Newspeakがメジャーデビューアルバム『Newspeak』をリリースした。Rei(Vo)、Yohey(Ba)、Steven(Dr)、そしてサポートギタリストのTake(Attractions)も含めた、それぞれのプレイヤーとしてのシグネチャーが炸裂。それによって、インディーロックやオルタナティブロックをルーツの軸とし、ドラマチックで疾走感のある曲や、ファンキーなダンスミュージック、メロディアスなバラードなどさまざまなタイプの曲を打ち出す持ち前のスタイルが、より強くポップに躍動するセルフタイトルに相応しい作品となった。いったい彼らはどのようにして圧倒的な“らしさ”を獲得したのか。その経緯に迫る。
INTERVIEW
Newspeak
──Newspeakは2022年11月にシングル「Leviathan」で〈Waner Music Japan〉からメジャーデビューを果たし、ついにアルバム『Newspeak』を完成させました。まずはなぜメジャーを選択したのか、その経緯と理由から教えてもらえますか?
Yohey:活動を始めた頃はちょうどSpotifyやApple Musicといったサブスクが日本でもどんどん広まっていった時期で、僕らはTuneCoreJapanというディストリビューションサービスを使ってリリースを続けていました。
その流れのなかで、自分たちの音楽をもうちょっと広いフィールドに向けて発信したいという想いが芽生えたころに、メジャーレーベルからいくつか話をもらってたんです。でも、コロナ禍の状況が深刻化してきたことで、すべてがいったん白紙になったんですよ。その時は未曽有の事態で誰もがどうしていいのかわからなくなったけど、リリースはできるなら続けていこうということで完成したのが、2021年のアルバム『Turn』でした。
Rei:僕らのサウンドって、カテゴライズするとインディーとかオルタナティブということになると思うんですけど、Yoheyも言ったように、そのスタイルをもっと広い場所に投げかけたらどうなるか、ということに興味が湧いてきたんです。そこまではよかったんですけど……。
──まさかのパンデミックが。
Rei:『Turn』を作ってツアーを回っていた頃もめちゃくちゃ最高で、でもまだまだ先が読めない状況だったから、メジャーとかインディーとかそういう話ではなく、そもそも音楽を続けライブをやっていくことそのものに不安があった。そんなツアーの東京公演に来てくれたWarnerの担当の方が一言目に「Newspeakって海外に出たいでしょ? また会おう!」って声を掛けてくださって。
──シンプル!
Rei:そのシンプルな一言に引き付けられました。
Yohey:その方にはちゃんとバックグラウンドがあって、もともとは洋楽畑で仕事をされていたんです。日本のバンドを海外に紹介した実績もある方で、その後にいろいろと話をする機会をいただいて契約に至りました。
──メジャーレーベルの下でレコーディングを行ったことで、何か変化はありましたか?
Rei:制作にあたって、音楽性についてレーベルからは一切何も言われなくて。制作過程の中で相談に乗ってくれる、いったん完成したものに対してフィードバックをくれる、といった感じだったんです。それがハマったんですよね。
Steven:Warnerのスタッフやエンジニアのニラジ・ガジャンチ、サポートギタリストのTake(Attractions)も含め、客観的な意見が入ってきたことはほんとうによかったと思う。
Rei:新体制での最初の取り組みがシングル「Leviathan」をリリースすることだったんですけど、この曲はHondaの「FIT e:HEV 」のCMソングで、これまでにやったことのなかった“15秒で伝わる強いサビ”を意識しました。その時、僕らメンバー3人は「ちょっとやりすぎなんじゃないか」って言ってたんですよね。でもスタッフの反応はそうでもなくて、これまでのNewspeakのイメージの延長線上で「いいね!」と言ってくれて。
Newspeak – Leviathan (Official Music Video)
──私もそう思います。特に「メジャーにいったからサビの強いわかりやすい曲を作った」という印象はなく、むしろNewspeakらしいインディーロックルーツのビッグな曲だと思いました。
Rei:まさに、一歩外に出たときの周囲の反応もおっしゃったような感じが多かったんです。でも、少数精鋭で作っていると意外と自分たちのことってわからないというか、変にメジャーとかインディーということを意識していたのは、自分たちだけだったんじゃないかって。そこからよりナチュラルな思考になったうえで、「Be Nothing」の最後のサビとか、「White Lies」のような、今まで以上にポップで強くて大きな曲ができたんです。
Yohey:「Silver Sonic」もそうだったよね。ベースとドラムについては、そういう強度とは別の音楽的なこだわりで、サングラスをかけたまま淡々といきたいみたいなテンションの僕と、激しくエモーショナルにいきたいStevenの間を取ったんですけど、サビのメロディに関しては当時のReiからするとトゥーマッチだと感じていたほうを選んだんです。
Newspeak – Silver Sonic (Official Music Video)
Rei:もともとあったサビのメロディの温度が高すぎると思って、ちょっと抑えたバージョンに変えてレコーディングしたら、スタッフの一人が「前の方がよかった気が」ってボソッと言ったことに対して、「そんな気がする」みたいな波紋が全体に広がっていって、僕だけが「え、そうだったの?」って。で、元に戻してみたら結果、僕もそのほうが納得できたっていう(笑)。自分だけではわからなかったNewspeakの美味しいところが見えてきたんですよね。
Yohey:だからこそ、そういう美味しさとは別軸で続けてきた、グルーヴ重視のダンサブルな側面への愛着もより実感できるようになって、「Alcatraz」はNewspeakのコアな部分として、絶対に先行シングルとして出したいと強くプッシュしました。
Newspeak – Alcatraz (Official Music Video)
──エンジニアのニラジ・ガジャンチさんとの仕事はどうでしたか?
Yohey:誰かいい人がいないか探していたらニラジさんの名前が挙がって、調べてみたら「The Killersの2ndアルバム『Sam‘s Town』を手掛けた人が日本にいるぞ」って。
──『Sam‘s Town』は00年代最高のロックアルバムの一つだと思いますし、Newspeakのイメージにもはまるかと。
Yohey:ニラジさんは僕らのサウンドのリファレンスになるような作品や、それらの作品とプロデューサー/エンジニアとの関りを、事前にじっくりと時間をかけてインプットしてきてくれたので、ロジカルかつ熱のこもったレコーディングできたと思います。Stevenが英語でスムーズにコミュニケーションが取れることも大きかったですね。
──ギタリストのTakeさんとのレコーディングはどんな感触でしたか?
Steven:Takeは最高。ほんとうにいいヤツでギターが上手い。考えすぎない性格だから、バンドに落ち着きといいエネルギーを与えてくれる。間違いないね。
Yohey:Takeは確かな腕があるうえで、サポートと正式メンバーという立場を超えて、Newspeakの作品にギタリストの目線を吹き込んでくれました。そこは本当に大きかったなと。
──イントロダクションとしての「What If You Weren’t Afraid」があって「White Lies」でいきなり泣きのギターが炸裂するところから始まり、今回はギターがかなり効いた作品になっていますよね。
Rei:すごくロックバンドっぽくなったんじゃないかと思います。
──そして、Stevenのパワードラムやタム使い、Yoheyさんの「Alcatraz」のような曲をリードするフレーズやグルーヴは、シンプルなパターンとのコントラストでより際立ち、Reiさんのフロントマンとしての生き様もより躍動しています。みなさんのプレイヤーとしてのシグネチャーが今まで以上に鮮明に伝わってくる、セルフタイトルらしいアルバムだと思うのですが、そういう感触はありますか?
Rei:特にNewspeakらしさを突き詰めて一致団結したみたいなことはなくて、むしろ音楽的な話をあまりしなくなったんですよね。話したところでそもそも音楽の趣味が違うし、折衷案を探ることが増えるだけだから、その必要もないのかなって。そこがポイントになっているのかもしれないです。「こんな曲にしたいから同じ方向を向いてこうしよう」ではなく、「どうせみんな頑固なんだし、お互いのシナジーを大切にしよう」というベクトルで曲を作りレコーディングしたことで、おのずとお互いが期待している通りかその上をいくプレイがいくつも出てきたんだと思います。
Steven:ゴールが見えているよりも、「なんとかなるさ」っていうアプローチの方が楽しいしね。
──“らしさ”って難しいじゃないですか。視野狭窄になることもありますし、そこに気が付いてもなかなか修正できない。自分らしく輝いていたと思っていたことが実はそうでもなかったと後々思うことも往々にしてある。歌詞とサウンドが相まって、そういうモヤモヤに寄り添い引っ張ってくれる作品だと思いました。
Rei:確かに、歌詞について言えば、自分らしさと向き合う、自分らしさを保つ、みたいな感覚は結構あったかも。メジャーからの作品という外向きな打ち出しに反して内向きというか、「これはオレと友達の話です」、「これはオレが好きな人のことを想った歌です」みたいなパーソナルな感覚が強かったことは確かで、そういう感情が外に向いた表現に昇華されているという言い方が正しい気がします。だから、そう思ってもらえたことは嬉しいですね。
Yohey:『Turn』はこの先まともにライブができるかもわからないコロナ禍に、自分たちができることを示すというマインドが起点になっていて、そういう意味ではコンセプトがあった。でも今回はそうではなくて、客観的な視点も入ったうえで見えてきた「これが今のNewspeakです」というアルバムだと思います。
──そして『Turn』と異なり、思いっきりライブができるということがわかったうえで作ったアルバムでもある。
Steven:それもあってドラムはシンプルなパターンを軸にしています。難しいとライブで疲れるから(笑)。お客さんもメンバーも、オレが楽しそうに叩いている方がいいと思うし。難しいのが楽しくないわけじゃないけどね。
──ドラムと向き合っているStevenもカッコいいけど、マイクも使って「今楽しい!」ってフロアに向かって発散しているときは最高ですよね。
Yohey:7月19日にはリリースパーティも開催しますし、どんなライブになるか、楽しみにしていてください。
Interview&Text:TAISHI IWAMI
Photo:Kazma Kobayashi
Edit:Ikkei Kazama
INFORMATION
Newspeak
CD品番:WPCL-13565
CD価格:2,700円(税抜)
トラックリスト:
01. What If You Weren’t Afraid?
02. White Lies
03. State of Mind
04. Alcatraz
05. Before It’s Too Late
06. Leviathan
07. Be Nothing
08. Higher Than The Sun
09. Blue Monday
10. Silver Sonic
11. Bleed
12. Tokyo
13. Nokoribi
チェーン別オリジナル特典:
・TOWER RECORDS、HMV、TSUTAYA、その他CDショップ:セルフライナーノーツ
・Amazon.co.jp:メガジャケ
・楽天BOOKS:アクリルキーホルダー
・セブンネットショッピング:ピック
※デザインは後日発表いたします。
※一部取扱いのない店舗もございます。
※特典はなくなり次第終了とさせていただきます。
※特典の有無に関するお問い合わせは直接各店舗へご確認下さい。
Newspeak Major 1st Album
『Newspeak』 Release Party
7月19日(金)
時間:OPEN 19:00 / START 19:30
会場:WWW