)もたなかった」「(客席にファンがいると)全然違いますよ」と、田中が有観客ならではのありがたみを噛み締める一幕までも観ることができる。

また初回盤には、メンバー全員がライブ映像を鑑賞しながら、感想や裏話を共有するビジュアルコメンタリーも。ここでメンバーが繰り返し話題にし、新鮮に驚いていたのが、無数の照明を抱えた大スケールのステージセット。今回のライブは晴れて全楽曲オリジナルとなったことで、“Bella”のレーザー演出や、“Lifetime”での炎が上がる特殊効果(通称:FB)、さらに“Mad Love”でのプロジェクションマッピングの使用が叶ったとのことだ。

SixTONES – Lifetime

肝心なのはここから。実は当初こそ、これらの演出は都合上、どれかひとつしか選べなかったが、メンバーが気づいた頃には、そのすべてがステージに導入されていたというのだ。ステージ作りに対するSixTONESの苦労やこだわりぶりはもちろんだが、彼らを支える制作陣からの愛情も感じるこのエピソード。メンバーのパフォーマンスに納得できるからこそ、制作陣も彼らの理想に近いステージを組ませてくれたのだろう。そんな裏話の全貌もぜひ、実際の作品を手に取って確認していただきたい。

SixTONESが今、まさに繰り広げている快進撃は、もはや本来の言葉が持つ意味の範疇を超えるほどの「快進撃」といえる。今回のライブ映像作品を通して、彼らがいかに気骨のある音楽と精神性の持ち主かが明確に伝わるはずだ。そうした意味で、SixTONESはこれから、もっともっと「SixTONES」になっていく。

SixTONES – 「on eST」LIVE DVD / Blu-ray digeST

Text by 一条皓太

PROFILE

レビュー:SixTONESがアリーナツアー<on eST>で体現、従来のアイドルソングを覆すオントレンドな音楽性とステージパフォーマンス column211018_sixtones_01-1440x810

SixTONES

HPInstagramYouTube

RELEASE INFORMATION

on eST

2021年10月20日(水)
<初回盤> DVD&Blu-ray
¥7,150(tax incl.)
■2DISCS
■三方背、デジパック仕様
■48Pフォトブック付
[Disc1]
on eST 2021.06.07 YOKOHAMA ARENA
[Disc2]
メンバーによる「on eST」ビジュアルコメンタリー
うやむや -Music Video-
Strawberry Breakfast -Music Video for YouTube-
Lifetime -Music Video for YouTube-
Strawberry Breakfast & Lifetime -Music Video Making– (完全版)
<通常盤> DVD&Blu-ray
¥6,600(tax incl.)
■2DISCS
■8ページリーフレット付
[Disc1]
on eST 2021.06.07 YOKOHAMA ARENA
[Disc2]
DOCUMENT“on eST”

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