「国際アンバサダーのように私自身が活動することで、国際的なエレクトロニック・ミュージックのローカルコミュニティをさらに広げられたら」。
これは先日開催された<PRADA EXTENDS TOKYO>にてキュレーターを務めたリッチー・ホウティン(Richie Hawtin)の言葉だ。
2021年11月にロンドンでスタートしたシリーズ<PRADA EXTENDS>が2022年7月21日、東京で開催を迎えた。今回は、プラダのコラボレーターである“テクノの皇帝”ことリッチー・ホウティンのキュレーションにより実施され、トークとパーティーの2つのイベントで構成。1つ目のトークは渋谷のプラダ MIYASHITA PARK店で、その後、日本最大級のギャラリーコンプレックスでアートと音楽の拠点である寺田倉庫でパーティーが開催された。今回はこの刺激的な一夜のレポートをお届けする。
<PRADA EXTENDS TOKYO>イベントレポート
<PRADA EXTENDS TOKYO>の幕を開けるプラダ MIYASHITA PARK店でのトークセッションには、本イベントの企画に携わったリッチーとともにDOMMUNE主宰の宇川直宏氏が登壇。その様子はDOMMUNEでも生配信された(アーカイブも配信中)。宇川氏からの熱量ある問いかけに真摯に向き合うリッチーは、本イベントの核となる自身の考えについてこう語っている。
「<PRADA EXTENDS>はコロナ禍以降の今の状況のなかで、人々を新たに繋ぎ合う空間です。これまでに出会うことのなかった人同士がお互いをインスパイアし、刺激を与え合いながらアイデアを交換し合うことで、ローカルシーンの明るい未来を作っていくためのイベントなのです。」
SUPER DOMMUNE 2022/07/21 PRADA「PRADA EXTENDS TOKYO」
RICHIE HAWTIN(aka Plastikman)x 宇川直宏(DOMMUNE)
テートモダンの新館「The Tanks(ザ タンクス)」で開催された第1弾<PRADA EXTENDS LONDON>でも、HAAi x Hanzo Init Studio、OK Williams x L’Aubaine、Overmono x Rebel Overlay、そしてリッチー自身がコラボしたJoëlle Snaithと、イギリス・ロンドンを拠点に活動するアーティストを招聘していたが、今回の<PRADA EXTENDS TOKYO>でもアジア・日本国内および東京で活躍するアーティストたちをキュレーション。
韓国のプロデューサーおよびビートメーカー、アーティストのLionclad、東京を拠点とするアーティストmachina、エレクトロニックミュージシャンでプロデューサーのYuri Uranoの3名が、それぞれKen-Ichi KAWAMURA、Shohei Fujimoto、Manami Sakamotoといった3名のビジュアルアーティストとペアを組んでパフォーマンスを披露し、リッチー・ホウティンはKaoru Tanaka(パフォーマンスはManami Sakamoto)とともに、約1時間20分におよぶDJセットを繰り広げた。
4組によるパフォーマンスもさることながら、当日一際目を引いたのはアーティストたちの演出をじっと見つめるリッチーの姿だ。最も偉大なテクノ・ミュージシャンのひとりとして世界中から尊敬の眼差しを向けられるリッチーが、招いたアーティストたちに対して常に礼を尽くして接していた。プラダのデザイナーであり、リッチーの20年来の友人でもあるラフ・シモンズは、そのリッチーの姿勢にこそ惹きつけられているのかもしれない。<PRADA EXTENDS TOKYO>はそれを肌で実感できるイベントだったように思う。
リッチー・ホウティンの視点で撮影されたドキュメンタリーが、8月初旬プラダの公式YouTubeチャンネルとprada.comで公開される予定だ。こちらもぜひ楽しみにしてほしい。