誰にでも等しく訪れる、限りなくパーソナルな時間として、慌ただしく動いた日の夜は安息を用意してくれる。そんな一日の終わりに寄り添う、100年以上の伝統を誇るNY発のファッションブランド・Schott(ショット)とQeticによるスペシャルコンテンツ『Nightcap』。閉店後のSchott Grand Store TOKYOで人知れず行われるミッドナイト・セッション、その一部始終と特別なインタビューをお届けする。ここだけは心の装いを外して、刻々と色濃くなる夜の温度を感じて浸ってほしい。
今回登場するのは、R&B / ソウルを軸に深く潜り込むような言葉とサウンドを紡ぐシンガー・ZIN。関西を中心に活動するアーティストコレクティブ「Soulflex」の一員としても活動しながら、昨年9月に初のフルアルバム『CURVE』をリリースし、全国4箇所でのワンマンツアーを成功させるなど、その唯一無二の歌声は多くの人々の心を掴んでいる。
『Nightcap』で披露したのは“Ghost”と“Buddies”の2曲。Schottを代表するアイコニックなアイテムである『ONESTAR(ワンスター)』を纏ったZINに、自身のスタイルを解説してもらいながら、等身大で歌う彼の矜持に迫った。
INTERVIEW
ZIN
本日着用いただいているONESTARの第一印象はいかがでしたか?
レザーの重みとツヤに、背筋がピンと伸びるような感覚があります。着る前は「少し動きづらいのかな」とか思ってたけど体に馴染むし、普段から着れそうな感じだなと。これから自分の体型に合っていくのかなって思いました。
どのような場面でレザーを着ることが多いですか?
ライブの衣装とか撮影の時に着ることもありますし、パーティーへ遊びに行くとか、そういう特別な場面で着たりします。レザーって主役になるアイテムだと思うので、そういう少し上の場所にいく時にはハマります。ただ普段も全然着てるし、レザーはどんな場面でも着れるのが良いですよね。
普段はどういったアイテムと合わせていますか?
僕が演奏している音楽だったり生活のスタイル的に、スタイリッシュな側に持っていきたいんです。例えばR&Bやソウル、ジャズのセットアップで決めるようなスタイルから、B-boyやロックとか色々なジャンルの音楽をミックスしている感覚があります。
ファッションにもそれを反映させて、レザーのジャケットを着ている時にあえてスウェットを履いたり、軽い素材のパンツを合わせたりしますね。
ZINさんは外しの要素をファッションに取り入れる印象があって、例えば先日のビルボードライブ横浜でのワンマンライブの際にはジャケットとベースボールキャップを合わせていましたよね。
いわゆる「見たことある感」とか「THE」みたいな、わかりやすいものにちょっと抵抗があるんです。定番のスタイルも勿論好きなんですけど、そこに自分のスタイルをちょっと入れたいなっていうのはありますね。ただ、自分はファッション関係の人間でもないし、めちゃくちゃこだわりがあるかって言われたらなくて。「オモロそうじゃない?」みたいな感覚で選ぶことが多いです。
その上で、参考にしているスタイルはありますか?
鳥とか花とか、自然の配色って馴染むというか。羽は青いけど、お腹がオレンジの鳥とかいますよね。そういう色の組み合わせは参考にしてます。
それと、自分は絵を描くのが好きなのでバランスをよく気にしますね。例えばレザーがストンと落ちて見えちゃったり、胸が入ってないとタンクトップがダサくなっちゃったりするんで、自分が着たい形に見えるような体づくりを目指して鍛えています。ただ、ムキムキにはならないようにしてて。プロテインも飲まないし、筋トレもやり過ぎない程度にして調整しています。
ステージ上での衣装はどのように決めるんですか?
スタイリストさんが付く場合は任せちゃいますけど、そうじゃなければ当日の朝に着る服を決めますね。Soulflexでライブをする時なんかもそういう感じです。
Soulflexはメンバーがそれぞれ個性的で、ファッションにもそれが表れていますよね。その中でも、ZINさんは比較的カッチリしたセットアップなどを纏ってステージに登場する印象があります。
Soulflexはバンドというよりグループなので、衣装を合わせたりするのが逆に嫌なんです。その上で、他のメンバーとちょっとだけ差をつけたいとは思っています。僕とSIRUPとMa-Nuの3人がフロントマンなんですけど、自分は形とかデザインで選ぶことが多くて、色は割と落ち着いたものを着ています。
NYに留学した経験があるとお聞きしました。そこで日本とのスタイルの違いを感じることはありましたか?
良い意味で、流行みたいなものがないと思いましたね。例えば日本の街を歩いていたら、「今こういう服が流行ってるんだ」とかって割とわかるじゃないですか。そうじゃなくて、みんなの中に自分だけの流行があるんです。だからスタイルが本当にバラバラ。人と違うスタイルで周りからどう思われても気にしないし、むしろ自分だけのスタイルを追求している人が多い印象がありました。
それで僕も「何を着てもいいんだ」って思えましたね。着るものが大きく変わったわけじゃないけども、周りを気にして自分が着たい服を控えることはなくなったかもしれないです。特に、僕が仲良くなったのは、ファッションとかデザインに関係した仕事をしている黒人の若い子たちだったんです。彼らは色んな服をバンバン着ていたので、その影響が大きかったのかもしれないですね。
ZINさんが影響を公言されているディアンジェロやクリス・ブラウンなどのシンガーも、タンクトップやTシャツなどラフな格好でステージに上がりますよね。ただ、アルバムのジャケット写真はスーツや革ジャンなどカッチリした服装で撮影する印象です。
レザーのジャケットは絵になるし、衣装にしやすいから着てるのかなって思います。マイケル・ジャクソンも革ジャンとか着ますよね。ワイルドなスタイルも演出できるし、セクシーにもなります。レザーっていう一つのアイテムの中に表現力があるのかなって。
ワルさだったりセクシーな要素をご自身の作品に込めることはありますか?
そこまで多くはないけど、歌詞に入れることはあります。ただ、僕は直接的な言葉をあまり使わずに、遠回しな描写で表現しますね。
歌詞のみならず、サウンドにも抽象的な要素が落とし込まれているように感じました。
20代前半はR&Bしか聞いてなかったんですけど、アンビエントとか歌のないインスト曲を聞くようになってから自分の進む方向が見えてきた実感があります。年々、自分のやりたいことは盛り上がる必要のないようなものだなって思うようになってます。
本日演奏していただく“Ghost”と“Buddies”は、どういったフィーリングから生まれたんですか?
“Ghost”は「自分が幽霊になったら、姿が消えてずっとあなたのそばにいれるのにな」みたいな、ちょっと失恋っぽい曲です。実際の人間が付きまとったらストーカーじゃないですか。だから叶わぬ願いなんです。そういうことをふと思って歌詞を書きました。
自身の体験を織り交ぜて詞にするんですか?
そうなんです。提供をする場合は妄想っぽいものが多いんですけど、自分の曲はほぼ実体験です。
“Buddies”はどういった体験から生まれたんですか?
906 / Nine-O-Sixってアーティストとコロナが流行する直前くらいに出会ったんです。彼も僕と同じく大阪出身で、年も近いし、すごく仲良くなって。酔っ払ったら電話するタイプの人っているじゃないですか、僕らお互いにそうなんです(笑)。夜中の3時に電話がかかってきたり、ふたりで4〜5時間くらい飲みながら喋ってるような仲なんです。
それが自分にとっての支えだったというか、ふとした時に「仲間に向けたような曲って書いたことがなかったな」と思って。それでサビの《あなた以外に夜中に電話する相手なんていない》っていうフレーズが最初にバッと出て作った曲です。
アツい関係ですね。
はい、いまだにめちゃくちゃ仲良いです。
最後に、今後の予定や展望を教えてください。
客演で参加した曲もありますし、自分のリリースも控えてます。EPくらいのサイズにはなるんですけど、自分が今やりたいのはこれまでの温度感とは少し違うというか、今までの自分からは大きく逸れてはいないものの、聴いてもらったら前作の『CURVE』から違う段階に行ったと思ってもらえるかなって。もう、自分じゃなくても成立することはやりたくないというか、ウケるウケないの先にあるものですよね。そういうものをやっていきたいです。
本企画のタイトル『Nightcap』は、英語圏で「夜寝る前に飲む酒」という意味を持つ。就寝を緩やかに誘うリラックスタイムの相棒として、ZINの流れるようなグルーヴをお楽しみいただきたい。
【Schott Live】 Nightcap Vol.1
Photo:Ryoma Kawakami
Text:Ikkei Kazama
Edit:Ranji Tanaka
ARTIST INFORMATION
ZIN
福岡県生まれ。18歳より大阪を拠点にシンガーソングライターとしてのキャリアをスタートさせる。R&B/SOULを軸に、そのスタイルは時に優しく、時にダイナミックに人間の深層を浮かび上がらせるような独自のサウンドを追求している。痺れるような低音の深みと、透き通るような高音の両方を併せ持つ歌声はまさに唯一無二である。 ソングライティングに定評があり、様々なアーティストとのコラボレーションや楽曲提供も行う。 2015年からおよそ3年半のNew York留学へ留学。滞在中、全米最大級のゴスペルフェス「McDonald’s Gospelfest」のソロ男性ボーカリスト部門ファイナリストに選出される。 帰国後、東京を拠点に精力的にシングルやEPのリリースやライブ活動を行う。2022年自身のワンマンライブでは渋谷WWWをSOLD OUT。2023年9月にはフルアルバム「CURVE」をリリースし業界内外でも高い評価を得た。同アルバムのリリースツアーも全国4箇所で行われ、ファイナルの渋谷WWWXはSOLD OUTし、2024年1月にはBillboard live YOKOHAMAでの追加公演も行うなど、今注目の集まるアーティストである。 また関西を中心に活動するアーティストコレクティブ「Soulflex」の一員としても活動中。
BRAND INFORMATION
Schott(ショット)
ライダースジャケットの代名詞ともいえるSchottの歴史は、1913年、ニューヨークでアーヴィン・ショットジャックショットの兄弟によって始まった。当初はレインコートを作る工場だったが、1928年に世界で初めてフロントジッパーを採用したライダースジャケット「Perfecto」シリーズを発売。ボタン仕様しかなかった当時、画期的なジャケットとして話題となり、その後のライダース史に大きな影響を与えた。そして、Schottの名を世界に知らしめたのが50年代に発表された星型のスタッズをエポレットに配した伝説のモデル”ワンスター“だ。その後もラモーンズやセックスピストルズをはじめ、多くのロックミュージシャンに支持され、時代を超えた永遠の番として今なお多くの人々を魅了する。最近では定番モデルだけでなく、カジュアルラインも充実させるなど、常に時代に合わせて進化を遂げる革新性も忘れない。ライダースの歴史は永遠にSchottとともにある。