5月29日、“肉の日”にリリースされた水曜日のカンパネラの最新曲『シャトーブリアン』

これまで『桃太郎』『エジソン』『一休さん』など、ユニークな切り口と中毒性のある楽曲で話題を集めてきた彼らの新作テーマは、19世紀フランスの美食家フランソワ・ルネ・ド・シャトーブリアンが愛した、牛肉の希少な最高級部位。

ゲットーハウス特有のユニークなノリと、耳に残る印象的なフレーズが交錯するパーティーチューンである本作を、さらに深掘りするため、水曜日のカンパネラのサウンドを手掛けるケンモチヒデフミと、お肉の真のプロフェッショナル・寺門ジモンによる特別な対談をセッティング。

ジモンさんおすすめの焼肉店で実際に肉を焼きながら、その極上の知見を学びつつ、「シャトーブリアン」の真髄を肉と音楽、両方の側面から探っていく。

寺門ジモンが語る「肉の極意」とケンモチヒデフミが追求する「音の美学」。お肉好きも音楽好きも唸らせる、最高にジューシーな対談をお届けする。

INTERVIEW
ケンモチヒデフミ×寺門ジモン

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「シャトーブリアンっていう曲って何だろう?」
異色の対談は“肉”が繋いだ縁

━━本日は水曜日のカンパネラの新曲『シャトーブリアン』のリリースを記念したインタビューということで、よろしくお願いします。

寺門ジモン(以下、ジモン) 普段は僕、こういう取材は断るんですよ。

━━そうなんですね! 今回お受けいただけたのは?

ジモン お肉だからです(笑)。『シャトーブリアン』っていう曲って何だろうって興味が湧いた。興味が湧いたことは仕事じゃなくてもやるんですよ。逆に興味がないことはやらない。水曜日のカンパネラさんがなんでシャトーブリアンなの? っていうのが、ちょっと引っかかりましたね。もしそのタイトルじゃなかったら、この対談はなかったです(笑)。

ケンモチヒデフミ(以下、ケンモチ) そうですよね(笑)。いや、まさかいきなりお肉界のトップの方と対談できるとは……。

ジモン いやいや、僕はお肉界のトップじゃないですよ。ただの食いしん坊で。お肉を勉強していると、食の流通みたいな他のことも全部わかってきちゃうんです。でも、お肉はみんなが食べるから、そっちのイメージで「肉の寺門」になっていってるだけ。本当はお寿司とかの方がもっと詳しかったりするんだけど、みんなが焼肉を食べるから、「教えて」って言われて肉の話をすることが多いんです。

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ケンモチ 不思議ですね。

ジモン そうなんです。勉強していくと肉が寄ってくるんですよ、肉の方から。だから、『シャトーブリアン』なんて曲を書いたからには、これから肉が寄ってきますよ。焼肉系の仕事が増えると思います。喋ってることは言霊になって広がっていくから、黒毛和牛ちゃんが寄ってくる(笑)。

ケンモチ じゃあ今度から積極的に、欲しいものを曲のタイトルにしていこうかな(笑)。マグロのトロとか。

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楽曲のテーマは「憧れ」。
食べたことのないファンタジーを歌に

━━そもそも、なぜ『シャトーブリアン』を楽曲のテーマにしようと?

ケンモチ いつも水曜日のカンパネラでやりたいこととして、「人がまだ歌にしていないことを歌いたい」というのがあって。何かいい題材はないかなと探していた時に、このシャトーブリアンという言葉が浮かびました。……いや、実は僕、まだ食べたことないんですよ。

ジモン まさか! そのレベルが俺んとこ来たか(笑)。

ケンモチ そうなんです(笑)。だからこそ、その「憧れ」を歌にしたいなと。

ジモン それはすっごい曲に出てました。「憧れの〜」って歌ってたけど、あれは若者がこれから頑張るぞ!っていう気持ちが出ている気がした。夢があるじゃないですか。俺はその現実を知っちゃった後のおっちゃんだから、具体的に説明したくなるんだけど(笑)。なるほど、そういうところからだったんだね。

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ケンモチ はい(笑)。ファンタジーの世界のラスボスみたいなイメージで。

ジモン まさにもろ、曲にそういう感じで出来てますよ。「伝説のシャトーブリアン」っていう。キラキラキラって光ってるイメージが湧きましたもん。

ケンモチ 他のアーティストがやらないような、シャトーブリアンへの幻想とファンタジーを題材にしてみようと思いました。

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━━ジモンさんから見て、シャトーブリアンとはどういう存在なのでしょうか。

ジモン シャトーブリアンって聞くと、肉というより先に人名が浮かぶんですよ。食通だったフランスの政治家、フランソワ=ルネ・ド・シャトーブリアン。彼が好んで食べたヒレ肉の部位だから、そう呼ばれるようになった。諸説ありますけどね。だから、日本で言えば「佐藤さん」って曲と同じようなものですよ(笑)。ヒレの中でもテンダーロインとかなら部位だけど、『シャトーブリアン』って言っちゃうとその人の名前なんです。

ケンモチ 今回、曲にするにあたって初めて調べて知りました。人の名前だったんだと。

ジモン 死んじゃってるからロイヤリティはかかんないですけどね(笑)。

歌詞に散りばめられた肉の部位。
正しさよりも「語感」の面白さ

━━歌詞には様々な肉の部位が登場しますが、ジモンさんから見ていかがでしたか。

ジモン 正直、疑問点は多かったですね(笑)。精肉とホルモンを一緒にしないで!とか。ただ、焼肉目線で見ると矛盾は多いけど、語感で聞くとすごく耳に残りやすい言葉が選ばれているなと。

ケンモチ そうなんです。牛の部位の中でも、日常であまり聞き慣れない言葉を多めに取り入れたいなと思って。あとは3文字から始まって最後は6文字で終わる、みたいな言葉遊びも入れつつ。最初は頭から順番にツラミ、ネック……と考えていたんですが、だんだん部位がなくなってきて(笑)。ミノとハチノスとヤンは胃袋で繋げたりして、色々組み合わせていくうちにあの形になりました。

ジモン なるほど。関西名と関東名でも呼び方が違うし、海外から入った名前もあるから、リアルな正しさを追求すると矛盾は出てくる。でも、あくまで語感の面白さで選んでるんだなと。音が面白いんですよ。

ケンモチ 今回調べてみて、こんなに部位があるんだって自分も勉強になりました。

ジモン ホルモンなんて、実は豚も入ってるんですよ。焼肉屋で出てくるホルモンの4〜5割は豚です。それに、豚タンの方が牛タンより味がうまかったりする。繊細で。

ケンモチ え、食べたことないです。

ジモン いや、本当はどこかで食べてる可能性ありますよ。「タン」としか書いてなかったりするから(笑)。まあ、そういう業界の色々があるんですけど、この曲はそういう矛盾とか全部ひっくるめて、「憧れのシャトーブリアン」に着地しているのが面白かったですね。

いざ、実食。
「ちぎり焼き」で味わう人生初のシャトーブリアン

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━━では、いよいよその「憧れ」を現実にする時が来ました。ケンモチさん、人生初のシャトーブリアンです。

ジモン 本当にシャトーブリアン、食べたことないんだ。

ケンモチ ないんです。

ジモン 一番好きなものを一番贅沢な食べ方でいきましょうか。「ちぎり焼き」です。

ケンモチ ちぎり焼き?

ジモン 箸でちぎっちゃうんです。ナイフもフォークもいらない。それがシャトーブリアンだから。

(ジモンが巧みな手つきで肉を焼き、箸で肉をちぎって見せる)

ケンモチ うわ、本当に切れちゃいますね!

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ジモン これが人生初のシャトーブリアン。ちぎり食い、どうぞ。

ケンモチ (一口食べて)……美味しいです!

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ジモン やばいよね?うまいやろ。塩で食べると味がわかるし、柔らかいし、香りがいい。これがシャトーブリアンの特徴です。

ケンモチ お肉が甘い……。雑味がないです。

ジモン この上品な感じ、楽曲の「タン、タン、タン」っていう軽快なテンポじゃなくて、バイオリンで弾きたくなるような感じですよ。ケンモチさんがシャトーブリアンを食べたことがなくて、「憧れ」のまま曲を作ってくれてよかった。そうじゃなきゃ、この曲は生まれなかった。

ケンモチ 美味しいです。こんなにお肉の味が鮮明に感じられるとは。

ジモン ヒレを焼いて、ちぎって食べる。しかも雌牛ですよ、これ。……さあ、次はこっち。畑さん(畑敬四郎さん)の特産、松阪牛です。

(再びジモンが肉を焼き始める)

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ジモン ほら、煙の量が違うでしょ。脂が全然強い。これは長期飼育された松阪牛の雌牛だから、ものが違います。でも、脂っぽいわけじゃないんですよ。特産っていうのは、余分な脂が落ちていってるから。昔から美味しいと思われている、本当の肉の味がするはずです。

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ケンモチ (一口食べて)……うまいです。

ジモン 咀嚼して、飲み込んだ時に鼻に香りが咲くでしょう。ふぁーっと余韻が。

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ケンモチ はい。

ジモン 良い声が出るんですよ。シャトーブリアンを食べると、良い声が出ます。

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食と音楽、それぞれの哲学。
「体験」こそが人生を豊かにする

━━ジモンさんは、焼肉では好きなものから食べるとおっしゃっていましたね。

ジモン 一番お腹が空いた時に、一番美味しいものを食べたいじゃないですか。だから僕は、いきなりシャトーブリアン。初めからちぎり焼きで食べて、「さあ、焼肉を始めようか」って感じです。

ケンモチ お寿司の通は白身から、みたいなセオリーとは違うんですね。

ジモン それもアリだけど、いきなりメインのマグロから入るのもいい。今の音楽と一緒ですよ。いきなりサビから入って、また戻ってくるみたいな。

ケンモチ まさに。その「好きなものから行く」っていうのが、すごく腑に落ちました。

ジモン 人生、お金も土地も地位も、何も持ってけないんですよ。生きてる間、自分の身になるのは食べ物だけ。だから、色んなものを体験して、食べていった方がいい。

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ケンモチ 僕も音楽を作る上で、「ジェネラリストよりスペシャリスト」でありたいと思っていて。広く浅くよりも、ニッチな知識や趣味を深めていった方が、今の時代は面白いものが作れる気がします。

ジモン そう。ニッチなところを極めると、全部繋がってくるんですよ。逆に広がりがある。この対談だってそう。シャトーブリアンっていうニッチなテーマだからこそ、実現したわけだから。

━━最後に、この対談を経て、改めて『シャトーブリアン』という楽曲についてどう感じますか?

ジモン この曲を聴いて、みんなにシャトーブリアンを食べに行ってほしいですね。憧れのファンタジーが、食べた瞬間に現実になる。その体験をしてほしい。

ケンモチ はい。まさに今日、僕のファンタジーが現実になりました。この経験で、また新しい音楽が作れそうです。ありがとうございました!

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Photo by Takami Chika
Text by Qetic

RELEASE INFORMATION

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シャトーブリアン

2025.5.29
水曜日のカンパネラ

詳細はこちらInstagram水曜日のカンパネラ OFFICIAL SITEX

【楽曲解説】#5 水曜日のカンパネラ「シャトーブリアン」

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