地元は出ずに地元を出る

地元である三重県を拠点に、精力的な活動で全国各地にその名を広げる2人のMCがいる。

2023年4月にフォース・アルバム『MONKEY OFF MY BACK』をリリースした三重県鈴鹿市在住のMC、YUKSTA-ILL。本作品のリリースと同時に自身のレーベルである〈WAVELENGTH PLANT〉を設立した。アルバム収録曲”BLOOD, SWEAT & TEARS”では、山口県出身のMC、BUPPONを客演に招き、冒頭に引用したリリックのような、地方での活動で培われた美学を色濃く描いている。

また同じく、三重県四日市市を拠点に活動し、これまでに呂布カルマ・鷹の目が主宰するレーベル〈JET CITY PEOPLE〉からアルバムを2枚リリースしているMC、JEVA。直近ではその活動の幅を広げ、映画『幸せになろうよ』(2023)の脚本・主演を務めた。彼が地元に根を張って続けてきた活動の成果が実り、tha BOSS(THA BLUE HERB)によるセカンド・アルバム『IN THE NAME OF HIPHOP II』(2023)への客演参加を果たした。

前例のない道を進む地方での活動だからこそ生まれる、血と汗と涙。”大都会とは確実に距離のある”三重県での生活や街の雰囲気、音楽シーンの空気感は一体どのようなものなのか。今回はこの2MCが三重県から作品を発信することの矜持に迫るべく、同じく三重県出身で2人とも親交が深い<CLUTCH TIMES>主宰のNGRがインタビュアーを務めた。なお、取材は三重県鈴鹿市のライブハウス、鈴鹿ANSWERで行った。

対談:
YUKSTA-ILL × JEVA

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──まずはお互いの関係性について教えてください。出会いのエピソードや印象に残る思い出とかあればお聞きしたいです。

JEVA 俺が最初にYUKさん(YUKSTA-ILL)の存在自体を知ったのは18歳頃、桑名のEXODUSというクラブが初対面でした。YUKさんはその時活動してたB-ZIKでライブしていました。俺はまだそのときラップ自体はやってなかったと思います。うちの兄ちゃんがDJをやっていて、YUKさんのクルーと同世代で先にそこと繋がった感じでしたね。兄ちゃんのイベントに遊びに行ったりするなかで、B-ZIKのLIVEを見たと思います。

YUKSTA-ILL 確かにEXODUSでLIVEやっとったね。でも、EXODUSでは数えるぐらいしかLIVEしたことない気がする。その頃、JEVAたちは<浸蝕>ってイベントやってたよね? アンダーグラウンドの中のアンダーグラウンドってイメージだったけど。

JEVA やってましたね、別に僕らはそんなアンダーグラウンドな意識ではなかったんですけど。

YUKSTA-ILL 本人たち的には多分そうなんだけど、あまりにもドープすぎる印象で当時は踏み込みづらそうな雰囲気はあったかもね。あと、UMB2007名古屋予選のベスト8で呂布カルマと当たって、延長して勝って、そのまま優勝したんやけど、そのときの陪審員の中にJEVAがいて。

JEVA その頃、話したことはそんなになかったですね。遠目でいつも見る人やみたいな感じで。そのときはYUKさんがどれくらいのキャリアがある人とかもあんまりよく知らなくて、鈴鹿のラッパーの人やみたいな認識だったかな。

YUKSTA-ILL そのときはもうラップしとった?

JEVA ラップは一応してました。名古屋でちょっとレギュラーのイベントをやらせてもらうようになったぐらいの時ですね。

YUKSTA-ILL で、そのもうちょっと後ぐらいにJEVA主催のイベントに俺を呼んでくれたやんね?YAMAZINさんと呂布カルマと一緒に。

JEVA そうっすね、SUBWAY(※SUBWAYBAR。三重県四日市市にあるヴェニュー)でやりましたね。

YUKSTA-ILL JEVAの昔話ってなると、なかなか酷いエピソードしか出てこんからな。酒に飲まれて四日市の藻屑と化したり。藻屑率高かったよね?

JEVA まぁそうっすね、よく潰れてましたね。YUKさんのスニーカーをずっと踏みながら喋ってるっていう(笑)。

YUKSTA-ILL そうそうそう(笑)。今はもうちょっと周りの目もあるから、責任感も出てきたよね。

JEVA 多少、昔よりは気を張るようになったと思いますね。けど、YUKさんと本格的に絡みが増えだしたのは、やっぱり<AJP(Amazon Jungle Paradise)>(※毎月第4火曜日にSUBWAYで開催されているOPEN MICイベント)をやり始めてからくらいかな。いまでも先輩として挨拶するし喋ったりするけど、もう一歩踏み込んだ関係になるのは一緒にイベントに関わってやるようになってから。あれは何年前になるんだろう?

YUKSTA-ILL そうやね、<AJP>が大きいきっかけかもね。確か『WHO WANNA RAP?』(2015)を出した後だから、2016年くらいかな。みんな巻き込んでやろうってなって、それが今も一緒にやってる面子だったりするんだけど。

JEVA そこから今の関係性が生まれていった感じがしますね。その<AJP>がきっかけになって、そのあと週末に<FIRST TAKE>というイベントも始める流れに繋がっていったり。

YUKSTA-ILL そうやね。<AJP>の面子の中で「週末の金曜日になんかイベントやろうよ」ってなって始まったのが<FIRST TAKE>。俺とJEVA、DJ 2SHAN、GINMENが中心になって5〜6年やってきて、今はちょっと形変わって<JUNGLE JUICE>というイベントになってる。

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YUKSTA-ILL
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JEVA

──今は協力し合ってイベントを主催している関係性であり、ラッパーとしてはソロでそれぞれの活動をしていると思います。その中でお二人はこれまでのお互いの活動をどのように見ていましたか?

JEVA 俺は昔からYUKさんの音源を聞いてて、ずっとかっこいい先輩と思って見てます。自分が活動を始めた初期は、現在のスタイルとは違ったので、YUKさんみたいな人たちからは、同じ目線で見てもらえてるかどうかわからず、「色物に思われてるかな」みたいな。これまでYUKさんが出してきた作品は俺らがリスナーとして格好良いと思って聴いているアーティストだったり、どうやったらこんな人と繋がれるんだろうみたいなアーティストたちと客演やビート提供で繋がってて。YUKさんが全国各地にLIVEしに行ってるのは知ってたけど、そういう人たちと作品でもガンガン一緒にやってるのが衝撃的だったんですよね。

例えば『TOKYO ILL METHOD』(2013)は三重に住んでるラッパーが東京の人たちだけと組んでEP作るって、その売り出し方もすごいと思ったし、『QUESTIONABLE THOUGHT』(2011)では京都のBONG BROSが関わってたりとか。当時の俺らは身近な人だけで作ってたから、なおさらすごいと思ってた。

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YUKSTA-ILL なるほどね。俺は両方ともすごくHIPHOP的だと思ってて。JEVAにとってのDJ 2SHANみたいに、身近なやつらと制作して名を広げていくっていうのもすごくHIPHOPだと思う。けど、例えば当時ジェイダキス(Jadakiss)のアルバムが出た時にトラックリストを見て「うわ!こいつ入ってる!」とか、そういうのもすげーHIPHOPだと思ってて。

JEVA クレジットを見て興奮するやつですよね。身近な人のなかでは名古屋でもあまりそういうことができる人が多くなかったので、凄さを感じていました。

YUKSTA-ILL 自分も「この作品にこいつ入ってんの!?」みたいに、そういうのを見てアがってたから、意識的にやってたところはある。

JEVA あと、YUKさんとの話ですごく印象に残っていることがあって。俺が1stアルバムを出してすぐのタイミングで、初めて東京にLIVEしに行ったとき、たまたま同じ日にYUKさんもライブがあった。その日は俺の出てたイベントがYUKさんのLIVEより少し早く終わる予定で、それから向かってもYUKさんのLIVEは終わってる時間だったけど、タイムテーブルが押してたみたいで着いたらちょうどYUKさんがライブしてて。

YUKSTA-ILL 多分<NEW DECADE ZZ>だったかな?

JEVA そうです。そのときに俺は初めて東京に呼ばれて、ひいひい言いながらライブやってたけど、YUKさんがでかいステージですごいメンツのなかでバッチリかましてて、「地元の先輩、東京でも格好良いわー」みたいにブチアガっちゃって。あらためて、東京でYUKさんのデカさを実感できて嬉しかったというか、誇らしくて自然と笑顔になるみたいな。

YUKSTA-ILL – DRASTIC REMEDY @ NEW DECADE ZZ

──三重出身の身としてはその気持ちはすごくわかります。

YUKSTA-ILL JEVAはJCP(〈JET CITY PEOPLE〉)でも活動してるし、最初は三重で活動してるやつって認識はあったけど、方向性が違うと思ってた。でも、三重でパーティーをやることになった時、絶対数は少ないけど、ずっと活動してきてるやつらはいるっていう状況で、周りを見たときにまずJEVAがいた。自分には全然ラップできないような内容とか、絶対にない切り口でラップしてて「なんでもラップできるな」って思わせてくれたし、JEVAの音源を聴くとやっぱり芯がしっかりしてるというか、ちゃんと自分のスタンスを持ってると思う。

──これまでの話のなかで、三重で活動しているアーティストやイベント、クラブなどの名前が色々出てきましたが、プレーヤーとしてお二人自身は三重県にはどのような音楽シーンがあると感じますか?

JEVA 同じエリアの中に色んな人が混ざり合って生態系がある感じ。すごくアマゾンっぽく、ジャングルっぽくもあり、それがパラダイスっぽく思えてて。ある意味イベント名の「Amazon Jungle Paradise」が成立してるような気がするんですよね。

YUKSTA-ILL そのイベント名に関しては、イベントやるって決まった帰り道に「イベントやるってなったけどどうする?」ってGINMENと話してるときに「この名前で良くないっすか?」って彼が発案してくれた。基本色んなジャンルの人が混ざり合って遊んでるから、それが三重の音楽シーンの一つの長所なんだと思う。それこそ、バンド界隈の人も自分たちのイベントに遊びに来るし、自分もバンドのイベントに遊びに行くし、仲良い人たちが多いかな。<M.A.G SIDE CONNECTION>っていうイベントがずっと今も続いてて、コロナで一旦止まってる時期もあったけど、今年100回目に到達しそう。鈴鹿だったら、このインタビューの収録で使わせてもらってるANSWERとかKICKBACK(セレクトショップ)があるゑびすビル。ANSWERは元々SPARKって名前のクラブで、ANSWERになってからだいぶ経つ。このビル自体の歴史も長いな。四日市だったらJEVAの方が色々話せると思うけど、やっぱSUBWAYとかADVANTAGE(三重県四日市のバー)が主軸にあると思う。

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JEVA そうですね。僕の印象だと鈴鹿も四日市も色んなジャンルの人がいて、どのジャンルの人もそのカルチャーを深くまで掘ってる造詣の深い人が多い。鈴鹿は自分でお店やってる人が多い印象で、それぞれ好きなものを本当に追求しまくってる。

YUKSTA-ILL たぶん鈴鹿に比べて四日市ってもともと栄えてて、昔から街が形成されてたから老舗とか個人店が多いけど、鈴鹿は比較的ここ数十年で発達してきた街だからここっていう場所が少ないんやと思う。住み良いし、チェーン店とかだったら何でもそろってるんだけど、個人店が少ない分、JEVAが言うように自分たちの周りでは、自分の好きなことをとことんやるみたいな感じで店をやってる人が多いのかも。

もちろんそれぞれ街の特色はあるんだけど、俺は鈴鹿も四日市もある意味一括りで考えてる。名古屋ってすごく広くて、区で分かれてるから都会だと思うんだけど、そういう名古屋の感覚で言えば、別に鈴鹿も四日市も同じ区画だと思ってるから、四日市を全然隣町とも思ってない。だから、SUBWAYとかADVANTAGEに行くときも、隣町のクラブに行くというより、地元のクラブに行くくらいの感じ。

JEVA 四日市はやっぱ中心になるクラブがSUBWAYとADVANTAGEの2つだから、お客さんの棲み分けがない。イベント自体もレゲエやジャマイカン・ミュージック、テクノとか、HIPHOPのイベントは僕たちの他にもKIYOSHIROってDJがレギュラーでやってたり、結構ジャンルが違うイベントが日によって混在してる。タイミングで全然違うジャンルの音楽が流れてるのも四日市のクラブシーンの特徴なのかなっていう気がする。日によって流れてる音楽は違うけど、やっぱりSUBWAYとADVANTAGEを中心に色んな人が集まってくるから、入り混じって遊ぶなかで、他のジャンルの人とも繋がったり。

YUKSTA-ILL あと、イベントじゃなくても通常のバー営業に行って仲良くなるとかも結構あるから、本当に人間交差点というか。それと、鈴鹿と四日市の違いをしいて挙げるなら、やっぱり四日市の人は夜遊びに慣れてるかな。そういう場所がずっとあるってのが大きい。SUBWAYは今年で20周年だし、ADVANTAGEは17周年。この前もJEVAとミーティングがてら水曜日にSUBWAYに行ったら、レゲエのイベントやってて、ADVANTAGEではちょうど17周年のイベントやってて、平日の夜にここまで遅くまで遊べるのはすごいなというか、鈴鹿じゃ成し得ないなと思った。三重でも他ではここまでは中々ないなって。

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──これまで話してもらったように、三重はジャンルに囚われず、SUBWAYやADVANTAGEといった地元の箱に、行ったら誰かいるだろうみたいな感じで遊びに来てる印象がありますね。三重県の音楽シーンにおいて欠かせない重要な作品とかありますか?

JEVA 三重で過去の重要な作品だと、TYRANTはもうめちゃくちゃ衝撃だった。めっちゃ都会的というか、すごく洗練されてて、見せ方も考えられてたと思う。俺らはM.O.S.A.D.とかBALLERSを聴いてて、HARDCOREなHIPHOPの格好良さへの憧れみたいなものがあって、TOKONA-Xのようなひりついたあの格好良さをTYRANTからすごく感じた。その後に〈RCSLUM〉からリリースされた作品もその空気感はずっとあって、単純にアートワークとかも全部格好良い。

YUKSTA-ILL その面ではソウタ(ATOSONE)がすごかった。俺らは世界観を作って、ステージに立ってLIVEしてたけど、その土台的な部分をATOSONEだったり、EGX君、Hide052君だったりがしっかり作ってくれて、デザインや映像とかで何倍にも格好良くして表に出してくれた。

──では少し話を変えて、お二人とも普段は三重に住まれていますが、普段生活している鈴鹿や四日市はどんな街でしょうか? その街から何か影響を受けていることはありますか?

YUKSTA-ILL 率直にものを言ってくるやつが多くて、めんどくさいときもあるけど、愛があると思うし、俺も何かあったら言える関係性が作れてると思う。

JEVA 結構ズバズバ言ってくれる人が多くて。

YUKSTA-ILL 俺だけに限ったことじゃないよね。

JEVA YUKさんだけじゃないですね。他よりも地元の方がめっちゃ言われるみたいな。

YUKSTA-ILL そういう面ではタフな街ではあると思う。主張がハッキリしてて、良い悪いをちゃんと見てるし、ちゃんと本人にものを言ってくる。たまにはこっちもむかつくから「なんだお前」みたいなこともあるんやけど、そういう年齢関係なくちゃんと言ってくるやつのほうが俺は好きかもしれない。

JEVA そういう雰囲気はあるかもしれないですね。

YUKSTA-ILL あと、東海全体に言えるかもしれないけど、物流の中心だから、労働者が多い。出稼ぎに来てる人も多くて、そういう人たちがSUBWAYやADVANTAGE、ANSWERだったりに迷い込んでくるというか訪れるから、いろんな土地の人とも仲良くなれる。車も多くて、鈴鹿から国道23号線で名古屋に向かおうとすると、普段だったら1時間半で行けるのに、平日の14時くらいなのにトラックが多すぎて2時間半くらいかかったりする。あと空気が汚いとか……これはマイナスプロモーションでしかないか(笑)。

──けれど、YUKさんは23号線が混んでるとか、空気が汚いとかそういうトピックもリリックにしてますよね。

YUKSTA-ILL それも結局LOVE&HATEだと思う、地元のことだからしっくりくるし。

JEVA さっきも少し話したけど、町の雰囲気で言うと、まじ酒飲む人が多いんですよね。確か、街の人口に対して、駅周辺にある居酒屋の数が昔から全国でも上位らしくて。

YUKSTA-ILL この前、四日市祭(※300年以上の伝統を誇る諏訪神社の例祭)に行った時、普通にテキーラがショットで売ってて、「これって四日市のカルチャー的な感じなのかな」ってつい勘違いしちゃうような錯覚に陥った。

JEVA 朝方の四日市とか結構やばい感じありますよね。グッシャグシャの人がおったり。

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YUKSTA-ILL やっぱりSUBWAYがその先陣を切ってるんだろうけど、本当にテキーラが出るんですよね。まあそれでぶちアガってる人もいるし、賛否はあるだろうけど、それをLOVE&HATEの象徴だと俺は思ってる。結局ADVANTAGEに行っても似たようなレベルでテキーラ出てくるから、やっぱりどこかで酒飲みが共鳴しちゃってるんやろね。こういうのを俺らは普通だと思ってるけど、結構名古屋とか県外に行くと「四日市は酒飲むよね」みたいな感じになるから、「やっぱそうなんだ」みたいな。

JEVA 結構このノリを他所でやったら、本当に嫌な顔されるというか(笑)。

YUKSTA-ILL そうやね、県外行くとすごく平和に飲める(笑)。LIVE中にヤジみたいなの飛んでくることもあるけど、俺も負けねぇって感じになるし。何度も言うけど、愛がそこにはあると思うから、後味悪くてもう行かねぇよみたいになることもない。

──地元ならではの、根底に愛がある関係性が築けているのはいいことですね。

YUKSTA-ILL あと、基本的に四日市も鈴鹿も住み良い。しかも、近畿地方でもあるから、実は関西も近いし、色々動きやすい。東京行くにしても電車乗って名古屋行って、新幹線に乗り換えるだけで着くし。

JEVA 確かに名古屋までもちょうどいい距離感で、大阪も別に近鉄電車で一本で行けるし、京都までも高速で1時間半くらい。立地的にはかなり動きやすいですよね。

──三重は割と中央に位置してるので、東西どっち方面にも動きやすいのは確かにメリットですね。

YUKSTA-ILL LIVEでこっち方面に来るときあれば、三重にも来てくださいみたいな。

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──YUKさんは『MONKEY OFF MY BACK』をリリースするタイミングで、自主レーベル〈WAVELENGTH PLANT〉を立ち上げられました。自主レーベル設立について、あらためてそのきっかけや思いを伺いたいです。

YUKSTA-ILL 地元を拠点に活動を続けてきたから、何か地元に返したいという思いは常々あって、その一番わかりやすい形が自分でレーベルを立ち上げることだった。自分で看板掲げて何かできればと思ったのがきっかけかな。

──地元に何か返したいっていう思いは昔からあったものですか?それとも最近になって生まれたものですか?

YUKSTA-ILL そういう思いは昔からあって、それこそB-ZIKのときはまず地元でちゃんと活動して、そこから県外に出ようと思ってた。そうやって地元で活動する過程のなかで、TYRANTが結成されて名古屋に出ていって、そのタイミングでUMBの名古屋予選で優勝したりもした。でも、住んでるのは三重なんやけど、TYRANTはRACOON CITYとしか言ってなかったし、要はWu-Tang ClanのShaolinみたいに、外から見たらどこの土地のやつか分からないっていう感じだった。だから、当時のメディアの紹介も「名古屋のTYRANT」って感じで言われてた。あながち間違ってはないんやけど、そういうことは活動を続けて広がっていけば、どこかのタイミングでみんな分かってくるだろうって感じでやってた。そうやって地元への思いは昔からあったんだけど、『NEO TOKAI ON THE LINE』(2017)をリリースしたあたりから、地元への意識がより強くなって。これまでも地元のことを思ってやってきたけど「次のステップって何だろう?」って考えたら、それが自分でレーベルをやることだった。

JEVA 俺から見てもYUKさんが自主レーベルを立ち上げたっていうのは、普段ライブをやってなさそうな若い子でもやる気があれば誘ったり、そうやってフックアップしていたYUKさんの意識の延長線にある感じがしています。

YUKSTA-ILL もっとみんなが前に前にってくらいの意識でいいと思う。その方が「俺もやってやるぜ!」みたいに俺はなるし。

──YUKさんは自主レーベルの立ち上げと同時にニューアルバム『MONKY OFF MY BACK』をリリースしましたが、JEVAさんはこの作品を聴いて、どういう印象を受けましたか?

JEVA 最初聴いた時にイントロ(“MONKY OFF MY BACK”)で結構食らいました。アウトロ(“LINGERING MEMORY”)もなんですけど、普段のYUKさんの雰囲気とはちょっと違った印象で、今までよりもパーソナルな部分が結構出てる気がする。個人的に好きな曲は“TIME-LAG”です。この曲に関して言えば、YUKさんは本当にめっちゃバスケしてるから、そういう部分の生活感とか、《夢中で気づかない MY WIFEからのTEL》とか、好きなことに夢中になっている少年ぽさとか、普段YUKさんと話してたことがそのまま曲になってる感じ。その情景がバチバチ浮かんできてすげー良かった。あとはBUPPONさんとの“BLOOD, SWEAT & TEARS”。YUKさんの《地元は出ずに地元を出る》ってラインが俺は結構ズバって刺さって、地元に根付いて今もずっとやっていくっていうのはもちろんだけど、地元に軸足を置いてピボットしながら、外にも動いて……。

YUKSTA-ILL お、バスケや。

一同 (笑)。

YUKSTA-ILL – TIME-LAG(Official Video)

JEVA 曲の内容もBUPPONさんは山口で、東京から離れたエリアだけど、名前を売りに動いてっていう動き方は理想の動きというか。

YUKSTA-ILL JEVAもそのスタンスを地で行ってると思う。

JEVA そうですね、俺も生まれも育ちも三重だし、あのラインはすごく共鳴できてすごくよかった。あと、全体的に穏やかさが漂っていて。

YUKSTA-ILL それはあるかも。特にコロナの真っ最中に作った曲は昼の生活がメインになってることも強い影響がある。それこそバスケなんて朝5時起きとかで行って、帰ってきて朝の9〜10時くらいからリリック書いてた。

JEVA リリックで言うと、三重弁とか三重の訛りがめっちゃ入ってた気がしてて。“MOTOR YUK”の《ほったらかしはええ気せん》とか、“DOUGH RULES EVERYTHING”の《同時に次ロケハン どれなん?》《折れやん心》とか、“TBA”の《我ながらめちゃくちゃやなぁ》とか。三重の訛りがそのままリリックに入っていて、近しい何かを感じる部分やったんかなって気がしてて。それと客演だとGINMENのヴァースがめちゃくちゃ良かったです(“SPIT EAZY”)。本当に最後気持ちよく締める。GINMENのヴァースはずっと口語っぽい感じで。

YUKSTA-ILL あれは全員のバースを聴いてGINMENが最後でしょってなった。全部最後の韻が同じ感じなんだけど、起伏の付け方が良くて。

JEVA そういったシンプルなライミングがすごく良かったり。最後のラインの《もうすぐ夜明けだぜ HAVE A NICE DAY》までの《マスクを外して唾を吐いて》とか《腹抱えて皆んなで笑いてぇ》とか、コロナ禍で作った曲という背景が出てて良かった。YUKさんは前作の『BANNED FROM FLAG EP』(2020)、『BANNED FROM FLAG EP2』(2020)もそうですけど、今回のアルバムもコロナ禍真っ最中での制作でしたよね?

YUKSTA-ILL そうやね。あのEPはコロナ禍っていうトピックに特化した作品だったから、今回のアルバムにはあんまりそういう曲は入れないようにしようと思ってた。だから、ピンポイントにコロナ禍を連想する言葉って少ないと思うんだけど、実際はそういう状況の中で作っていた作品ではあるかな。生活がちょっと昼っぽくなってて、制作中はイベント中止も多かった印象。あと、春っぽいというか、秋っぽいというか、常温って感じの雰囲気だったから、春まで待ってリリースした。

JEVA あと、今回はアルバムを作るって感じで制作せずに、たくさん出来上がった曲をピックアップしてまとめた感じなんですよね?

YUKSTA-ILL そうそう。いつもはこういうアルバムを作るって決めて最初から最後まで作っていくけど、今回はパズルみたいな感じで出来上がった。だから、普段は結局曲を全部出し切っちゃう感じが多かったけど、今回は逆に曲が残ってる状態でリリースしてるから、それらの曲を料理していくってのが今後の楽しみの一つとしてあるかな。

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JEVA YUKさんのこれまでのアルバムは構成もしっかり考えて作ってる印象がありました。今回のアルバムは制作プロセスがこれまでと違っても、そのスタンスを今回もキープしているように感じました。あと、なんとなく『DEFY』(2019)よりもフリーキーっぽいというか、前よりもラップに遊びが結構増えたなって思うところがあった。Campanellaとの”EXPERIMENTAL LABORATORY”もそうで、ラップの乗せ方のパターンも色々ある《Dr.HoFmaN》ってワードで上がる。

YUKSTA-ILL なんか俺のことばっかになってむず痒い感じになってきたからJEVAの話にすり替えるけど、JEVAは今のところリリースしてる『伊藤純』(2017)、『そして、伊藤純』(2020)のアルバム2枚とも客演なしで、それってめちゃくちゃすごいことだと思ってて。しかも、全曲3ヴァースくらいラップやりきるくらいの感じで作ってるから、MCの鑑みたいなことやってる訳よ。でも、2枚続いてああいう“THE MC” みたいなアルバムを出してるから「3枚目どうなるんだろう?」って、みんな思ってると思う。

JEVA 今までにないようなものを作りたいです。自分がどういう人なのか、認知してくれてる人が最近少しずつ増えてきたからこそ。

YUKSTA-ILL 次の作品も作っとるんやんね?

JEVA そうですね。YUKさんはこのコロナ禍ですごく集中して、たくさん曲を作ったと思うんですけど、逆に俺はコロナ禍でモチベーションを持っていけなくて、どちらかというと結構進まない感じがあった2年間でした。だから、そのなかで作品をずっと作ってたYUKさんはまじですげーなと思ってて。

YUKSTA-ILL あのEP2枚に関しては意図して作ったけど、意外とそういう作品が少なかったように思ってて。BOSSさん(tha BOSS|THA BLUE HERB)とMILES WORDはしっかりとそういう作品を出してた。その後、自分もいっぱい曲を書いてて、最終的に今回のアルバムの形にまとめられたけど、作ってる最中はやっぱどこに向かおうとしてるんだろうってのはあったりした。

JEVA アルバムの形にするために追加で作った曲もあるんですか。

YUKSTA-ILL あるよ。さっき話したALCIとGINMENとの“SPIT EAZY”はある程度曲が揃ってきた段階で、足りない部分として依頼した曲で、ISAZのビートの2曲(“FOREGONE CONCLUSION”、“SPIT EAZY”)はそういう曲。あとは元々あった曲のビートを差し替えてみたり、既にリリックだけあってみたいな曲かな。

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──名前が挙がったBOSSさんについて、お二人ともBOSSさんの作品に参加されていますが、彼の活動や彼自身について、印象に残っているエピソードはありますか?

YUKSTA-ILL ヒーローやね。印象に残ってるのは、俺がファースト・アルバム(『QUESTIONABLE THOUGHT』)を出した後くらいの、まだ直接面識がない頃に何かのインタビューで俺の名前を挙げてくれてた。同じくらいの時期に四日市にBOSSさんがTHA BLUE HERBとしてLIVEで来てたとき、自分も出演してて挨拶してアルバム渡そうと思ってたら、「聴いてるよ」みたいなことを言ってくれて、「うわーマジか」みたいな。しかも、俺のLIVEは早い時間だったんだけど、わざわざ観に来てくれてて、それもすげー嬉しかった。それから連絡が来て、一緒に曲をやることになったけど、一切の妥協無し、本気のぶつかり合いをしてくる感じがすごく印象的で。きっとBOSSさんと一緒に曲を作った人はシェアできるエピソードがそれぞれにあると思う。

JEVA 最初、俺は認識されてるとは全く思ってなくて。名古屋のclub JB’SにTHA BLUE HERBがLIVEで来たときに、「ローカルアーティストで誰かキャスティングしたい人いますか」っていう話のなかで、BOSSさんが俺の名前を出してくれたみたいで。その流れでJB’Sから「BOSSさんからご指名だよ」みたいな感じで連絡があったからビックリして。そもそも認識されているとも思ってないし、音楽性としても俺の音楽が好まれるとも、まさかチェックしてもらえてると全然思ってなくて。だから、本当にすごいところから掘って、色々聴いてチェックしてる人なんだろうなって思ったのが最初の印象。一緒に曲を作ることになった時、BOSSさんから連絡が来て、それも「うおーマジか」みたいな感じで。作ってるときのエピソードで印象に残ってるのは、常に作品をブラッシュアップしようとしてるところ。普段、俺はバーっとリリックを書き切ることが多いけど、今回は何回もやりとりしながら練って作り上げた。BOSSさんから送られてくる音源はリリックとフロウが毎回変化していくし、最終的には曲が出来上がって、PV撮影の時に曲を聴いてたら、また変わってる部分があったりした。瞬発的に作った曲の良さももちろんあるけど、そうやってストイックに曲を研ぎ澄ましてく感じがBOSSさんらしくて特に印象に残ってます。あと、地元の北海道に根ざして活動をしながら、アルバムのリリースライブを東京でやるみたいに、外に出て勝負して、行った土地土地をホームにしていく。それをあのレベルでできるのは本当にBOSSさん、THA BLUE HERBくらいだと思う。ローカルをめちゃくちゃ大事にしてると思うけど、それだけじゃなくてもう一つ先にいる感じが、視野の広さを感じる。

YUKSTA-ILL 確かに視野が広い。自分の中で唯一悔いが残ってるのが、BOSSさんのソロのファースト・アルバム(『IN THE NAME OF HIPHOP』2015)に参加したとき、恵比寿・LIQUID ROOMでのリリパに行けなかったこと。そのときはちょうど<METHOD MOTEL>でSLUM RC『WHO WANNA RAP』のリリースパーティがあって、そこに俺が欠ける訳にはいかなくて。でも、もちろんLIQUID ROOMのリリースパーティーに行きたい気持ちもあったから、JEVAはそこに行ってカマしてきたのは羨ましく思う。

JEVA こういう風に話してみると、本当に見習うべきところが多くある方ですね。近年、制作ペースもとんでもないです。

YUKSTA-ILL 年々加速してるっしょ、本当にすごいと思う。

──本当にそうですね。僕はリスナーの立場ですけど、それでもBOSSさんの凄さはわかりますし、そういう人とお二人が一緒に作品を作っていることに単純にリスナーとしてブチアガってました。BOSSさんとJEVAさんの”STARS”のPVは四日市で撮影してるのもあって、めちゃくちゃ感慨深かったです。

YUKSTA-ILL 誇れると思う。JEVAがBOSSさんとPV撮ってるのは俺もめちゃくちゃアガるし。みんながどこまで認知してるか知らないけど、BOSSさんのソロ作品に2作連続で三重県出身のラッパーが参加してるんだから、三重の人たちにもっとブチアガってほしいと思ってる。三重で活動を続けてきたことは間違ってなかった。

tha BOSS “STARS feat. JEVA”【OFFICIAL MV】

──本当にその通りだと思います。今三重で活動してる人、これから活動していく人にとっても絶対に何かプラスになるような出来事だと感じています。

YUKSTA-ILL 今回のアルバムでのBUPPONとの曲”BLOOD, SWEAT & TEARS”の最後の自分のバースで《BOUNCE BACK 地方リアルディトリビューター》って言ってて。地方で活動する人に伝えたいのは、活動してても自分が思うように人に届かなかったりとか、そもそも音楽に関わる人数の母数が絶対的に違ったりするんだけど、そんな中でもバウンスバックすることがすごく大事だと思ってるということ。なにかマイナスな出来事に直面したときでも、そっからどんだけバウンスバックして次に繋げていくか、地方で活動をしていくうえで俺は重要だと考えてる。BUPPONとか各地方で長く活動してる人たちはみんなそういう経験をしてると思うし、そうやってどんどん太くなっていくんだと思うから、地方で活動する人たちはみんなバウンスバックする能力を持ってほしい。

YUKSTA-ILL – BLOOD, SWEAT & TEARS feat. BUPPON(Official Video)

JEVA 俺はさっきも言った通り、あの曲の中では《地元は出ずに地元を出る》って肝になるリリックな気がしてて。BUPPONさんも他のインタビューで「ライブをやるにしてもやる場所も限られてて、遊びに来る人の母数もそもそも少ない。そのうえ、それを仕事にしようとしたら必然的に外に出ていかないといけない」っていう風に言ってましたし。

YUKSTA-ILL BUPPONもそのリリックには共感してくれてた。

JEVA やっぱりそういう部分は一緒の感覚ですよね。BUPPONさんの《場所は選ばねぇ じゃなく 場所も選べねぇ》ってリリックも地方にいるからこそ生まれる葛藤だし、土地が違っても、共感しあえる意識をもった二人がこういうトピックで曲を作ったっていうのがめっちゃ良いなって思いました。

YUKSTA-ILL あの曲はBUPPONと俺が客演したBOSSさんとの曲”HELL’S BELLS”が前提にあって、HOOKの《ベルズマインドにヘルズスキル REP AXIS RC SLUM》ってのも、俺がヘルズスキルで、BUPPONが ベルズマインド ってMC名でやろうって冗談で話してたのをHOOKにした感じ。

tha BOSS“HELL’S BELLS feat. BUPPON, YUKSTA-ILL”

──インタビューも終盤に差し掛かってきているので、これまでとは少し角度の違うお話をお聞きしたいと思います。JEVAさんが脚本・主演を担当されている映画『幸せになろうよ』についても少しお話を聞かせてください。これまで伺った音楽の活動とは異なる、映画という表現を通じて、感じたことがあればお伺いしたいです。また、監督である柴山将成さんとの関係性についてもお伺いできればと思います。

JEVA 監督の柴山さんは”イオン”とか”サラメシ”とか自分の曲のMVを何本も撮ってもらってる仲です。柴山さんは元々、映像作家として活動していて、自分以外のラッパーのMVも撮ったり、自主映画の監督をしています。映画を作るきっかけになったのは、柴山さんにMVを撮ってもらった”ソファの上”という曲。曲の内容は朝起きてから夜暗くなるまでずっとソファの上にいたっていう感じで、その情景描写がずっと続くんだけど、「そういう感じで脚本も書けるんじゃないですか」って言われた。それで、脚本の書き方がわからない中で、色々相談しながら書いていった。リリックを書くときはどうしても自分視点の話だけで完結してることがほとんどだけど、脚本となると、色んな登場人物が出てくるから、自分以外の視点で思考を想像する必要がある。その人がどんなことを考えてて、どんな言葉を使うのかを考えること自体、普段リリックを書くときとは全然違うアプローチだったから、登場人物の人物像がはっきりしなかったりして、すごく難しかった。今回の映画の中には結婚を考えているけど、踏ん切りがつかない女性が出てくる。そういうシチュエーションで女性がどんなことを考えるのか、俺と女性の見解では全然違うから、身近な既婚者の女性にどんなことを考えたか、話を聞いてみたりして。

[PV] JEVA – ソファの上(prod.by DJ 2SHAN)

YUKSTA-ILL 大変やな。そりゃアルバムの制作進まんよな。

JEVA コロナ禍は映画のことを一番やってました。そういう風に色んな人の話を聞きながら、人物像の肉付けしていくと、ボヤっとしたイメージの解像度が上がっていく。それは自分の歌詞にはなかった要素で、すごく新鮮やったし、そういう考え方は今後の作詞にも応用できそうだなと思いました。あと、自分の歌詞には情景描写がすごく多いから、説明的になりがちなんだけど、「愛してる」って一言でも、その一言の前にどういう間があるかで言葉のニュアンスが変わったりもする。そういう言葉で説明出来ない「間」を考えることも普段とは違う試みだったから印象に残ってる。演技に関してはほんまにめちゃめちゃムズい。

YUKSTA-ILL いやー、演技は難しいと思う。俺なんかMV撮る初期段階くらいに演技を盛り込もうとしたら、ソウタ(ATOSONE)に「YUKは演技無理やろ、ラップしとる方が格好良いで」って言われたことある。

JEVA 俺は主人公で「JEVA』っていう役なんだけど、撮影するシーンの説明をされて、「このシーンではこういう心情でこういうことを考えてるはずなので、そういうときにどういう行動をするか想像してみてください」って言われて、考えてみるんだけど、作詞みたいな言語的な表現とは違った身体的な表現がなかなかできなくて。俺はLIVEでも動きをあまり考えずに直感でやってしまう方やから、目線だったり、言葉ではないちょっとした動きとかも、その人の心情を出すための重要な表現になるってのを色々考えさせられた。

YUKSTA-ILL 俺は<AJP>の初期ぐらいに、JEVAに「LIVEの時に目が泳いでる」って指摘したことがあって。

JEVA すぐ目が泳ぎがち。そういう意味では、自分がどう映るかとか、人から見て自分がどう見えているか、前よりも意識するきっかけになった。

──これまで話を伺うなかで、YUKさんは自主レーベルを立ち上げたり、JEVAさんは音楽以外の活動にチャレンジしたりと、お二人ともに新しいステップに差し掛かっていると感じるのですが、今後の展開など将来的な話を少し伺いたいです。

YUKSTA-ILL レーベルに関しては、ちゃんと自分以外の作品を出せるようにしたいし、自分の作品だけを出すような個人的なレーベルにはしたくない。

JEVA 俺はコロナ禍でアルバムを作りきれなかった部分があったから、まずはアルバムを作ることが自分のなかでいち早くやるべき目標だと思ってます。かつ、これまで客演なしで自分1人だったし、ビートも身近な人に頼んで絞り込んだ作り方をしたから、次は自分がこれまでしなかったことをやれるような作品を作りたい。

YUKSTA-ILL アルバムタイトルに「伊藤純」は入るの? ジェイダキスも3枚目までは「Kiss」が入ってたからね。1枚目から『Kiss tha Game Goodbye』『Kiss of Death』『The Last Kiss』って感じで。

JEVA これは難しいですね。まだ全く決まってないです。

YUKSTA-ILLL まだ未定なんやね。じゃあ、一緒にジャケに写ってるあのマネキンの登場は?

JEVA うちの実家で眠ってます。

YUKSTA-ILL じゃあ一応いつでも登場の準備は出来てるんやね。

JEVA 一応、控えてはいます。

JEVA『伊藤純』(2017)

JEVA『そして、伊藤純』(2020)

──最後の質問になります。今回は三重を中心とした地方にスポットを当てたお話をいっぱいお聞きしましたが、おそらくこの記事を読まれる方の中にはそういった地方在住の方も多くいることだと思います。そういう人たちや読者の方へ向けて何かメッセージなどあれば最後に一言頂ればと思います。

YUKSTA-ILL 直接繋がりがないだけで、地方の人たちの音源も何気にチェックしてて。各地に格好良い人たちがいるから、いずれ三重にも来てほしいと思ってます。自分たちもパーティーをやってるし、そっちはそっちでやってると思うから、都会は都会でもちろん良いけど、地方は地方で上げていきましょう。

JEVA こちらも出向いていった方がええやろし、もちろんこっちにも来てほしいし、各地で同じように頑張ってる人たちがもっと繋がり合えるといいですね。

YUKSTA-ILL そうやね、時間はかかるかもだけど、そういうところは繋がると思ってて。どこかで必ず交われると思うし、その時を楽しみにしてます。

JEVA そうですね、県外から来てくれたら嬉しいですよね。

YUKSTA-ILL それこそこの前、LIVEで行ったことがある都道府県の数の話になって、俺は多分30くらい。色んな土地にもっと行きたいね。それも一つのモチベーションかも。

地元は出ずに地元を出る──対談:YUKSTA-ILL × JEVA interview240117-yukstaill-jeva-14

JEVA 俺は話を待ってることが多いんで、全然行ってないですね。数えたら10も行ってないです。

YUKSTA-ILL じゃあもし行ったことない土地から話が来たら、有給取ってLIVEしに行く?

JEVA 話さえあれば行きますね、それこそ夜勤で行けないパターンはありますけど。

YUKSTA-ILL BOSSさんの客演もあったし、さらにこれから増えてくんじゃない?

JEVA 本当にお声掛け頂けたら行きますって感じで、機会を求めてます。

YUKSTA-ILL 今ある繋がりから更に繋がりが広がっていくと思うし、新しく声かけてきてくれる人もいるだろうし。

JEVA なので、常に出歩くときはインストのCDだけは持ち歩くようにしてます。

YUKSTA-ILL それ大事やね。別に客演でも飛び入りでも何でもいいんだけど、その場でカマしたら次があると思う。これまでにそういうので呼んでもらったLIVEとかあるし。

JEVA いつでもやれる準備はしてますね。

YUKSTA-ILL 間違いないね、それの繰り返しやね。

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INFORMATION

地元は出ずに地元を出る──対談:YUKSTA-ILL × JEVA music230407-yukstaill-1

YUKSTA-ILL 4th FULL ALBUM
「MONKEY OFF MY BACK」
Label:WAVELENGTH PLANT
Release:2023.4.5

トラックリスト
1. MONKEY OFF MY BACK
2. MOTOR YUK
3. FOREGONE CONCLUSION
4. GRIND IT OUT
5. JUST A THOUGHT
6. SPIT EAZY
7. OCEAN VIEW INTERLUDE
8. DOUGH RULES EVERYTHING
9. EXPERIMENTAL LABORATORY
10. TIME-LAG
11. BLOOD, SWEAT & TEARS
12. TBA
13. LINGERING MEMORY

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