10月3日に香港の音楽プラットフォームZenegeistが1枚の画像を投稿し、界隈が湧いた。「インディーキッズ スターターパック(Indie仔女 Starter Pack)」というタイトルのその投稿は「インディーズ音楽初心者が最初にチェックすべき媒体」という主旨で音楽雑誌、音楽レーベル、レコードショップ、音楽アワード、動画プラットフォームなどあわせて約40の媒体がフィーチャーされていた。

ここでマーキュリー賞などともに名が挙がったのが、台湾政府文化部主催の音楽賞<金音創作獎 Golden Indie Melody Awards(以下、GIMA)>。GIMAは、初開催の2010年以来、オリジナリティ溢れるアーティストやアルバムを表彰し、応援してきた。今年で14回目の開催を迎え、授与式は10月28日に行われる。また関連イベントとしてアジアの才能を集めた音楽フェスティバル<Asia Rolling Music Festival(以下、ARF)>も10月23日から10月27日まで開催される。ARFは、Sunset RollercoasterのKuoがキュレーションをつとめる。

つまり、行政主催の音楽賞ではあるが、決して“オワコン”ではないというわけだ。

GIMAについてはこれまでQeticでも紹介してきたが、今年も海外向けに配信があるということで楽しみ方を紹介したい。この記事が「金音獎スターターパック」になれば幸いだ。

Step1 知る

今回はじめてGIMAを知る方もいると思うので、まずは部門の概要をご紹介。今年のGIMAは全部で23部門で構成され、計3,634作品の応募から102作が選ばれ、審査員賞と特別貢献賞を除いた21部門で最終選考が行われる。

トコトン楽しむ台湾インディーズ音楽の祭典<金音獎2023> column231024-gima-2re

GIMAは第11回からアジアのアーティストを表彰する部門を設けている、今年の最優秀アジアクリエイティブアーティスト賞にはアジアの幅広い地域から66作品の応募があり、日本からはミニマル×ジャズなど新しい音楽アプローチで国内評価を上げる東京塩麴『GoodBye』が最終候補に選出。日本代表としてぜひ応援したい。

東京塩麹 “Me” Music Video

ちなみにアルバムと楽曲を両方表彰するこの部門構成は、台湾政府が主催し歴史あるポップソングの式典<金曲賞>の影響と考えられる。<金曲賞>は毎年春に開催されているので、ぜひそちらもチェックしていただきたい。

楽しみ方2 聞いてみる

上記の部門の順に、Spotifyに音源があるアーティストから1曲ずつピックアップしプレイリストを作成した。好きなジャンルからぜひ聞いていってみてほしい。

日本視点で最も気になるのは、最優秀オルタナティブポップソング賞だろう。11月3日に渋谷で初開催されるアジア音楽サーキットライブの<BiKN shibuya 2023>にも出演するEnno Cheng「金黃色的」Sunset Rollercoaster「Jellyfish(feat. Michael Seyer)」および今年来日したThe Chairsと百合花の林奕碩による「Αφροδίτη」といった大御所による作品が、ミドルキャリアの李權哲「只希望你在我身邊」A_Root 同根生「八寶公主 Princess Bubble」を迎え撃つという構図。誰が受賞してもおかしくはないものだ。

R&B部門も豊作だ。台湾のR&Bアーティストは、西洋発の文脈を汲みながら独自の味付けで切磋琢磨する印象がある。今年は9m88壞特 ?teaDAN 薛詒丹BRADD鶴 The Craneによる高品質サウンドが並んでいるので、ぜひ通して聴いて欲しい。中でも、新人賞など5部門で同時ノミネートされている鶴 The Craneの動きには要注目。

複数部門のノミネートが多いのが今回の特徴。I Mean Usのメインボーカルとして何度も来日を果たし、国際的に精力的に発信しているMANDARKは『BADA88』を引っ提げて新人賞など3部門でノミネート。

「台湾内で発表された作品」であれば、外国籍のアーティストでも選考対象となることもGIMAの特徴だ。台湾を拠点に活動するインド音楽家の若池 敏弘がプロデュースしたアルバム『𨑨迌』はフォークアルバム賞にノミネート。また本作品に参加した二胡奏者の鍾於叡とともに若池氏もエスラジ・タブラ奏者としてプレイヤー賞の候補となった。

来日ツアーを頻繁に行う台湾随一のジャズサックス奏者・謝明諺(シェ・ミンイェン、通称テリー)と鄭各均(ソニック・デッドホース)によるユニット・非/密閉空間 Non-Confined Spaceがリリースした『後設時空共構 Meta, Construct within’ Spaces』は、ジャズアルバム賞、ジャズソング賞にノミネートされた他、電子音楽ソング賞で2曲同時にノミネートされた。

ちなみに謝明諺自身はプレイヤー賞の常連で、今年は鄭各均とともにノミネートされている。第10回、11回以来の受賞となるか、そして鄭各均とW受賞する可能性にも注目だ。謝明諺が台湾ジャズの歴史を紹介するインタビューがQeticで公開されているので是非お読みいただきたい。

今年9月にQeticでロングインタビューを公開したMong Tongの『Tao Fire』は審査員賞に名が挙がった。現地メディア・Blow Musicによると、審査委員長のルー・ルーミン氏は、「実験的な音楽精神と東南アジアの音楽性の融合が、多くの審査員の支持を得た」と語った。洪兄弟のお父さんも喜んでいるということだ。音楽活動に対して家族の理解・応援が得られることも、政府主催の音楽賞ならではだろう。

楽しみ方3 リアタイする

台湾の配信サイトに加え、日本人向けにSPACE SHOWER TVのYouTubeチャンネルでも生配信企画が今年も実施される予定だ。

金音創作奨-Golden Indie Music Awards Live Streaming for JAPAN
[配信日時]10月28日(土)19:50頃~
[配信URL]https://www.youtube.com/live/JvxqTlQq-Dc?si=3qxrYX7LJTQ7Ah7Y

なお、最初から最後まで通して見ると約5時間にも及ぶ。配信を見る際は、台湾のドリンクやおつまみ、おやつなどを準備するのもおすすめ。

秋の夜長を彩るGIMAは、日本の音楽好きにとっても必聴のイベントだ。多くのジャンルやアーティストがスポットライトを浴びる網羅性は「これまで台湾の音楽を聴いてこなかったんだよね」という人にも有益なものになるだろう。音楽でアジアの国同士がつながるビッグウェーブを満喫できるのでぜひ!

INFORMATION

トコトン楽しむ台湾インディーズ音楽の祭典<金音獎2023> column231024-gima-1

2023 Asia Rolling Music Festival
2023 Asia Rolling Music Festival
日程:10月23日(火)~ 10月27日(金)
会場:CORNER MAX 大角落多功能展演館
キュレーター: 國國(曾國宏) Kuo from Sunset Rollercoaster
出演者:
Kamaal Williams(UK)、Michael Seye(US)、Room 307(HK)、LINION(TW)、雷擎 L8ching
(TW)、GIGO(TW)、イルカポリス 海豚刑警(TW)、Leo37+Robot Swing(TW)、Sonia Calico(TW)
 
2023 Golden Indie Music Awards Ceremony 金音創作獎
会場:Taipei Music Center Performance Hall 台北流行音楽中心
日時:10月28日(土)
配信サイト:
Official YouTube
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