7月25日(金)、26日(土)、27日(日)の3日間にわたり開催された<FUJI ROCK FESTIVAL’25>(以下、フジロック)。Qeticでは、<フジロック>現地にて、出演したアーティストのインタビューを実施。今回は、25日のRED MARQUEEに出演したティコ(TYCHO)のインタビューをライブフォトとともにお届けする。
2度のグラミー賞ノミネートも果たし現代のエレクトロニカ/ポストロックを代表するアーティストの1人でもあるティコことスコット・ハンセン。今年1月、8年ぶりに実現した来日公演では、生楽器とエレクトロニック/DJ的手法を融合させたサウンドに加え、ビジュアルやライティングを含めた“総合芸術”としての完成度が大きな反響を呼んだ。今回のインタビューでは、彼の音楽観はもちろん、日本の印象やグラフィックデザイナーとしての顔を持つ彼ならではのエピソードを語ってもらった。
──ティコの音楽は“時間”や“記憶”のようなテーマを想起させます。今回はどんな時間軸を描いているといえますか?
これまでのアルバムの多くは、過去を題材にしていて、すごくノスタルジックで自分の青春時代の記憶に基づいたものだった。でも今回のアルバムは、少し先を見据えた、より現代的で、過去よりも未来を感じさせるような音の空間を追求したんだ。とはいえ、たとえば「Green」などは、ノスタルジックな曲だね。結局、何曲かはどうしても懐古的になってしまって、わりとベーシックな作りになったね。
──新楽曲ではバンド的なグルーヴとアンビエンスの融合が素敵です、制作の鍵(ポイント)はなんでしょうか?
今回のアルバムでは初めてGrizzly Bearのクリス・テイラーと共作し、彼がアルバムのミックスを手がけたんだ。僕はこれまでも、自分の音楽を主にエレクトロニックな要素とギター、それにちょっとした有機的な要素を交えて作ってきた。いつも心がけていたのは、電子的なサウンドをできるだけ“オーガニック”に聴かせることだった。でも、クリスと一緒に作業を始めたとき、僕としては「これはすごくオーガニックに仕上がった」と思って彼に渡したんだけど、「いや、すごく人工的な電子音に聞こえる」と彼に言われた。僕は「えっ、そうなの?」と驚いたけど、彼がミックスを送り返してきたのを聴いたとき、まるで森の中にいるような雰囲気で更にオーガニック感が出ていたんだ。彼がロックのレコードを手がけてきた経験や、より伝統的なテクニックを今回のアルバムに応用してくれたことが、結果として新たな音の世界へ導いてくれたと思う。

──自然との調和を感じさせるティコのサウンド。この苗場の山々を背景にどんなステージにしたいですか?
最高だね。ほんとに完璧なステージだと思う。僕はカリフォルニアのサクラメントという山と海の中間にある場所で育ったんだ。家から1時間くらいの距離にレイク・タホがあって、よく行っていたよ。ここの木とは少し種類が違うけど、あの場所で感じた空気やエネルギーにすごく似ているね。山の中にいるときに感じるあの感覚が、ずっと自分の音楽の中に流れている気がしていて、ある種 “アルパイン(山岳)的な美意識”というのが根っこにあるんだと思う。だから、今日みたいな自然の中でのライブは、自分たちにとっては最高の環境だね。
──日本に来て言葉や文化の違いで起きた、一番面白かった、または恥ずかしかったエピソードはありますか?
前回フジロックに出た2019年、ポスターを自分で作っていて、苗場に向かうバスの中でデザインしていたんだ。「フジロック」とカタカナで書きたくてネットで調べて、自分で書いて、それをプロモーターの女性に見せたら、急に笑い出して。どうやら僕が書いたのは「フジコック」だったらしくて(笑)。彼女に「それは投稿しない方がいいよ」と言われたよ。もし彼女に見せずにそのままInstagramにアップしてたら、みんなに大笑いされてたね(笑)。
──日本の文化や習慣で、自分の国でも取り入れてほしいと思うことは何ですか?
僕が住んでいる地域では、盗難とか空き巣が本当に多くて。2008年に初めて日本に来たときに、カメラ機材をいっぱい詰めていたバックパックをうっかり地下鉄に置き忘れてしまって……1時間後くらいに戻ったら、そのまま残っていたんだよ。これは、本当にすごいことだと思う。誰も物を盗まないって、すごく安心できることだよね。僕の地元だったら、車の中にサングラスを置いているだけで、窓を割られて盗まれちゃうから。だから、こういう文化がアメリカにも広まってくれたらいいのにと本気で思うね。
2025.07.25(FRI)TYCHO
@RED MARQUEE








Photo by Kazuma Kobayashi
Film & InterviewPhoto by Itaru Sawada
INFORMATION

Infinite Health
Tycho
RELEASE: 2024.08.30
LABELS: Ninja Tune
国内盤CDトラックリスト
01. Consciousness Felt
02. Phantom
03. Restraint
04. Devices
05. Infinite Health
06. Green
07. DX Odyssey
08. Totem
09. Epilogue
10. Phantom Edit *Bonus Track
FUJI ROCK FESTIVAL’25
7月25日(金)26日(土)27日(日)
新潟県 湯沢町 苗場スキー場