コンセプトは「歌(主人公)の数だけ物語があり、それが交錯する場所を街(CITY)と呼ぶ」。SixTONESが2022年1月5日(水)に発売する2ndアルバム『CITY』のことだ。
同作で描かれるのは、街を流れる時間の経過。そのため、今回は初回盤から通常盤まで全3形態に共通して収録される16曲が4ブロックに分類されている。明け方から深夜まで、要所ごとに挿入される4曲のインタールードを区切りとして、いくつかの楽曲のまとまりが特定の時間帯での出来事を表現する構成になっているのである(ユニット曲など各形態限定の楽曲は除く)。
作品全体の表情が変化する全3形態
例えば、明け方の“Interlude -Sunrise-”後に、全編英語詞のポップス“8am”で心地よく目を覚ますと、誰もが誰かのヒーローだとエールを贈るシティポップナンバー“Ordinary Hero”は、出勤や通学などに向けた活力を届けてくれる。「Sunset」を経て「Night」の頃には、常田大希(King Gnu/millennium parade)提供による5thシングル曲“マスカラ”で大人な雰囲気が顔を出し、「Midnight」の時間帯には、ダーティなEDM路線の“WHIP THAT”、安らぎのバラード“Everlasting”のように、クラブでのひと騒ぎと、明け方にほっとする陽だまりの暖かさを同居させるなど、アルバム全体を概観してもバラエティ豊かな楽曲が並んでいるのだ。
さらに、注目すべきは各形態ごとの「1曲目」。初回盤Aでは前段落の通り、再生と同時に健康的な朝が訪れるところ、初回盤Bでは打って変わって、いきなり夕暮れ時から幕が上がる。全形態とも、各時間帯に属する楽曲や並び順は統一されている。ここで異なるのは、街の一日がどの時間帯から始まるのかだけだ。と書きつつも、この違いは非常に大きく、作品全体の表情もまったく別物に見えてくるのである。アーティストにとって、作品の曲順とは悩みどころのひとつであるもの。だが、SixTONESはある程度の基礎を固めながら、リスナー側に「作品をどう聴きたいか」の選択肢を委ねているところが面白い。
こうした収録内容から、『CITY』は1枚のアルバムであると同時に、EPサイズの作品を4〜5枚ほど集めた作品集とも言える。ちょっとした移動時間や作業の合間に聴き切るにも手頃な程度感で、その時々の時間帯に合わせた時間帯のパートを再生するもよし。「夜だけど昼パートを聴こう」などと自由に再生するもよし。もちろん「フル聴き」で一日の時間の流れを味わい尽くすもよし。アルバムとEP、双方の「おいしさ」を両立するのが、『CITY』最大の特徴である。
ちなみに筆者独自のSixTONES観には、“Interlude -Night-”に始まる通常盤の曲順が最もマッチしていた。2021年にグループの知名度をさらに広げた、色気を纏う改心の一曲“マスカラ”を皮切りに、「Midnight」パートではダンスチューンに酔いしれ、「Sunrise」で心温まるモーニングタイムを過ごすと、「Sunset」ではまたしてもボルテージが急上昇していく。これは、彼らが2021年に開催した全国アリーナツアー『on eST』のセットリストにも通ずるテンションの流れであり、過去楽曲と『CITY』を比べることで、その成長を色濃く読み取れるはず。
そして、通常盤を締め括る「Sunset」パートに、“Fast Lane”が待ち受けることもグループの感性にひときわマッチしていると考えた理由のひとつにある。本作のタイトルに『CITY』を掲げているにも関わらず、ここで歌われるのは《窮屈な街 抜け出して》という、その枠組みから抜け出そうとする反抗心。ステレオタイプに囚われないグループの精神性にも通ずるようで、「追い越し車線」を意味する楽曲名も最高すぎる。彼らのまたがるバイクのテールランプはいつまで経っても新品のまま、ミラーには誰一人として写らないのだろう。続く“Good Times”で、同時代の若者言葉で綴った歌詞を、肩の力が抜けるゴスペル調で届けるギャップを含めて、いかにも彼ららしいブロックだ。
SixTONES – Rosy [YouTube ver.]
“Rosy”に象徴されるタイアップとの親和性
ここまで、同一の楽曲ラインナップで形態ごとに異なる収録曲順という軸を据えてきたが、「変化」という話題から発展させるならば、彼らほどそれに富んだ存在も珍しいだろう。これまでのドラマ・アニメとのタイアップ楽曲のほか、YOSHIKI(X JAPAN)書き下ろしのメジャーデビュー曲“Imitation Rain”や今作の“マスカラ”など、タッグを組む相手先の作品やアーティストと大いに親和性を発揮するところこそ、グループが高い評価を受けているポイントのひとつである。
その象徴が、今回のアルバムリード曲“Rosy”。1月7日公開の映画『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』日本語吹替版の主題歌に起用されている同楽曲だが、本稿で強調したいのは、これがタイアップとして薄弱な意味を持っていないということだ。
『スパイダーマン』の劇場初作品が公開された2002年。作品の影響をリアルタイムで受けた世代であるし、何より2021年12月オンエアのラジオ番組『SixTONESのオールナイトニッポンサタデースペシャル』(ニッポン放送)にて、今回のタイアップの旨を聞いて、全員が飛び上がったという裏話が明かされているためだ。
実際に、田中樹は『スパイダーマン』の属する『Marvel』シリーズの他作品も「履修済み」であるほか、京本大我に至ってはアニメ・特撮・カードゲームなど、あらゆる作品の「ガチオタ」ぶりが広く認知されており、自宅には『Marvel』シリーズのフィギュアもコレクションするほどだ。その溢れまくりの愛情は、前述のラジオ番組や、ファンクラブ向けの有料コンテンツにて、今回の劇場版の見どころや、「シリーズ物」だからこそ事前にチェックしておくべき『Marvel』作品を紹介するなど、精力的な広報活動に昇華されている。
これは単に仕事だからというだけでなく、純粋に作品が大好きだからやっているのだ。何かを好きな人の情報には、それ以上に熱量がこもるもの。それこそ時に、新たなファンの心を動かすきっかけになりえる。京本の広報活動をはじめ、そうした「好き」を原動力にした副産物的な周囲へのアピールも、今回のタイアップで生まれた大切な意味のひとつだろう。
そのほか、2021年12月にはJR渋谷駅 ハチ公口に、メンバーをアメコミタッチで描いた巨大看板を設置するなど、原作コミックスへのリスペクトにも抜け目がない。アメコミ特有の影を強調した絵柄で、周辺の掲示物との圧倒的なインパクトの差を誇り、通行客の人目を大いに惹いていたというエピソードも。そのデザインの実写版となる第2弾が、1月1日より新たに掲示されているため、こちらもぜひ現地に足を運んでみてほしいものだ。
随所に散りばめられた『スパイダーマン』作品へのリスペクト
さて、肝心の楽曲について。歌詞の側面では枚挙にいとまがないため要点のみ紹介していくが、その根幹にあるのは『スパイダーマン』とは切っても切れないテーマである「運命」。《分かち合いの果てに紡がれる糸》《見据えろよ ただ 摩天楼の針の間に》など、作品を連想させるワードを随所に盛り込みつつ、《薔薇色舞うバラバラと 色揺らぐ世界グラグラと》《感度のいい指先で裂く 狼狽た日の夢の翳りを/何度でも何番目でも 喜劇となるまで》あたりも、これまで歴代キャストが受け継いできた作品のバトンや、今作より本格導入となる「マルチバース」(いわゆる別世界線)の概念と重なってくる部分である。
またMVでは、手首から糸を出す振り付けを盛り込んだり、主人公のピーター・パーカーが遺伝子操作をされた蜘蛛に首を噛まれるシーンを、ジェシーが熱演でオマージュしたり。加えて、2021年末の音楽特番での歌唱時には、メンバーが歌い出しの一列に並ぶシーンで、『Marvel』登場ヒーローらの決めポーズを披露し、さらにはある時からフルブラックのセットアップにあわせて、深紅のシャツやグローブが衣装に加わるなど、作品に絡めた遊び心も伺える。日増しにメンバーがスパイダーマン化する姿を楽しめるのも、リリース期間のいまだからこそだ。
本稿中盤の「変化」という話題に立ち返ると、視点や光の当て方によって、さまざまな色合いを楽しませてくれる宝石があるように、SixTONESの表現もまた、彼らに関わる人々や作品が変わることで、その時々で異なるカラーを体現するものだ。
その根底にあるのは、尊敬の心なのかもしれない。ヒップホップなどの心の底から格好いいと思える音楽や、それを生み出すアーティスト。『スパイダーマン』などの憧れの作品。リスナーに「影響を与える側」であると同時に、自分たちもまた「影響を受ける側」として、「やってみたい」や「こうなりたい」といった理想へと近づき、そのエッセンスを取り入れていく。その結果として、彼らの輝きはますます増していくのだ。
こうした「変化」を望む姿勢は『CITY』の収録形態にも反映されているのだろう。そんなSixTONESらしい強みを2022年早々から示してくれたことに、心から感謝を示したい。
SixTONES – 2ndアルバム “CITY” nonSTop digeST
INFORMATION
SixTONES
CITY
2022年1月5日(水)
SixTONES
初回盤 A
¥3,600(+tax)
品番:Blu-ray SECJ-31~32
DVD SECJ-33~34
■BOX 仕様
CD: 14 曲(+Interlude)収録
DVD/BD
1. Rosy -Music Video-
2. Rosy -Music Video Making-
3. Rosy -Music Video Solo Movie-
4. Everlasting~Good Times -Live with Choir ver.-
初回盤 B
¥3,600(+tax)
品番:Blu-ray SECJ-35~36
DVD SECJ-37~38
■BOX 仕様
CD: 合計 15 曲(+Interlude)収録
DVD/BD
1. LOUDER (Jesse×Shintaro Morimoto) -Music Video-
2. 真っ赤な嘘 (Hokuto Matsumura×Yugo Kochi) -Music Video-
3. With The Flow (Taiga Kyomoto×Juri Tanaka) -Music Video-
通常盤
¥3,000(+tax)
品番:SECJ-39
■初回仕様 :
スリーブケース仕様 +20P フォトブック
CD: 合計 15 曲(+Interlude)収録