前夜祭を含め、4日間でトータル122,000人(前夜祭は16,000人、金・土・日はそれぞれ33,000人・39,000人・34,000人)。コロナ禍以降では最多の来場者数に達した<FUJI ROCK FESTIVAL ’25>(以下、フジロック)は、記録の面でも記憶の面でもポジティブな変化を生み出し、幕を閉じた。1997年の初開催から今年で28回目。“国内最大級の音楽フェス”という枕詞を超えて、“アジアを代表する音楽フェス”と呼ぶにふさわしい熱狂と感動を生み出した、あの数日間を振り返ろう。


フジロックに新たな風を吹き込む、アジア圏のアーティストとオーディエンス
今年の来場者数は過去5年で最多となり、コロナ禍以前を彷彿とさせる水準に。事前のニュースでも土曜や3日通しチケットがソールドアウトしたことが発表され、開催前から期待感が高まっていた。
その一端を担ったのが、海外、特にアジア圏からのオーディエンスだったことにまず触れておきたい。海外からのインバウンド参加者は年間チケット販売の約10%を占め、今年は特に中国・韓国・台湾、そして東南アジアなどの人々の姿が目立った。
また、韓国のHYUKOH、台湾のSUNSET ROLLERCOASTERなどがGREEN STAGEに登場したほか、新設ステージ<ORANGE ECHO>では、韓国のKim OkiやタイのYONLAPAが出演。台湾のフェス<ROCK IN TAICHUNG>と<ROOKIE A GO-GO>のコラボで震樂堂が出演するなど、アジアのアーティストのライブが新たな注目となった。



国内外のトップから新世代アーティストまで、フジロックだからこその音楽体験
GREEN STAGEのヘッドライナーには、初出演のFRED AGAIN..、VULFPECK、VAMPIRE WEEKENDが登場。特にFRED AGAIN..は機材トラブルによって深夜の開始となったが、観客の熱狂はそのままに熱いダンスセットで魅了した。
そのほかにもBARRY CAN’T SWIM、ECCA VANDAL、CA7RIEL & PACO AMOROSOなど、世界各国の新鋭アクトが集結。Vaundy、Suchmos、Creepy Nuts、サンボマスターなど国内勢も強力な布陣が揃った。
羊文学やおとぼけビ〜バ〜のようなガールズアクト、BRAHMANやEGO-WRAPPIN’、坂本慎太郎といったベテラン勢も、それぞれが圧巻のステージを披露。
そして特筆すべきは、山下達郎。野外フェスでは稀な出演にして、竹内まりやとの共演も実現。“プラスティック・ラブ”が響いたGREEN STAGEは、この年を象徴する瞬間のひとつだった。






フジロックの楽しみ方は自由。ずっと変わらないひとりひとりの気持ち
OASISエリアをはじめ、多彩なフェスごはんや文化体験、パフォーマンス、アート展示など、フジロックは“音楽以外”の楽しみも豊富。寄席やサーカス、森のピアノ、リサイクルアートなど、あらゆる角度から楽しめるのもほかにはない魅力だ。






さらに今年は、Amazon PrimeとTwitchでの無料ストリーミングも実施され、視聴数は過去最多を記録。現地にいる人すらライブ配信でステージをチェックする時代になった。
しかし何よりも大切なのは、それぞれの立場で“また来たい”と思う気持ち。TOSHI-LOWのMCにもあったように、仕事や生活と天秤にかけてでも訪れる価値と理由がある──それがフジロックという場なのだ。
最奥の<ORANGE ECHO>で取材を終えた直後、土砂降りに打たれながら歩いたボードウォークで、清々しい感情と共にそう思った。今年もありがとうフジロック。ではまた来年。






Photo by Shimizu Soutarou
text by ラスカル(NaNo.works)