tofubeatsの名前を聞いて、皆さんはどういうイメージを持ちますか? 彼が世に出た10数年前なら「ゆとり世代の逆襲! インターネット・ネイティブな価値観のアンファンテリブルが神戸からやって来た! アーティスト自らiTunesで曲を配信するなんてそんなことできるんですねスゴイですね」だし、あるいは「DAOKOのカバーで有名な“水星”って今田耕司のサンプリングなんですよ! そういう、ヒップホップ? なんだけどチルくてエモくて、みたいな? ネオ・シティポップ? 80年代っぽくて90年代っぽい、とにかくいい感じの、カルチャーっぽい感じの、なんかそういうのの走りだよね~」みたいな若者も少なくないはず。更にこの数年なら「いや、トーフさんは凄いですよね。メジャーレコード会社にいながら自分で会社とか立ち上げたんでしょ? やっぱり今の時代ミュージシャンにもそういうビジネスパーソンとしての発想や視点が求められますよね。」ってな話も出てきましょう。果たしてどれが一番tofubeatsの実像に近いのでしょうか? あるいはこの3パターンの円がちょうど重なり合ってる部分にtofubeatsは立っているのでしょうか?

あっ、申し遅れました。ワタクシはKotetsu Shoichiroという者です。今月リリースされたtofubeatsの5枚目のアルバム『REFLECTION』収録の“Vibration feat. Kotetsu Shoichiro”という曲でラップで参加しております。曲作ってるくらいならtofubeatsが実際はどんな人間なのか多少は説明できるだろ、と思われるでしょうが、これがなかなか難しい。いつでもテキパキやり取りができて、気遣いのある、曲がったことはやらない快男児……と言い切ってもいいんですが、それだけではどうも据わりの悪い、謎めいた思考回路を持った不思議な人物でもあり……。

『REFLECTION』はアルバム全体を通じて「鏡/イメージ」といったテーマが描かれております。鏡に映った自分、鏡に映らない内面、自分が思う自分のイメージ、人から見た自分のイメージ……「小鉄さん、トーフさんの新作でインタビューしませんか」「えっ、でも私アルバムに参加してるんですけど」「アルバムに参加した、近い人から見てのtofubeats像みたいなのが聞きたいんですよね」ということで、これを機会にと「それなりに親しくとも説明し切れないtofubeatsのイメージと実像、そしてトーフさん自身は『どうありたい』のか?」をぶつけてみた。以下がその記録であります。

INTERVIEW:tofubeats

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「人から見た自分」

──アルバム完成おめでとうございます。今回のアルバムのテーマには「人から見た自分」がひとつあると。それはここ数年で、自分のイメージに関して、考えることがあったということですか?

これまでも理想と現実ってテーマだったと思うんですよ。それとは別で、音楽を作ってると自分のことが分かってくるという面白さがあって。今回、僕が突発性難聴になって、鏡を見て面白がれたとき、これまで並列で走らせていたものが一緒に考えられるなと思って。自分が思う自分と、他人から見た自分、理想と現実、そして音楽を作ると自分がわかること、そのことを全部、鏡をテコに合体できる。それ軸にこれまでのテーマをより深めていく。それで走り出しました。

──過去の作品からの流れからいうと、tofuさんのアルバムって1stと2nd、3rd以降って分かれたところがあったじゃないですか。1stの頃からそういうことを考えていたんですか?

ぜんぜん。1stを出したときは2ndが出るってマジで思ってなくて。2枚づつの契約なので、2ndが出せても3rdのときに4thが出ると思ってなかったんです。1stは背水の陣。3rdは3rdで好き勝手やってるから、どうなるかわかんなくて。そして今回は、1stと2nd、3rdと4thの良い部分を混ぜて、かつ『lost decade』のようなバランスにすることを意識してました。

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──『lost decade』の頃は「インターネット世代の価値観を代表するゆとり世代のアーティストが神戸から出てきた!」っていうtofuさんのイメージがあったと思うんですよ。で、tofuさんのイメージとして、インターネット世代の云々っていうのと“水星 feat.オノマトペ大臣”(以下、水星)に代表される、エモいネオシティポップ職人の走り。それとビジネスパーソン的なマインドを持ったミュージシャンの走りというか、この3つくらいがあると思って。その円の重なり合った場所にtofuさんがいるかというと、またちょっと違うじゃないですか。

そうなんですよね。そのときはあまり自分を客観的に見れてなかったし、「使えるものは使う」感覚があったと思うんです。でも『lost decade』のときにやりたかったこと自体は、いまになってみると間違ってなかったなって。あのときにやりたかったことを、いま大人になってしっかり噛み砕いてやりたかったんです。そのイメージはどれも正解だし、いまでもまだ当てはまる。社長になってよりビジネスパーソン度合いは強まり……それを押し出さないだけで、一緒ではある。そのウェイトの置き方が大人になって変わった。

それに10年後に曲がCMで使われてる。ただ内心“水星”は自分が手がけたものじゃない感覚もある。サンプリングの弾き直しだし、(オノマトペ大)大臣と作った曲なので。自分のやってた割合が少ない。それをあとからちゃんとドライブさせたのは自分ではあるんですけど、やっぱり手柄とは思ってなくて、ありがたい授かりものってイメージの方がデカいかもしれないです。「私が世話してます」くらいの距離感というか。

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──「若手のミュージシャンでビジネスライズされたやつがこんなに増えたのはtofuさんのせい」みたいなことを言われたらしいですね。

「そうなったのはtofubeatsの功罪だ」って言われたこともあって(笑)。否定したんですけど、あながち間違いでもないのかなって。自分でiTunesと契約して、TuneCoreができる前にそれをやってたり、最初はセルフマネジメントで打ち出してたわけじゃないですか。

──tofuさんだけではないですけど、世の中の流れ的にこの数年は増えてますよね。

「メルカリで転売して儲けるような方法」みたいに「こうすればチャートインする」「バイラルヒットする」みたいな考え方は分からなくもないですけどね。

──そういう話がTwitterとかでTipsみたいに回ってくると「なるほど」とか思ったりすることもあるんですけど、かと言ってそういうことばっかり気にするのもどうなんだろう? とも思いますね。

そうなんですよ。やっぱり音楽をやるって伝えたいなにか、メッセージとまでは言わないけど、バイブスとかムードがあるじゃないですか。それを伝えるために一生懸命やってるのに、ムードじゃなくて伝え方にばっかりフォーカスするのは違和感があります。

tofubeats – SMILE

トーフビーツの質実剛健

──他の仕事でガッツリビジネスをやって、それで稼いだお金を音楽に投資して……みたいな話なら、まだわかるんですけど。音楽の中でそれをやるっていうのが、まあ、自分は経済のこととか全然わからないんですけど、いまいちピンとこないんですよね。

そういった一面を払拭したいじゃないけど、ある意味、tofubeatsなりの質実剛健を出したいなっていうのが『REFLECTION』や『トーフビーツの難聴日記』であって。そのためにドキュメンタリーっぽい手法を取った、という経緯もあります。

──tofuさんなりの質実剛健はこのアルバムを通して伝わりそうですか?

アルバムだけでは微妙かもしれないです。本が出たことによって、少し伝わりやすくなった。あと、全体的に自分が実態以上に大きくみられてることをあえて抑制する試みがあるのかなと。長く続けるためにも嘘をつき続けるのは無理だと思うので、その工夫のひとつでもあります。音楽を続けていく上で、しっかりしたモードになりたい。ただ、当時やってたことも、ちゃんと頑張ってやってたのにって思ったりもしますよ。

──tofuさんを見てると、書類関係のこととかすごくテキパキやるなと思って。2年前にやってた、岡山のYEBISU YA PROでtofubeatsのこれまでを振り返る企画で最後の方、杉生さん(tofubeatsのマネージャー。CE$としてDJ、she luv itのベースとしても知られる)が「tofuは普通の会社勤めは無理やろうと俺はわかってたから」って言ってたのが印象に残ってまして。丹正さん(YEBISU YA PRO)は「そうはみえんよね。tofuくんなんかちゃんとやっていけるやろ」って言っていて、自分もそういうイメージがあったんですよ。普通の会社勤めはできないと言われるのはなぜなんですか?

人の言うことを聞けない。人に付いて、言われたことをただやるのがマジでできない。なぜ書類のことができるのかというと、自分のことだからできるんですよ。だからこの商売のやり方が向いてるんです。自分がどれだけ関わっているかがデカい。そう思えればなんでもできるので、会社の経営も、書類のこともできる。杉生さんはそのことをよくわかってると思います。

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コロナとのつきあいかた

──tofuさんはここ数年、屋外のイベントしか出てないじゃないですか。いま改めて、それはなぜそうしよう思ったんでしょうか?

コロナが蔓延し始めたときに、出ない判断をしました。そのあと、なあなあにすることはできたんですよ。でもせっかく広げない、自分がならないために決めたのに、明確に基準が出てないなかで、なんとなくでその判断を変えるのは良くないなと思ってて。STUTSさんのワンマンで1曲ゲストに出たとき以外、有観客のイベントは本当に一回も出てないんですよ。ボーダーを引いたから、それは守ろうと。理由としては単純にコロナになりたくないし、なによりもtofubeatsが出演したことで遊びに来たお客さんに感染が広まるのはよくないじゃないですか。自分は我慢できる立場にもいるので、明確な基準が出ない以上は、イベントに出ることはないと思います。

──そうなるとライブの本数は減っていきますが、それで苦しいということでもない?

最初の一年は苦しかったですし、会社の話をすると今年も赤字なんですけど、耐えられなくはない。自分が仕事を頑張ればいい。制作はちょっと増えました。イベント出演がなくてもやっていけないことはないというのが正直あって。でもみんながそうじゃないのもわかるので、それは結構複雑です。自分は断ってるけど、断れる立場だからだとも同時に思う。エッセンシャルワーカーの人たちがやめられないみたいな話で。ただ自分は出ないという選択をして、このインタビューを受けてる現時点ではそれを守ってる。

──ライブをいっぱい回って、たくさんシャツ売るのが活動の主体という人もかなりいますもんね。

お客さんも記憶あるかもしれないですけど、僕らは地方でも全然物販しないじゃないですか。物販の儲けを頼りにするようになったら、音楽を作るのが疎かになることを懸念してました。それが思わぬ強みになったなと、ちょっと思ったりもしました。ただ、シャツを売るのもやり方のひとつではありますからね。音楽を通じたお金をどこでもらうかという判断でもあるので、たとえばお客さんは全員サブスクで聴いてるけど、CD的なものとして買ってもらう、というのもぜんぜんありなので。だけど、僕らはCDやレコードを買ってもらいたい。それに、音楽とそのイメージの割合とかもあるじゃないですか。アパレルだとイメージの割合が大きくなってきますし。

tofubeats – CITY2CITY

「音楽を聴く」「読書」「日記を書く」

──音楽を売るっていうのは、一言ではまとめられないですよね。やはり音楽家として続けられるだけ続けたいなという感じですか?

主な仕事が音楽じゃなくなる可能性はあるけど、音楽を作ること自体は一生やりたいなって思います。一生続けるにはどうしたらいいか、その選択としてプロにもなれたし。ただ30歳すぎて、会社も建てて、音楽一本になっちゃってるんで、「どうすんの」「家族も得てしまった。もうこのまま後に引けない」って夜中に思ったりしますね。

──(笑)。音楽を続けていくにあたって、仕事でいろんな締め切りってあるじゃないですか。納期があることを前提に、何年も仕事が続いてる。それがなくなって、納期がない仕事になっても音楽を作って曲を出していけるかって考えたりしませんか? 僕は締め切りがない、誰からも頼まれず曲を作ったり文章を書いたりとか、ここ数年全然できなくなって。十代の頃は頼まれもしないのにいっぱい作ってたけど、今は締め切りがあるから作れる、みたいな。

たしかにそのパワーが弱まっているのは自分でも年々感じますけど、ただ日記はそれを強制するパワーがあるなと。自分は人よりもこの仕事を長く続けてきて、自分を飼い慣らす術はあると思っていて。無名時代に音楽を作ってるとき、定期的に公開をしたいと思ったら、自分にやらせなきゃいけないじゃないですか。あと、出さないと何も変わらない。自分で悩んで手元でこねくり回してるうちはゼロと一緒。プロになってから十分勉強したので、もしいまプロを辞めて放り出されても、音楽作ることはできるだろうなと思います。もうちょっとルーズな活動になるけど、だからといって出すことを止めるのは、今の時点ではないかなと。

──締切がなくても自発的に出していくための心構えについてもうすこし教えてもらえますか?

むずかしいな……。音楽作るとき、なんらかのゴールがないと走り出せないじゃないですか。そのときに何が大事かというと、攪拌作業です。かきまぜること。自分の場合は音楽を聴くのが一番ですけど、映画とか劇場にいったりして、影響を受ける。そうすると感想が出てくるじゃないですか。そうして、自分から何かを出すこと。それをやる方法として、自分には「音楽を聴く」「読書」「日記を書く」の3つがメインにあって。それをやると自分の立ち位置が見えてきて、向かうべきコースがちょっとわかる。

それに音楽を聴くだけだったら記録に残らないですけど、日記だったら記憶に残る。そのときに感じていた差分もちょうど残る。そうなると、音楽を作るモードに近づいていくというか。自分が音楽を作ることって、結構日記を書くのにも近い行為だと思ってます。事件が起こって書きたいことを書く、逆もしかりで事件のない日のことを事件っぽく取り出して書くみたいな。それは自分が音楽を作るときの感覚に近いので、それで肩をあたためて音楽を作る。逆もあって、音楽を作ってから日記を書くこともあるんですけど。そうしてマインドをもっていく。正直かなり長い期間音楽制作を続けてるので、一ヶ月やらないことがあっても、そのあと再び作ろうと思ったらできますけどね。そこがDTMのいいところじゃないですか。感覚は古びるけど、技術は古びない。

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人生を記録する

──DTMで言うと、tofuさんは今作も自身でミックスもしてるし、ミックスの講習動画なんかも公開されましたよね。細野晴臣さんは「ミックスは社会性」と言っていて、つまり作曲や演奏はただただ楽しんでやっているけど、それを商品として流通させるために音を整理する作業=ミックスになると大変なんだ、と。ミックスやマスタリングの作業もクリエイティブの延長として捉えてますか? 制作では、締切なくやってる人は、そこで一番止まるというか。

そうですね。ただマスタリングの方が社会性で、ミックスは創作のうちのひとつだと思ってます。なぜかというと、作曲するのが編集だと思ってるので、ミックスをやらないのは作曲をやってないのと一緒、という考えも正直あって。だからできる限りやりたいですね。

あと、自分が作品を出さないとだれも聴いてくれないし、見てくれない、忘れられる。リリックでも当時言ってたんですけど、神戸にいて自分の音楽を聴いてもらいたいとか、自分と同じ趣味の人を見つけたいときに、音楽を作って出すしか方法がなかったんで、そうなると出すしかない。出すことが社会性だったので、出さないと社会が始まらないわけですよ。自分が作って聴いて満足して終われる人間だったらと良かったですけど、当時はそうじゃなかったし、それで広がるってことがわかっちゃったんで、それは絶大なモチベーションになった。自分にとっての社会につながる手段が音楽である以上、それは続いていくと思いますね。あと、これまでの人生を音楽を作ることで記録してきているので、これを途絶えさせるのがもったいないと本当に思う。

tofubeats – PEAK TIME

──それにここまで続けてしまった日記があるという。

それを書くのが面白くて続けてることもあるので、そういう意味では、やめてもやるタイプのおじさんかなって思うんですよ。これですっぱりやめて空手とかやったら面白いですけどね。

──(笑)。ミックスの話でもう一個聞きたくて。自分の声を録音して聴いてみたら、絶対違和感を覚えるじゃないですか。tofuさんも、自分の声に対しては色々思う所あると過去の発言から察せられるんですが(笑) 、ミックスを自分でやってたら、自分の声を聞かなくちゃいけないじゃないですか。それってしんどくないじゃないですか?

並々ならぬコンプレックスを抱えてますよ。しんどいですけど、オートチューンがそれを可能にしてます。いまでも生声の曲はやりたくないですし、制作も生声で一切やってなくて、モニターもオートチューンで。制作時から完成まで自分の生の声を聞くことないです。

──DTMで自分の声を録ってる人は、そこで嫌になって辞めてる人も多そうですけどね。

でも、若い子たちをみてると、自撮りとかもそうなんですけど、自我の取り扱いに慣れてる印象があって。そういうのは自分と違って羨ましく思いますね。しかも僕がオートチューンをかけるみたいに、エフェクトをかけることにも抵抗がないというか。

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“東京っていい街だな“

──たしかに。それは今回のアルバムのテーマにもなっている、対外的なイメージにもつながってきますね……(笑)。テーマがテーマだけに、今回のアルバムは歌詞も意味深で面白い内容の曲が多いと思うんです。自分が特に気になったのはアルバムの最後の曲”Mirai”で《いい大人になっても思い出してる校舎》っていう部分なんです。なんというか、今までのtofuさんの作風からすると「校舎」っていうのが意外な単語のチョイスだなーと思って。もちろん3rd以降の、個人的・内面的な部分も隠さず出していく作風を経てのことなんでしょうけど、なぜ「校舎」なんでしょうか?

むずかしいな……。いつまでたっても、高校の話しかしない人っているじゃないですか。でも自分たちは音楽を作って新しい話をするのが普通。そうじゃない人、会ったらいつも昔の話をする人がいる、そういうことをすごく考えてて。学生気分って一番言われる仕事だと思うんですけど、むしろサラリーマンとかになった方が同窓会性は高まっていくのかなって。それで「校舎」という言葉が唐突に出てきたんですよね。韻のあやとはいえ、言わなそうな単語ではありますけど。

──僕もFacebookでたまに自分の仕事の告知とか投稿するんですけど、高校のクラス会とか行くと「お前のFacebook何書いてるか意味がわからない」って言われます(笑)。皆からしたら、同級生の赤ちゃんの成長とか見るためにSNSやってるのに、なんか一人だけ「リリックビデオ配信しております!」とか訳わかんないこと書いてるっていう。

「校舎」についても、それをかなり思って。30歳すぎても僕らみたいに自分のやるべきこと、やりたいことを進めてる層と、家庭があって次の世代にバトンを渡して行こうという層がめっちゃ割れてくるじゃないですか。僕は東京に出てきたので一瞬それが薄まったんですけど、神戸いた最後の方とかはすごい感じてました。

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──つぎに僕が参加した曲“VIBRATION feat. Kotetsu Shoichiro”の話を聞こうかなと。自分から聞くのもお恥ずかしい話なんですけど、なんでアルバムに誘ってくれたんですか(笑)?

シンプルにKotetsuさんを呼びたいなと。〈HIHATT〉でKotetsuさんのEP(Ge’ Down E.P.)を出したのもそうなんですけど、呼びたいありきでした。それが正直な経緯ですね。Neibissもユウジさん(UG Noodle)も、自分が過小評価されてるなってマジで思う人を呼んでるんです。あと“VIBRATION”に関しては、ECDさんの描写とかもそうですけど、この曲の意図を掴める人間がマジでKotetsuさんしか思い浮かばなかったんです。

──tofuさんが書いて送って来たあの曲のフックに《Babyちゃん》ってフレーズが出てきて、これって“ECDの東京っていい街だなあ”のリリックに出てくる《Babyちゃん》なのかなーって思って。その補足というか連想みたいな形で、自分のバースでECDさんのリリックを引用したんですけど、ヤマが当たりましたね。

今回の制作のとき、めちゃくちゃ『ホームシック』(1995年に発表されたECDの3rdアルバム)を聴いてたんです。コロナで自分がマジで好きだったものに立ち返っていったことが大きくて、マシンドラム(Machinedrum)やエル・ギンチョ(El Guincho)のプロデュース作とか、ハーバート(HERBERT)、ECD……あとPIZZICATO FIVEの配信が出たのもあって聴き込んでいて。そして作詞が本当にいいと思う人とやりたかったのが“VIBRATION”だったので、それで順当にKotetsuさん。実際、一発で意図をつかんでくれた感じもあってので、ありがたかったです。それと、Kotetsuさんは、これが出る前にT-STONEさんの曲(“Let’s Get Eat”。–ビルボードチャートTikTok部門1位(2021/12/5付)を獲得した)も出ているので、「あれKotetsuさんがやったんだ」って示せるというか。

──あれもあんまり、実感ないんですよね。自分がもっと若くて、TikTokとかYouTuberに詳しかったら、やったぜって感じかも知れないけど。T-STONEは喜んでたし、友達とかから「凄いじゃん」って言われたのは嬉しかったですが。

それが言えるだけで全然違うというか。自分が神戸にいたときにむずかゆかった問題のひとつとして、“水星”を出しただけじゃみんながみんな良いって言ってくれるわけじゃなくて、それが東京や大阪、京都で評価されてから、神戸に戻ってくることをめっちゃ感じてて。それこそNeibissもユウジさんもあんなに良いのに、〈RCSLUM〉が良さを発見して〈RC〉からリリースしてたり。それは神戸で感じていた問題だと思ってて、自分は瀬戸内海が地元であり東京に住んでいるという特性があるので、その辺の人に声かけるのは意味があると。それが対外的な意味としてあり、そのなかで自分が単純に好きな人を呼んでこの客演のラインナップになりました。

それと、ピクニックディスコ(Kotetsuのバンド。2017年にリリースしたLADYはtofubeatsがリミックスしている)の面白さを世間に伝えたい気持ちが俺にはあるというか。あれとかこそ高松じゃないと成立しない、し得なかった面白さだと思ってて。あとはKotetsuさんという立ち位置、やり方に、神戸にいるときの自分と似てるけどちょっと違う……全部を自分でやってる人の独特の感じが漂っていることですね。

tofubeats – don’t like u feat. Neibiss

tofubeats – REFLECTION feat. 中村佳穂

事実と噂

──それ故に、謎な人みたいな感じに見えるだろうなとか自分で思うんですけど(笑)。ハウスも作ってトラップも作って、あと映像も作って、文章も書いてとか、一言で言えないことやってると……地元の若いB-BOYとかからも「結局『何』の人なんですか?」みたいに未だに言われますね。B-BOYじゃなくても、普段会う人とか、親戚とか……。

それがさっき言った東京に跳ね返すみたいな話で、自分がぜんぜん売れてないときに小泉今日子さんのリミックスのオファーがきて。CD-Rとかにしか入らない特典なんですけど、でも「こういうこと一発やるだけで銀行の人とかは全然対応変わるから」って言われたんですよ。これはいい意味での肩書の使い方というか。“水星”のときも、良くも悪くも、この1曲があるだけで、人の目が変わるなって。あとは音楽を聴いてる人も、その1曲がないから聴かれてないことが全然あると思うんですよ。せっかく良いのに、良いって言われてないから、自分で判断できないから聴かないみたいな。自分でもしゃくな話だとは思うんですけど、多少、そういうのに貢献できるんじゃないかって。なんでこういうことをしないと世間に聞かれないんだっていう俺なりのアクションというか。メジャーにいる自分をみんなに利用してもらいたいみたいな気持ちは正直ちょっとあります。それで自分もいい曲できるなら、御の字やなって。

──世間的な信頼、みたいなことですよね。それが何をもって生まれるのかは結構謎ですけど。

事実と噂っていうのがあると思っていて、事実として今回呼んでるミュージシャンはみんなめっちゃカッコいいけど、噂の部分で自分は多少貢献できるかなって。tofubeatsと一緒にやってることが、噂の部分として機能してくれるんじゃないかっていう。

──アルバムも出て、本も出てっていうタイミングですが、予定というか、今後の展望は考えていますか?

これをしっかり続けていくことになっちゃうんですよね。その時々の形でしっかりやっていかないと、最終的にその差を見て自分が楽しめないので、記録としてのアルバム作りを手を抜かずにやっていく。過去の力もどんどん増えていくし、それが並んでいけばいくほど面白くなっていくと思うので。あとはDJをやってなさすぎて何にもできなくなってないか不安なので、DJは早く復帰したいですね。やってて面白いんで。DJは一番難しいですからね。できてよかったなんて日はマジでないですから。けっこうやってた年でも、年間で「今日よかったな」って日が1日あるかないかですよ。うまく行ったときも、理由がよくわからないからめっちゃ怖い。大体もやっとして終わるのに、でもなんか知らんけどやるみたいな。

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Interview, Text by Kotetsu Shoichiro
Photo by Naoki Usuda

PROFILE

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tofubeats

1990年生まれ、神戸在住のトラックメイカー/DJ。学生時代からさまざまなアーティストのプロデュースや楽曲提供、楽曲のリミックスを行う。2013年4月に「水星 feat.オノマトペ大臣」を収録した自主制作アルバム「lost decade」を発売。同年11月には森高千里らをゲストボーカルに迎えた「Don’t Stop The Music」でワーナーミュージック・ジャパン内のレーベルunBORDEからメジャーデビュー。2014年10月にメジャー1stアルバム「First Album」をリリースし、以降もコンスタントに作品を発表している。2022年5月には約4年ぶりとなるニューアルバム「REFLECTION」と、初の書籍「トーフビーツの難聴日記」を同時に発表した。
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INFORMATION

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REFLECTION

tofubeats
2022.05.18(水)
1. Mirror
2. PEAK TIME
3. Let Me Be
4. Emotional Bias
5. SMILE
6. don’t like u feat. Neibiss
7. 恋とミサイル feat. UG Noodle
8. Afterimage
9. Solitaire
10. VIBRATION feat. Kotetsu Shoichiro
11. Not for you
12. CITY2CITY
13. SOMEBODY TORE MY P
14. Okay!
15. REFLECTION feat. 中村佳穂
16. Mirai

初回限定盤/WPCL-13374 ¥3,800(税込¥4,180)
通常盤/WPCL-13375 ¥2,800(税込¥3,080)

初回限定盤は、人気イラストレーター山根慶丈がこれまで描いてきたtofubeatsのアートワークを12枚のポストカードにまとめたスペシャルパッケージ。
各店舗でCD購入者へのオリジナル特典も予約受付中。

■汎用特典:オリジナルステッカー
■Amazon:メガジャケ
■楽天ブックス:缶バッジ
■セブンネット:ミニスマホスタンドキーホルダー

詳細はこちら

tofubeatsが対峙するイメージと実像──『REFLECTION』で刻む人生の記録 interview220525-tofubeats-2

tofubeats ”REFLECTION” online release party 2022.05.26

2022.05.26(木)
OPEN 20:30/START 21:00
出演者:tofubeats/Neibiss/UG Noodle/Kotetsu Shoichiro/中村佳穂
VJ:杉山峻輔
Visual & Lighting:huez

詳細はこちら